3レベルの仮説

ある問題が発生した場合に原因を推定して、因果モデル(原因ー>結果モデル)をつくることがあります。



このときに、一般的には、1原因1結果に近い単純な因果モデルが選択されます。

 

しかし、仮説には、3つのレベルがあると考えられます。

 

1)エコシステムのレベル

 

スマホクラウドシステムとGPSはエコシステムを形成しています。

 

エネルギーの中心では、電気です。

 

自動車のエコシステムは、ガソリンであり、石油です。

 

石油の前には、石炭の時代があり、その前には、木材の時代がありました。

 

エコシステムでは、複数の変数が、相互依存していますので、単純な因果モデルでは、説明できません。

 

変数をセットで、レジームとして把握することが現実的です。

 

20代の若者は、テレビを1週間に30分もみません。

 

ネット配信動画とテレビは全くエコシステムが異なります。

 

この場合、比較分析はナンセンスになります。

 

エコシステムベースのアプローチは、現代の生態学の基本です。

 

マイナンバーカードを作る場合、そのエコシステムは、クラウドであり、スマホであり、顔認証になるはずです。

 

ICチップを埋め込んで、専用読み取り機を使うのは、全く別のエコシステムです。

 

このような特殊なエコシステムでは、システム開発をゼロから進めることになります。仮に、ゼロから進めても、標準的なエコシステムとして、普及しなければ、絶滅します。

 

何が原因で、何が結果かは、判然としませんが、検討する対象が、どのエコシステムにある変数かを考えないと、努力は全て水の泡になります。

 

リスキリングは、解雇のあるジョブ型雇用のエコシステムの一部です。

 

年功型雇用の世界に、リスキリングを持ち込んでも、エコシステムが異なるので、全く違った内容になってしまいます。



エコシステムを考えないモデルは、レジームシフトを想定しないモデルであり、知識の半減期を仮定しないモデルです。

 

このモデルに基づけば、生産性が落ち続けることが予測できます。



2)ブリーフの固定化のレベル

 

これは、パースのいう科学的なブリーフの固定化をするか、権威の方法のような他の方法をとるかというレベルの仮説です。

 

これは、エコシステムのレベルより、更に、根源的で、認知のレベル、言葉と実体の対応レベルの問題です。

 

ブリーフの固定化は不適切な場合にも、生産性の低下が起こります。

 

つまり、問題解決の遅延が現れます。

 

3)通常モデル

 

原因と結果が、明示できるモデルです。

 

一般には、これでよいのですが、1)と2)のレベルで問題があった場合、原因と結果の変数名に問題が生じます。

 

リスキリングは、新しい技術の学習です。

 

これは一見すると、講義を聞いて、テキストを読んで、練習問題を解けば良いように思われます。

 

しかし、ジョブ型雇用のリスキリングは、「講義を聞いて、テキストを読んで、練習問題を解く」ことではありません。

 

明示されない違いがあります。

 

ジョブ型雇用では、スキルは転職と収入の増加に繋がります。

欧米の教育は、履修主義ではなく、習得主義です。リスキリングのコースで学んでも、卒業資格が得られない人が多くいます。

 

採用時に、プログラマであれば、コーディング面接をうけます。

 

このような条件が異なれば、同じリスキリングという言葉(変数名)は、全く異なった内容を表わすことになります。

 

それは、当然の自明のことです。

 

ですから、パースの科学の方法では、言葉と、実体の内容は、観測によって、すりあわせる必要があると主張しています。

 

こう考えると、1)2)のレベルをクリアしない3)の議論はできないようにも思われます。