ー1)科学革命とレジームシフト
ー1-1)年功型雇用における人材破壊
護送船団方式も、年功型雇用も、企業や組織が永久に続くという、ありえない形而上学の前提にたっています。
問題は、この前提が崩れた場合には、社会が破綻することです。
破綻のダメージは大きいです。
例えば、年功型雇用で、滅私奉公して、転勤を繰り返してきても、50歳近くで、クビになることがあります。
応用スキルの半減期は2年なので滅私奉公して、転勤を繰り返してきても、転職の足しになりません。これから、基礎スキルを学びなおすのは、容易ではありません。
つまり、50歳近くで、クビになって人にとっては、年功型雇用のOJTは、詐欺のように見えるはずです。
これは、50歳近くで首になった人が、例えば、生成AIのプログラマーになるために、何をリスキリングする必要があるかを考えればわかります。
キャリアに必要はスキルは、基礎スキルであって、転勤を繰り返して、身に付く応用スキルではありません。
護送船団方式も。年功型雇用も、人材を潰しています。
企業は永遠に続きませんので、転職した場合にも使えるスキルの習得は、雇用者のモラルの問題になりますが、今のところ、まともに、扱われていません。
ー1-2)科学革命のエコシステム
企業は永遠に続かないというのは、一般的な事実ですが、エコシステムが変化するレジームシフトが起こっている場合には、企業の生存確率は極端に低下します。
年功型雇用の官庁や大企業で働いている人には、認知バイアスがあって、このレジームシフトが認識できません。目の前にあるものが見えない状態になっています。
エコシステムは、要素の集合体です。スマホ、クラウド、インターネットなどが、相互依存の環境を作っています。
全ての生物は、あるエコシステムの中で、生存します。
例えば、日本語のエコシステムで生活する上では、英語を使うことが大きなコストになります。
一方、英語のエコシステムで生活する場合には、日本語を使うことが大きなコストになります。
エンジニアリングや、データサイエンスのエコシステムは、英語とプログラム言語で構成されています。
2000年頃から、データサイエンス革命が本格化して、デジタル社会のエコシステムが形成されました。
この文章は、Googleドキュメントで書いていますので、情報はクラウド上にあります。
同様に、写真は、デジタルになって、データはクラウド上にあって共有するものになりました。
スマホの写真は、すべて、クラウド上のあり、デジタル社会のエコシステムの一部になっています。
カメラ雑誌は、ほぼ全てが廃刊になりました。カメラ雑誌は、クラウド上にはなく、デジタル社会のエコシステムの外にありますので、アクセスする人がいなくなりました。
今後、同様の変化は、新聞、書籍、テレビにも起こります。
若年層は、デジタル社会のエコシステムの中で、生活していますので、テレビは見ません。動画は、自分に都合のよい時間に合わせて見るものであって、プログラムをみて、時間に合わせて、テレビの前にいる意味は全くありません。
エコシステムは、相互に依存しています。一人の人間から見て、2つのエコシステムが共存することはありません。
古いエコシステムの価値はなくなります。
大切なことは、どうして、古いエコシステムから、新しいエコシステムに乗り移るかという点です。
古いエコシステムを改良すれば、新しいエコシステムにバージョンアップすることはありません。バージョンアップモデルは実現しません。これが、レジームシフトと呼ばれる現象です。
紙の新聞で、デジタル配信している企業もあります。紙面の電子化です。デジタル配信で、黒字になっている企業もあります。
これは成功例でしょうか。
紙面の電子化で、生き残ることは無いと思います。
すでに、ニュースに流れる情報の半分以上は、SNS経由になっています。
戦争や内戦が起こった場合に、新聞の特派員が発信する情報は、地元の当事者が発信する情報の数分の1にしかすぎません。
情報の量、鮮度では、新聞の負けは明白です。
新聞は、SNSデータを後追いしています。
SNSのデータには、間違いも多いので、新聞が、データの品質保証をしてくれるのであれば、品質保証に対して、コストを払う人もいると思われます。
ニュースの信ぴょう性評価とデマ追跡を行うサイト「ニュースガード」の編集者ジャック・ブルースター氏は、ソーシャルメディアで拡散しているデマには主として4つのタイプがあると指摘する。
一部の新聞社は、Google Mapの画像や、過去にネットに投稿された画像を調べて、情報のバックを取り始めています。しかし、そのために、必要なスキルは、大学の授業で得られたスキルとは異なったものです。
レジームシフトが起こっているデジタル社会で、生き残る新聞社のビジネスモデルでは、紙面の電子化のような、漸近的アプローチでは、見つかりません。データの品質保証のように、ユーザーが代価を払ってくれる結果を考えて、そのための原因をつくる思考方法が必要です。この思考方法は、アブダプションと呼ばれます。科学の因果モデルを考える上で基本的な推論の方法です。
ー1-3)まとめ
ここで書いたことは、単純な話です。
自動車がでてきて、馬車より性能がよくなれば、誰も、馬車を利用しなくなります。
馬車には、馬のえさや水の供給といったエコシステムがあります。
自動車には、ガソリンスタンドというエコシステムがあります。
EVになれば、ガソリンスタンドというエコシステムは不要になります。
過疎地域で、ガソリンスタンドがなくなれば、ガソリンスタンドというエコシステムにのっている自動車は利用できなくなります。
過疎地域のエコシスタムでは、EVに切り替えざるをえません。
レジームシフトが起こっている場合に、古いエコシステムは、維持できません。
日本中で、人材不足が起こっています。これは、労働市場のない年功型雇用が維持できなくなっているためです。
商品におまけをつけて売るビジネスがあります。おまけに魅力があれば、おまけだけを欲しくて、本体を購入して、本体を破棄する人が出ます。逆に、おまけに魅力がなければ、商品は売れません。
問題があると、補助金をばら撒くのは、おまけビジネスです。こんなことが、持続可能ではありません。
日本の経営者は、レジームシフトを想定していません。
経営者は、「指示まち人間はいらない。自分で考える人材が欲しい」といいますが、これは、経営者自身がものを考えられないことに対するカモフラージュで、実際に、レジームシフトを想定した議論をすると村八分にされます。
日本の経営者は、年功型組織の中で、洗脳されてしまって、自分で考える人材がいなくなったためとも思われますが、これは、謎です。
すくなくとも、科学革命を前提とすればありえない議論になっています。