MFTのカメラの動向が、今秋大きく変わると思われます。
言うまでもなく、広角側では、レンズも小さいのでMFTは不利ですが、望遠になれば、話は別です。
1)望遠レンズ
CANONのRF100-300mm F2.8 L IS USMは大変すぐれたレンズですが、約2590gあり、価格も150万円します。この投資を回収するには、かなりの枚数の写真を撮影する必要がありますので、プロ以外は買わないと思われます。
MFTのLEICA DG ELMARIT 200mm/F2.8であれば、クロップされるので、400㎜で撮影できます。
このレンズは28万円、1245gでしたが、現在製造中止になっています。
また、パナソニックの1.4倍と2倍のテレコンバータも製造中止になっています。
残っているのはLEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm/F2.8-4.0 だけです。
つまり、パナソニックは、MFTの望遠レンズを製造中止にするか、ラインアップをリニューアルするかのいずれかになると思われます。
静止画用の最上位機種のカメラG9は、2018年 1月25日の発売から既に、5年以上が経過しています。その間にでた新機種は動画をメインにしたものだけです。
「カメラの画質はここ何世代か全く進化していない」という話もあります。
筆者も、実際に、自動焦点の性能は上がっていますが、画質については、2013年頃からあまり変わっていないと思います。
パナソニックは、G9IIを出すようなので、それが出てくれば、パナソニックの展望が分ると思われます。
OMSDは、50-200mm F2.8 PROと 50-250mm F4の2本のレンズを秋に投入する計画です。
つまり、OMSDは、望遠レンズのラインアップをリニューアルする計画です。
望遠レンズのマーケットは、距離を延ばして、F値をさげれば、レンズは大きく、重く、高価になるので、売れなくなります。
どの価格帯の製品をめざすかは、難しい選択になります。撮影の難易度の高いのは、小型の鳥の撮影になりますが、これを好んで撮影する人は、限定されます。
MFTは、望遠レンズを考慮から外せば、小型化できます。とはいえ、小型で、性能のよいMFTのカメラボディはありません。
MFTの小型の入門機は、10年近く、表面のデザインが少し変わっただけで、内部は、ほとんどモデルチェンジされていません。Fujifilmのように、入門機からは、実質撤退してしまったメーカーもあるので、販売しているだけよいといった感じです。
以前は、入門機を入り口にして、グレードの高いカメラに買い替えをするという怪しげなビジネスモデルが流布していました。現在、入門機として成功しているのは、CANONのEOS-R100と EOSーR50のKiss系列のカメラだけと思われます。
CANONは、入門機の購入者は、グレードアップはしないというビジネスモデルで、小型化と価格を抑えることにポイントをおいています。
APS-CのRFマウントと比べて、MFTには、価格とサイズでの優位はありません。
2)廃止マウントの話
筆者が、今まで使ってきたマウントで廃止になったものに、Nikon1、CANON EF-M、NIKON Fマウントがあります。PentaxのKマウントは廃止になりませんでしたが、売れないので、カメラも、レンズも非常に高価になってしまいました。
FujifilmのXマウントも似た傾向にあります。F2.8 通しのズームレンズの価格は、フルサイズの3分の2くらいですが、レンズのサイズは、フルサイズとかわりません。カメラ本体の価格とサイズも、フルサイズとあまり変わりません。
フルサイズのカメラに、サイドパーティのレンズをつければ、価格は、Fujifilmより安くなり、重量とサイズは変わりません。こうなると、Xマウントには魅力はありません。
結局、カメラ本体の価格を抑えられるのは、販売量が多い、ソニーとCANONだけで、他のマウントは残らない気もします。
ソニーのEマウントの情報は基本公開されているので、他のカメラメーカーがつぶれれば、Eマウントのレンズを作ることになるのでしょうか。
今までも、PENTAXなど売り上げが減ったカメラメーカーからは、シグマやタムロンに転職した人もいますので、良いレンズを作ってくれれば、ブランドにこだわらず、それでよい気もします。
SIGMAやタムロンでは、複数メーカー向けのレンズを作っています。
こうすれば、開発経費を押さえられます。
サイドパーティを除くと、レンズでビジネスができているのは、CANONだけかもしれません。
また、ラインアップにこだわって、売れないレンズをつくる必要はありません。
その結果、カメラメーカーが、サイドパーティのOEMのレンズを発売するようになっています。
ソニーのカメラは売れていますが、レンズは、サイドパーティの安価なレンズを使用する人も多いと思います。
CANONもLレンズは高価ですが、プロの圧倒的な支援を受けています。
これはレンズの性能よりも、リアルタイムのメンテナンスサービスの有無に依存しています。
F1などでは、CANONはメンテナンスクルーを派遣して、有償ですがその場で、メンテナンスをしています。
一方では、Kissシリーズ用など、暗いけれど安価なレンズのラインアップが充実しています。
こう考えるとカメラとレンズをセットで考えることは必ずしもよい戦略とは思われません。
広角と望遠を同時に持ち歩けば、頻繁にレンズを交換できないので、2カメラ体制になります。このような場合には、広角用のカメラと望遠用のカメラが同じである必要はありません。広角用は小型で構わないので、小型で高性能のカメラがあれば、便利ですが、現在の小型カメラは、入門機で性能がよくありません。
MFTマウントは、ある意味では、カメラとレンズの分離のチャンスでしたが、自動焦点、手振れなど、仕様が公開されていない部分があります。
韓国や中国のレンズメーカーは自動視点レンズを出せていません。
おそらく、Lマウントでも同じ問題が生じると思います。
ストロボの多灯電子制御は、Godoxの独壇場になってしまいました。
カメラでも水平分業でビジネスができれば、垂直統合より強くなると思われます。
Fujifilmは、Xマウントの情報を公開して、シグマが、Xマウントのレンズを作っています。その結果、カメラの売りあげが増えますが、レンズの売り上げが減っているはずです。
つまり、Fujifilmの社内で、カメラ部門とレンズ部門の利害が一致しません。
Eマウントでは、韓国や中国のレンズマーカーも自動焦点レンズを販売しています。
Fujifilmのレンズ部門が、ソニーのEマウントのレンズを製造して、販売することは可能です。
そうなると、Fujifilmの高いカメラを買う人は減ると思われます。
3)まとめ
現時点では、結論は出ませんが、今秋には、MFTの展望がかなりはっきりしてくると思います。
無理をして垂直統合を続けるメリットはないと考えます。
TSMCは、ASMLが最大の顧客で、ASMLのレーザ用のレンズは独企業のカール・ツァイス(ZEISS)から提供されています。
カール・ツァイスが生産能力不足は、TSMCに影響しているとも言われています。
カール・ツァイスは2018年にAndroid搭載カメラ「ZEISS ZX1」を発表し、2020年10月以降ドイツで発売しています。画像編集ソフト「Adobe Lightroom CC」や「Instagram」を内蔵し、写真の編集からシェアまで一台で完結しています。レンズは非交換式で35mm f/2、センサーはフルサイズ3740万画素CMOSセンサー、価格は6000ドルですが、日本では販売していないようです。
ASMLから、カール・ツァイスの代わりになれると評価される日本のレンズメーカーはないかも知れません。