3)買い替え需要
前回まで、ズームレンズの話をしたので、今回は、単焦点レンズを考えてみます。
レンズ交換式カメラでは、レンズを販売することも、大きな収益の柱になっています。
CANONのEFマウントであれば、1万円代のEF50mmF1.8は、入門用のレンズで、このレンズを購入することで、レンズ購入に対する心理的な障壁を下げる効果があると考えられ、撒き餌レンズとも呼ばれます。
ところで、単焦点レンズを英語では、prime lensと呼びます。Primeには、「主要な、優良の、最良の、第一等の、 すばらしい、極上の」といった意味があります。
EF50mmF1.8は、古典的なダブルガウス構造で、特殊レンズは使っていません。
かなり、怪しいprimeなので、買い替える価値があります。
パナソニックで評価の高いレンズに、LUMIX G 20mmF1.7 IIがあります。
このレンズは、非球面レンズを2枚使っています。
MTFを見ると、中央に比べてレンズの周辺の解像度はかなり落ちています。
とはいえ、フルサイズセンサー用のEF50mmF1.8にくらべれば、クロップセンサーなので、レンズの中央部を使うことになります。特殊レンズも使っているので、primeと言えます。
20mmの画角で、LUMIX G 20mmF1.7 IIより、上のレベルのレンズはありません。
つまり、LUMIX G 20mmF1.7 IIを購入した人は、買い替えることはありません。
ハイグレードのレンズがある画角もあります。
25mmF1.7に対して、25mmF1.4、14mmF2.5に、対して15mmF1.7、42.5mmF1.7に対して、42.5mmF1.2といった具合です。
ハイグレードのレンズの価格が、ローグレードのレンズの価格の2倍程度の場合には、kakaku.comでは、売り上げランクの上にきています。
レンズの大きさが違いますので、ローグレードのレンズのF値は、ハイグレードのレンズのF値より暗くなります。しかし、同じF値で比べて大きな差はありません。
これは、折角、F値の小さな明るいレンズを購入すると、開放近くで使うので、比較されることが少なく、気付きにくいですが、ローグレードのレンズの性能が高いので、単焦点の場合には、差は小さく、画像を見て判別することは、困難です。LEICAブランドレンズの場合には、色のりが違うので、色で見分けられることがあります。しかし、色を調整すれば、判別は難しいです。
つまり、MFTでは、フルサイズカメラのレンズの買い替えというビジネスモデルは成立しません。
これは、MFTのレンズのラインアップをみれば、確認できます。
ズームレンズの場合には、グレードアップされたり、ズームレンジが異なるレンズが新規に投入されます。
単焦点レンズの場合には、グレードアップは、少ないです。
グレードアップの場合には、対候性、コーティングの見直し、特殊レンズの素材の入れ替えが主です。レンズの構成を見直すことは稀です。
これは、言い換えれば、レンズのサイズが決まれば、レンズをバージョンアップできる余地が少ないことを意味します。
フィルム時代には、レンズの性能の更新余地が大きくありました。
しかし、物理特性をみれば、MFTの単焦点レンズは、ローグレードであっても、フイルム時代の単焦点レンズを超えています。
問題が起こりそうな周辺はクロップしています。
安価になった特殊レンズは多投入しています。
デジタル補正で、レンズの設計の自由度は上がっています。
MFTの設計思想からすれば、大型で高価なレンズは、フルサイズに任せておけばよいと考えられます。
そう考えると、買い替え需要が期待できるのは、次の2点になります。
(C1)今までにない画角のレンズ
(C2)ボディ
10月下旬に、G9MK2が出ます。5年半ぶりのバージョンアップです。
一方では、中サイズのカメラでは後継機種がなくなったものもあります。
つまり、最近は、(C2)には、重点がおかれなかったことがわかります。
レンズのバージョンアップができないのであれば、(C2)のセンサーやマルチショットの改善にしか、買い替えビジネスはないと思うのですが、メーカーの対応はそうなっていません。
MFTは、買い替え需要が生じにくいです。
同じ問題は、APC-Sにも、波及しています。
Fujifilmは、APC-Sに、4000万画素をつんで、古い設計のレンズを解像度不足にしてしまいました。しかし、それでも、買い替えが起こるとは限りません。
AFが、SONY、CANONレベルでなければ、買い替え需要があるかも知れません。
Fujifilmは、実は、「(C1)今までにない画角のレンズ」に熱心で、フルサイズ換算画角で、Fujifilmでしか実現できない画角があります。
単焦点レンズは、フルサイズセンサーをカバーしても、あまり大きくならないので、MFTとAPCーSでは、サイズ麺のメリットは出にくいと思われます。