「 ART PARK Tsukuba 2023 in 二の宮公園 春田美咲 記憶をたどる」では、春田美咲は、べニア板とプラスチック段ボール紙を使っています。
春田美咲のインスタレーションは、通常は室内で、主な素材は「ラシャロール」になっています。
画材店では、「ラシャロール」がうられていますので、春田美咲さんは、「ラシャロール」を普通の単語としてつかっていますが、この単語の意味は複雑なので、整理してみました。
問題点1:
ラシャ(ポルトガル語:raxa)は、毛織物の一種です。英語では、紡毛織物(Woolen Fabric)やWoolen clothになります。織物組織は平織、綾織、繻子織などで、密に織ったものを十分縮絨(しゅくじゅう)させたのち、毛羽(けば)の先端を剪毛して仕上げます。縮充,起毛,毛刈りをして仕上げるので表面はフェルト化しています。
フェルトは羊毛などの獣毛に蒸気・熱・圧力を加えて縮絨(しゅくじゅう)させ、布状にしたものを指しますので、素材は共通です。
問題点2:
紙の種類は、ラシャ紙と模造紙に分けられます。
ラシャ紙は毛羽立っていてザラザラで、模造紙はツルツルしています。
つまり、ラシャ紙と模造紙は、表面加工の違いを意味しているのであって、素材を意味する単語ではありません。
竹尾というメーカーは次のように書いています。
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1949年の誕生以来、日本のファインペーパーのパイオニアとして長く愛され続け、
いまやファインペーパーのスタンダードとして定着しているNTラシャは、
その名の通り羅紗(らしゃ:厚手の起毛毛織物)を思わせる緻密で温かい肌触りをもつ紙です。
良質のコットンパルプを配合することで、独特の柔らかく素朴な質感が生まれています。
また、淡色から原色まで取りそろえた100色を超える豊富な色は、
クリエイターをはじめとするユーザーの皆様に愛される大きな魅力となっています。
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ここでは。素材には、木材由来のパルプに、コットンパルプが配合されていますが、毛織物は入っていません。
紙を選ぶ|NTラシャ
羅紗紙( wool‐coated paper; flockpaper; velvet paper)は ラシャに似せた厚紙を指し、洋紙の製造工程中ラシャのくずや毛糸くず、またはパルプに色付けしたものを混ぜてすいた紙を指します。
つまり、羅紗紙は、ラシャのくずや毛糸くずの入っていない紙をさすことも、ラシャのくずや毛糸くずの入っている紙をさすこともあります。
英語は、flockpaperが標準のようです。
velvetはビロードで表面がなめらかなので、「毛羽立っていてザラザラ」ではありませんが、ラシャ紙と模造紙の2分法では、ラシャ紙になってしまいます。
表面が、ツルツルのコーティングされた状態でないので、ビロード状もラシャ紙になります。
まとめ:
ラシャロールには、模造紙ではないという情報しか含まれていません。
ラシャロールという単語から、素材、紙の表面のざらつきの状態を推定することはできません。