アフリカの罠と小さな政府~プランBの検討

(小さな政府では、年金の減額が減少する可能性があります)

 

1)アフリカの罠

 

温暖化のCOPでは、発展途上国が、お金を求めています。

 

しかし、問題にあるところにお金をつけて問題解決したというエビデンスはありません。

 

アフリカでは、飢餓が頻発しています。飢餓の最大の原因は、内戦なのですが、農業が産業として、育っていなかったり、農産物を輸送するインフラが未整備であることも飢餓を拡大しています。

 

飢餓になりそうな場合には、FAOが無償で食料援助をします。食料援助は、建前上は、餓死しそうな人に最低限の食料を届けることですが、最低限の食料を広く薄く配分することは困難で、配分をめぐって政治家の利権が暗躍します。この問題のために、直接配分に関わっているNPOもありますが、対象は部分に留まります。

 

食料無償援助以外に、産業振興のための海外援助もありますが、道路などの社会インフラ(公共財)の建設には効果がありますが、非公共事業の幼稚産業育成論は失敗が多いです。

 

アフリカのある国で、Aさんが、農業をしていた場合、食料が不足すれば、農産物価格が高騰し、大きな利益をあげることができます。その利益を元に、事業の規模を拡大することもできます。

 

これは、過去に、日本の野菜農家におこっていた現象で、野菜は十一(といち)と呼ばれ、10年つくって、品不足の1年では大きな利益がでますが、あとの9年は利益がでないと言われていました。ただ、その1年の利益がとても大きいのでビジネスのメリットがあるという訳です。

 

最近では、この品薄の1年の場合には、輸入野菜の量が拡大します。市場は、安価な輸入野菜と価格が2倍くらいする国産野菜の2重構造になっています。

 

アフリカの農家のAさんの場合、十一(といち)で儲けることができません。つまり、援助は、アフリカの産業を破壊しています。幼稚産業育成の補助も、政府の透明性が低いので、補助金を得るために賄賂が横行しています。こうなると、農業生産を努力するよりも、賄賂をつかって補助金を獲得する方が経済的合理性が高いので、産業が育ちません。

 

こうした過去の経緯を踏まえて、アフリカには援助はいらないというアフリカ人もいます。

 

飢餓は望ましくはありませんが、100年前には、FAOはありませんので、現在の先進国は、飢餓を乗り越えて発展してきてます。前提には、市場原理で、努力すれば、収入が増えて、生活が楽になる、豊かになるとういうことが信じられることがあります。

 

2)小さな政府

 

最近の政府の経済対策は、問題のあるところに、ひたすら補助金をつけています。これは、市場経済を破壊して、日本が、アフリカの罠に陥る方法です。実際に、日本経済は、補助金をたよる旧植民地型の経済に陥っています。

 

現在の将来への戦略なしに、補助金をはらまき続けるプランAを続ければ、日本政府は経済は破綻してしまいます。

 

プランBは、小さな政府、政府は公共財以外からは撤退する政策になると思われます。

 

プランBで残るのは、次の部門です。

 

警察、外交(軍隊)、最低限の生活の保障(生活保護、医療、年金)、教育、社会資本です。

 

社会資本については、人口がへっていますので、新規建設ではなく、最低限の維持管理費を担保することになります。

 

小さな政府になると、最低限の生活の保障(生活保護、医療、年金)が減ると思われがちですが、これは検討すべき内容です。

 

現在、日本では、生活保護の申請は、しづらい、受理されずらいと言われています。この問題は、生活保護が、ベーシックインカムになれば、解消されます。

 

現在、年金は、減額されています。これは、年金の構造が、積み立てた金額の2倍を受け取れるという制度上の不備に原因があります。現在の年金制度は、持続可能ではないのです。長期的にみれば、この数字は1.0に近づける必要がありますが、現時点では、その戦略はたてられていません。

 

退職して年金を受け取る人と年金を支える現役の人の人数比が良く取り上げられますが、これは、問題のすり替えです。この議論の前提には、「現役の人が、年金を受け取る人を支えるのは当然である」という暗黙の了解があります。年金問題の本質は、社会的公平性をどのレベルで維持するかにあります。生活保護が必要な社会的弱者は、例外として、基本は、積み立てた金額と同額の年金をもらうことになります。赤字であるから、税金を投入し続けることは、社会的公平を欠いていますので、積み立てた金額と受け取れる金額の比を1.0にする必要があります。

 

生活保護をうけていないのに、賃金が安すぎて、十分な年金の積み立てが出来ないのであれば、最低賃金をあげる必要があります。なぜなら、年金の支給金額は、生活保護の金額より高いことが原則だからです。現役時代に、年金の支給に必要なだけの積み立てが出来なければ、年金の不足分は税金で補填しなければならなくなります。この税金の補填分は、賃金が高ければ、不要であった出費です。つまり、最低賃金が適正な水準より低いことは、将来の年金に必要な財源を、企業に所得移転していることになります。このように考えれば、適正な最低賃金の水準が求められます。

 

小さな政府になった場合、植民地からの実入りがあったかつての英国のような潤沢な社会保障は維持できません。しかし、現在、所得移転以外の産業振興効果がほとんど見られないか、検証されていない補助金をカットすれば、財源は生み出せますので、小さな政府になれば、現在より、生活保護と年金のレベルがあがる可能性があります。

小さな政府は、弱者に優しい政府になる可能性があります。

 

一方では、現在も、賃上げに対して、労働生産性の上昇に見合らないという記事を見かけます。これは、原因と結果が逆です。賃金をあげれば、労働生産性をあげられないゾンビ企業が淘汰されます。賃上げに全ての企業が耐えられる訳ではありません。企業が淘汰されれば、解雇が生じます。しかし、企業も、解雇された労働者も、生産性をあげて、再出発しないと経済は発展しません。もちろん、失業期間のセーフティーネットや、学びなおしの費用への補助は必要です。しかし、ゾンビ企業に対する補助金をカットすれば、財源を生み出すことは可能です。

 

3)まとめ

 

有識者会議に出てくるような大学の専門家は、生活保護、医療、年金といった分野毎の専門家です。専門家は、その専門分野のなかでしか問題解決を考えられません。

専門家の答えは専門分野の中のローカルオプティマムであって、グローバルな正解でないのです。

 

例えば、年金の専門家に、地球温暖化が年金の支給額に与える影響を教えてくださいと質問すれば、専門家の問題解決能力をテストできます。

 

ほとんどの専門家は、このタイプの質問に答えられません。

 

これは、学問のサイロ(academic silos)問題です。

 

地球温暖化生物多様性の問題解決には、学問のサイロを破棄しないと、解決策が求まりません。

 

しかし、学問のサイロ問題は、地球規模の問題に限りません。経済政策においても同じ問題が発生しています。

 

次回は、サイロ問題を取り上げます。