低度人材国日本

 

1)失業率のバイアス

 

2022年の中国の若年の失業率は20%近いと言われます。

 

韓国も似たような状況です。

 

これを見ると日本の若年の失業率は、より低いので、日本の方が状況が良いように見えます。

 

しかし、この見方には、問題があります。

 

2023年になって、アメリカのビッグテックの株価は下がり、レイオフを進めています。

 

日本の企業は、アメリカの企業のように、2023年に入って、レイオフを拡大しているわけではないので、日本の方が状況が良いように見えます。

 

しかし、この見方には、問題があります。

 

ビッグテックは、レイオフを進めていますが、一方で、高度人材の給与は上がっています。

 

例えば、2023年1月15日の現代ビジネスで、 野口 悠紀雄氏は次の事例を紹介しています。(筆者要約)

 

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アメリカの転職サイトleves fyi によれば、メタ(旧フェイスブック)の、トップエンジニアの給与は、2022年3月には94万ドルだったが、いまは182万ドル(2億4000万円,

1ドル132円で換算)と、2倍近くになっている。グーグルのトップエンジニアの給与は、2022年3月は102万ドルだったが、いまは115万ドルだ。

 

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1−1)母集団のバイアス

 

つまり、労働者を一つ正規分布で考えることは不適切です。

 

データサイエンスに詳しくない人は、恐らく、正規分布と聞けば、キョトンとすると思います。もしも、議論に平均値が出てくるのであれば、それは、母集団を正規分布と仮定していることになります。

 

例えば、失業率が20%が、平均失業率が20%であれば、これは、若年労働者の分布が正規分布であると仮定していることになります。

 

なぜならば、正規分布以外では、平均値は、分布の代表値にならないからです。

 

ビッグテックを見れば、高度人材とそれ以外は別の母集団を構成していると考えるべきです。

 

人間の脳は、複雑な分布を取り扱えませんが、それでも、1つの正規分布で近似するのか、2つの正規分布で近似するのかで見える世界は異なります。

 

筆者は、正規分布の数をラクダのコブに例えて、1コブラクダ、2コブラクダ、3コブラクダと呼んでいます。

 

必要に応じて、コブの数を増やすことで、見える世界が異なります。

 

1−2)若年失業率のバイアス

 

日本以外の国は、ジョブ型雇用をとっています。

 

ジョブ型雇用をとる場合、若年失業率は、年齢別失業率の1つのランクにすぎません。

 

フランスのように、解雇規制が強い国では、若年に特異な意味が付されることがありますが、それでも、年功型雇用特殊性に比べれば、比較になりません。

 

詰まり、条件の異なる若年失業率を比較するのであれば、バイアス補正が必要になります。

 

1−3)適正な失業率

 

ジョブ型雇用で、各雇用に求められるスキルが異なる場合には、失業が必ず発生します。社会システムのレジームシフトが発生する場合には、レジームシフトがない場合に比べて、失業率は高くなります。この高い失業率は、社会システムのレジームシフトには、必要な要素です。つまり、失業率が高いことが悪い条件ではありません。

 

社内失業を抱え、その結果、労働生産性が上がらず、賃金が異様に低下し続ける場合と、健全な失業のある社会を比較して、考えるべきです。

 

失業した人が、リスキリングで新しいスキルを身につけられれば、それは、社会レジームシフトの過程の一部を構成します。

 

失業せずに、社会システムのレジームシフトを起こすことは不可能です。これは、生態学の問題です。

 

問題は、失業した場合の所得保障や、リスキリングにかかる費用の捻出です。

 

2)低度人材の移入メカニズム

 

中国や韓国で、失業した人が、就職口を求めて、日本に移住してきます。中には、優秀な人もいるとは思いますが、基本は、本国で、就職することが困難な人ですから、2コブラクダで考えれば、高度人材以外の人材の母集団です。

 

日本は、能力に見合う給与を払いませんので、高度人材は、移入しません。

 

これは、ビザの高度人材の定義が、香港が4000万円以上であるのに対して、日本は1000万円であることから明らかです。

 

つまり、日本は、年功型雇用で、若年労働者の能力査定をしない結果、中国と韓国から、選択的に、程度人材を集めていることになります。

 

新卒一括採用で、体育会系で、体が丈夫であれば、採用するというのは、低度人材を選択的募集するフィルターです。

 

もしも高度人材を求めるのであれば、そのスキルを明示して、評価すべきです。例えば、ブログラマーであれば、コーデキングさせる、アルゴリズムを作らせるとうをすれば、能力がチェックできます。こうしたテストを通過する人材の比率は、10%以下かもしれませんが、高度人材なしに、ソフトウェアシステムを開発することはできません。

 

3)まとめ

 

低度人材を問題にする理由は、簡単です。

 

世界中が、デジタル社会へのレジームシフトをするために、高度人材の獲得に動いている中で、日本だけが、低度人材を集めています。

 

もちろん、その方針で、日本経済が成長すれば良いのですか、結果を見るかぎり、どちらが正しいかは明白です。

 

ジョブ型雇用で、高度人材の募集が進む中で、年功型雇用で、新卒一括採用をすることは、低度人材を集めることになります。

 

形式的にジョブ型雇用にしても、スキル評価とそれに見合う給与を提示できなければ、やはり、低度人材を集めることになります。

 

デジタル社会で、使える高度人材は、全体の5から10%です。メインはトップの5%です。

 

この人材を抱えない組織は、窓際族だけで構成される組織になります。

 

引用文献

 

これが低賃金・円安の本当の害毒、人材流出は日本の真の危機の始まり 2023/01/15 現代ビジネス   野口 悠紀雄

https://gendai.media/articles/-/104685