EF50mmF1.8の研究(8)

EF50mmF1.8は、安価でボケるレンズとしてベストセラーになりました。

 

このレンズは、交換レンズの基準になっているので、廃番になる前に購入してみました。

 

ここまでで、わかったことをまとめておきます。

 

(1)換算85㎜の画角

 

EF50mmF1.8は、APS-Cにつけて、85㎜で使っています。

これは、本来の使い方ではありませんが、ストリートフォトの定番の85㎜の画角になれるためには、換算85㎜の単焦点レンズがあってもよいと考えたからです。

はっきりいって換算85㎜は、使いにくいです。

85㎜は余分なものが写らないので、主題に焦点がいきます。

なおかつ、顕著な望遠にならない画角です。

 

しかし、これは、トリミング(クロップ)しない場合の話です。

 

筆者は、最近は、犬の写真を撮っていますので、トリミングしないことはまずなくなっています。

 

トリミングを前提にすれば、主題がフレームから切れてしまうことが第1の問題であって、主題が、ちょっと小さ目に写っていても、かまいません。

 

85㎜では、主題がフレームに入らないことが多発します。

 

フィルム時代であれば、85㎜で工夫して、フレームにおさめる練習をつむわけですが、

デジタルでは、その必要はないと思います。

つまり、50から60mmで撮影して、その後で、トリミングする方が合理的です。

 

(2)ボケについて

 

EF50mm1.8は、それなりにボケるという点が評価されています。

 

このボケの量は、フルフレームで使っても、APS-Cで使っても同じになります。

 

(2-1)APS-Cのボケ

 

にもかかわらず、APS-Cはボケないという通説が通っています。

 

EF50mmF1.8を実際に使ってみて、気づいたことがあります。

 

それは、EF50mmF1.8を換算85㎜で使うことの是非にもつながります。

 

フイルムカメラで訓練したプロのカメラマンは、「フルフレームでのレンズの画角とF値とボケの量」が頭に刷り込まれています。そうすると、APS-Cでは、思ったほどボケないことになります。

 

つまり、刷り込みに対して違和感があるという話です。

 

この点については、理解できます。

 

逆にいえば、この問題は、「フルフレームでのレンズの画角とF値とボケの量」が頭に刷り込まれていない人には関係がありません。

 

もちろん、フィルム時代と同じように、「フルフレームでのレンズの画角とF値とボケの量」が頭に刷り込んでこそプロであるという目標を持っていれば、それに、邁進すべきです。

 

ただし、現在は、スマホに始まって、センサーサイズの選択肢が多いので、「フルフレームでのレンズの画角とF値とボケの量」が既に学習済みなら別ですが、新に、「フルフレームでのレンズの画角とF値とボケの量」を学習する価値があるとは思えません。

 

ボケの量は、望遠になれば大きくなります。

 

EF50mmF1.8のボケの量が各段に多い訳ではありません。

 

(2-2)ボケの質

 

EF50mmF1.8のボケの質を換算画角が近いオリンパスの45㎜F1.8と比べてみました。

 

ボケが綺麗に写る点では、オリンパスの45㎜F1.8の圧勝でした。

 

しかし、オリンパスの45㎜F1.8はかなり異常なレンズです。

 

解像度は気にせずに、ボケを重視したレンズで、類似の性格のレンズは、他には、オリンパスの25㎜F1.8しかないという人もいます。

 

筆者は、オリンパスの45㎜F1.8を持っていますので、EF50mmF1.8は無駄な投資であったようにも見えます。

 

しかし、オリンパスの45㎜F1.8では、EF50mmF1.8のような硬い写真は撮れません。

 

つまり、ボケの質ではなく、解像感でみれば、EF50mmF1.8を購入した価値はありました。

 

これは、オリンパスの45㎜F1.8を持っているからの話で、普通の人には、関係がありません。

 

(2-3)オートフォーカス

 

EF50mmF1.8を購入した時のもう一つのメリットは、オートフォーカスが使えることです。

 

1.5万円以下の50mmのレンズであれば、中国製のよいレンズがあります。イメージサークルAPS-Cでもよければ、選択の幅は更に広いです。ただし、中国製のレンズは、マニュルフォーカスになります。

 

Cannon純正のマウントアダプターを使ったEF50mmF1.8のによるタンポポの撮影では、半分くらいの場合にはオートフォーカスが使えず、マニュアルフォーカスになりました。

 

オートフォーカスが使えない場合は、被写界深度が浅い場合が多くなります。

 

マニュアルフォーカス用のガイドをONにすると、焦点のあっているピクセルの色が、カメラのモニター上で変わります。

 

ところが、この表示が曲者で、ピクセルの色が変わっていても焦点が合っていないことがあります。

 

対策は、焦点を少し変えて多めに撮影するしかありません。

 

画質は、中国製レンズの方が上です。投入されている特殊レンズの数が全く違います。

 

花の撮影は、焦点合わせが難しいので、通常ではここまで、オートフォーカスが使えないことは少ないと思いますが、購入前の期待を裏切る結果になりました。

 

(3)F4の世界

 

ミラーレスカメラの交換レンズでは、各社ともF2.8通しのズームレンズが標準のプロ仕様の万能のベストなおすすめレンズになります。

 

F2.8通しのズームレンズの性能はよいですが、大きく、重く、高価になります。

 

体力勝負で頑張るプロ御用達のレンズです。

 

次善の、第2の選択は、F4通しのズームレンズを使うことです。

 

もちろん、F4は、F2.8の代わりにはなりません。

 

しかし、F2.8通しのズームレンズを買う予算があれば、F4通しのズームレンズに加えて、単焦点レンズが購入できます。単焦点レンズのF値は、F1.4からF2が多く、F2.8よりは明るく、画質もよくなります。

 

もっとも、最近は、ズームレンズの性能が劇的に良くなって、単焦点レンズとの差が小さくなりました。

 

また、センサーの高感度特性が改善され、手振れ防止機能が進化したため、F2.8では撮影できるが、F4では撮影できないシーンは、ほぼなくなりました、

 

第3の選択は、便利ズームを使うことです。これはシャッターチャンスには強いですが、流石(さすが)に、画質に弱点がでます。

 

この分類の例外は、オリンパスの12-100mmF4です。このレンズは、換算画角は、24㎜から200mmと標準ズームと望遠ズームをカバーしていますので、便利ズームになりますが、画質は、F4通しのズームレンズになっています。便利ズームとしては、画角のレンジが狭く、サイズは大きくて、重くなります。

 

F4通しのズームレンズは、一見すると、EF50mmF1.8とは関係がないように見えるかも知れません。

 

しかし、F2.8通しのズームレンズをもっていれば、EF50mmF1.8は、不要と思います。

EF50mmF1.8は持ち運びが便利ですが、F2.8通しのズームレンズを使う人は、持ち運びの困難を気にするとは思えません。

 

問題は、EF50mmF1.8が、F4通しのズームレンズに加えて、購入する価値があるかという点になります。スペックからすれば、絶対的なボケ量には差がありますが、その差が、表現の制約になることは少ないと考えます。

 

写真1は、オリンパスの12-100mmF4で撮影しています。このレンズは、F4通しのズームレンズとしては異様に大きくて重い(561g)ですが、ズームレンジ狭ければ、重量は約半分になります。オリンパスの12-45mm F4.0 は、254gで、40-150mm F4.0は、382gです。

 

F4通しのズームレンズがある場合に、EF50mmF1.8が必要かという点ですが、スペックで見るほどの差はないと感じます。

 

カメラとレンズは手段にすぎません。

 

ポイントは表現したいものが画像にあらわせるかです。

 

写真1のボケの丸は小さいですが、それが表現の障害にはなっていません。

 

つまり、EF50mmF1.8の出番はあまりない気がします。

 

デジタルカメラになって、F4通しのズームレンズは、一般に思われているより、はるかに万能のレンズになったと思います。

 

写真1 12-100mmF4