(有)ワールドファーム(資本金5500万円)と、関係会社の(株)ONLY JAPAN(資本金3億1027万円)、(有)つくば低温サービス(資本金700万円)が、10月10日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けました。
同社は2000年設立。全国10都道府県14カ所に露地野菜の直営農場を展開し、国産野菜の栽培から冷凍加工野菜の生産・加工、販売まで一貫体制を築きました。行政とも連携し、耕作放棄地の解消や新規就農者の育成も行い、19年6月期には売上高約16億7400万円を上げました。
その後、新型コロナウイルス感染拡大に伴う飲食店の休業要請、全国規模で実施された休校措置などで業務用カット加工野菜の販売が急激に落ち込み、売上高は22年6月期に約7億7900万円に縮小。3期連続の赤字で債務超過に陥っていました。
以下に、ALT MEDIAの記事を紹介します。
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「儲かる農業」を目指すワールドファームが実践するSDGsとは
有限会社ワールドファームってどんな会社なの
ワールドファームは、現在、つくば市など県内のほか、秋田県から熊本県まで10県の14カ所に計約300ヘクタールの農地を借り受け、平均年齢30歳のスタッフ約70人が、主にキャベツ、ホウレンソウ、ゴボウ、コマツナの4品目を栽培しています。野菜加工施設を中心に、100〜200ha規模の農地を確保し、直営農場や地域の生産者と連携して栽培した野菜を加工・販売(6次産業化)まで手掛ける「儲かる農業」を実践する農業法人です。
同社は、輸入野菜のうち50万トンを国産野菜に切り替える「農産物の国産化プロジェクト」を推進するとともに、将来の日本の農業を支える「次世代農業者の育成」に力を入れており、新たな需要創出と人材育成の両面から、持続可能な新しい農業モデルの構築を目指しています。
先述した通りワールドファームでは、アグリビジネスユートピア構想を提唱しており、これが「SDGs」とも親和性が高く、経済産業省でもSDGsに取り組む先進企業として紹介されました。
ワールドファームは、農産地の地域一体型プロジェクト「アグリビジネスユートピア」構想を見据えて以下を実現すると宣言しています。
このアグリビジネスユートピアとは、大規模農場の中心に加工工場を設置することで地域活性化を図るとともに、循環型社会の形成などと合わせていく拠点を全国に約100箇所設置していくことを目指すプロジェクトです。
加工工場設置により、従来までの天候に作業を左右されることなく、晴れた日は農業をし、雨の日は工場で加工するなどして人件費の無駄を省くことに成功しました。
アグリビジネスユートピアにて、地方行政や現地企業と提携し、地域循環型システムを構築すれば、誰も手を付けられなかった限界集落でさえ雇用が生まれ故郷に人が戻り、消費や産業を復活させることが可能となるでしょう。
また「地域価値」だけでなく「販路開拓(出口)」が実現されており、現に供給可能量の18倍の引き合いを獲得しています。これは高齢化が進み、販路開拓(出口)に苦労する事例が絶えないアグリ業界では驚異的ともいえる数字かと思われます。
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ここで、気になるのが、「平均年齢30歳のスタッフ約70人」です。
求人情報・転職サイトdoda(デューダ) によると、同じ業界で働く人の割合と年収(万円)は以下です。
年代 割合 男性 女性
20~24歳 23.7 % 273 247
25~29歳 34.2 % 348 309
30~34歳 17.4 % 399 314
35~39歳 9.8 % 435 361
40~44歳 5.5 % 448 358
45~49歳 5.6 % 490 361
50~54歳 2.8 % 579 335
55~59歳 1 % 451 -
6次産業化推進協議会は、2019年度6次産業化アワードの農林水産大臣賞を受賞しています。
農林水産大臣賞(1点)
▽有限会社ワールドファーム(茨城県つくば市)
農産物の国産化と若い担い手を育成する農業の地域一体化プロジェクト「アグリビジネスユートピア構想」を掲げ、自社はもとより、全国各地の自治体との進出協定を締結し、耕作放棄地を活用したキャベツ、ホウレン草などの生産および業務用一次加工(カット、冷凍)を展開するとともに、地元若手就農者の雇用就農を促進。
SDGsは、環境配慮と誤解されていることが多いのですが、持続可能性には、人権問題も入ります。
平均年齢30歳で、年収300万円程度であれば、とても、もうかる農業とは言えません。
離農者や耕作放棄が多い最大の理由は、労働生産性が低いため、収入が少なくなるためです。
これは、労働者が、生産性の高い産業に移動するので、労働生産性があがり、一人あたり所得が増加します。
労働者が、生産性の高い産業に移動しなければ、一人あたり所得が増加しません。
耕作放棄を無理に耕作すれば、日本は、どんどん貧しくなります。一人あたりGDPに余裕があり、貿易黒字があった時代であれば、そうした無理もできたと思いますが、現在では、貧困化政策をとるべきではありません。
逆にいえば、耕作放棄地を無理に農地に戻しても、補助金がなくなれば、持続可能でなくなるので、SDGsではありません。
こう考えると、SDGsには、生産性をあげることが大前提になっています。
「アグリビジネスユートピアにて、地方行政や現地企業と提携し、地域循環型システムを構築すれば、誰も手を付けられなかった限界集落でさえ雇用が生まれ故郷に人が戻り、消費や産業を復活させることが可能となるでしょう」という記事には、恐怖を感じます。
限界集落があるので、日本の1人あたりGDPの減少は現在のレベルにとどまっています。
限界集落に強制的に人を住ませる社会実験の効果は、中国の大躍進やウクライナのホロドモールで実証済みです。
従業員の給与を低く抑えれば、見かけ上は、黒字(儲かる)になります。
しかし、従業員の給与を低く抑えれば、それだけ、将来の年金の税負担が増えます。つまり、これば、増税を先送りしている政策になります。
最低賃金の議論が繰り返されていますが、年金を積み立て方式にした場合に、必要な積立額から、最低給与を逆算すれば、はるかに、高い賃金でないと、持続可能ではないはずです。これが、SDGsを満足する企業経営になります。合理的な積算根拠はこれで十分す。
この最低賃金を出せない企業は倒産させて、DXが進んだ企業に入れ替える必要があります。
イメージをあげれば、次になります。
「欧米に行けば、自動車が走っている。日本いいったら馬車が走っている。日本の馬車は速度が出ないので、速度のでる車輪に入れ替える工夫をしている」
30代の従業員の給与が高く、年金分を貯蓄しても、余裕があれば、その分を投資に回して、自らベンチャーを起業する人も出てきます。
まとめますと、SDGsのためには、生産性の向上が必須です。
産業政策の正否は、生産性の向上で判断できます。
有限会社ワールドファームは、こうした問題を検討する事例になっています。
なお、似た名前の企業に、三井不動産ワールドファームがあります。
日本の農業振興と近郊地域における雇用創出に向けて「持続可能なスマート農業事業」を展開する三井不動産ワールドファーム株式会社が、2021年10月1日から、茨城県筑西市でカット野菜の冷蔵加工工場の稼働を開始しています。
三井不動産ワールドファームは、「持続可能なスマート農業事業」なので、生産性が高く、高所得の農業を期待しています。今後の展望を期待します。