パナソニックにみるレンズの設計費用(9)20mmF1.7再考

20mmF1.7について、考えてみます。

 

良いレンズとは、他のレンズでは、撮影できないような写真が撮れるレンズをさします。

 

他のレンズでは、撮影できないような写真が撮れても、画像が破綻していれば、問題外になります。

 

ズームレンズの場合には、画角を変化させると条件が変わるので、基本的に、どの画角でも破綻のない画像を吐き出すレンズを目指します。

 

クセがあるが、良い画像を吐き出すズームレンズは、作ることが難しくなります。

 

一方、単焦点レンズであれば、個性的な画像を吐き出すレンズをつくことができます。

 

単焦点レンズは、ズームレンズに比べて、小型で、F値の小さなレンズを設計しやすくなります。しかし、単焦点レンズの特徴は、それだけではないと思います。

 

さて、20mmF1.7は、全群繰り出しレンズです。

 

焦点距離を合わせる場合に、レンズはグループとして移動します。

 

このために、このレンズは、コンティニアス・オートフォーカスができません。

 

レンズをグループで移動させれば、レンズ間の位置関係はかわりません。

 

つまり、レンズ間の位置関係を固定化した上で、ぎりぎりのチューニングが可能になります。

 

全群繰り出しレンズになると、コンティニアス・オートフォーカスがうまくできません。

 

富士フィルムのXマウントの交換レンズの第1号のXF35mmF1.4も全群繰り出しレンズで、オートフォーカスがうるさいことで知られています。

 

つまり、20mmF1.7は、MFTでは、恐らく唯一の全群繰り出しレンズと思われます。

 

20mmF1.7の描写を決めている特性は、全群繰り出しレンズにあり、その結果、他のレンズでは、撮影できない個性的な写真が撮れます。

 

20mmF1.7の描写の説明は難しいです。解像度や色収差は、小さいですが、この2点でいえば、より優秀なレンズは他にもあります。

 

特徴は、コントラストの強さと色のりにあると思いますが、一言で説明できません。

 

写真1は、20mmF1.7で撮影しています。ボケは弱いですが、ボケていない部分から、次第にボケが大きくなるボケのグラデーションは見事です。

 

色は、LEICAブランドのように派手にはなりませんが、メリハリは強いです。

 

写真1のようなグラデーションを他のレンズで再現することは難しいと思います。

 

 

写真1 20mmF1.7