6)マーケティングの問題
6-1)EF-Mとの比較
EF-Mは、CANONの最初のミラーレスのマウント規格ですが、現在は、廃盤になっています。
CANONのレンズ交換式カメラのベストセラーは、EF-SマウントのKissシリーズにはじまり、ミラーレスでは、EF-MマウントのKissシリーズのカメラが発売され、ベストセラーになりました。
EF-Mマウントのコンセプトは分かり易いのでの、MFTと比較してみます。
カメラ本体は、小型がコンセプトで、カメラには、手ブレ防止はついていません。
カメラのサイズは、パナソニックの入門機より大きいですが、手ブレ防止のあるオリンパスの入門機と同じサイズです。つまり、MFTより大きなセンサーサイズですが、カメラのサイズは、MFT並みです。
CANONから発売されたレンズは、8本です。このうちEF-M15-45mm F3.5-6.3は、F-M18-55mmの置き換えなので、実質は7本になります。
レンズの重量は、105gから300gです。小型化、軽量化が、追求されています。
F値は、2本の単焦点レンズ以外は暗く、写りは価格やレンズのサイズに左右されます。しかし、レンズはよく作りこまれていて、コストパフォーマンスは高いです。
カメラとレンズのサイズと価格を考えれば、十分満足のできる画質を提供するというコンセプトです。
2012年に、カメラが発売されてから、キットの望遠ズームがそろったのは、2014年、便利ズームがそろったのは、2016年になります。その間は、マウントアダプターをつかって、EFレンズを使うことが推奨されていました。キットには、マウントアダプターが添付されていたので、恐らく、 EF50mm F1.8 STMやその前身のレンズをつかった人も多いと思います。
ちなみに、50mm F1.8 のボケ量を実現できるレンズは、EF-Mの中にはありませんので、ボケ量を求めるのであれば、EFレンズを使う前提になっています。
F2.8通しのj標準ズームがなかったことは、画質を求めるのであれば、EF-Sマウントの一眼レフをつかえというシグナルになります。
2012 EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM 210g メーカー希望小売価格(税別):¥35,000
2012 EF-M22mm F2 STM 105g メーカー希望小売価格(税別):¥30,000
2013 EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM 220g メーカー希望小売価格(税別):¥72,000
2014 EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM 260g メーカー希望小売価格(税別):¥49,000
2015 EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM 130g メーカー希望小売価格(税別):¥35,000
2016 EF-M28mm F3.5 マクロ IS STM 130g ーカー希望小売価格(税別):¥45,000
2016 EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM 300g メーカー希望小売価格(税別):¥68,000
2018 EF-M32mm F1.4 STM 235g メーカー希望小売価格(税別):¥72,000
2015 EF50mm F1.8 STM 160g メ ーカー希望小売価格(税別):¥19,500
EF-MのKissがベストセラーになった理由は、お値段に見合う画像が保証されていたためとおもわれます。FISHEYEと超望遠はありませんので、それが、必要ならEFレンズを使うことになりますが、EF-Mマウントの購入者で、そのような人は例外と考えられています。
EF-Mマウントは、カメラを購入する層を設定して、その層に合わせた製品提供をしています。
なお、CANONの購入層別マーケティングは、以下に、詳しいです。
Canon EOS
https://en.wikipedia.org/wiki/Canon_EOS
これと、以下を比べると、マーケティングの違いは明白です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Lumix
6-2)MFTの問題点
EFーMでは、ともかく、小型で安価なレンズで、一そろいのシステムが組めるようになっています。
MFTでは、EF-Mのように、初心者向けのラインアップが整理されている訳ではありません。
EF-MのEF-M15-45mm F3.5-6.3は、余り好きなレンズではありません。 EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS の方がよく写る気がします。
とはいえ、パナソニックが、入門用のミラーレスにつけたLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6よりは良く写ると思います。フジノンレンズ XC15-45mmF3.5-5.6にもまけている気がします。望遠端が45㎜であると、Fujifilmでは、換算68㎜、CANONでは、換算72㎜になります。MTFの32mmでは、換算64㎜にしかなりません。
キットレンズの望遠ズームは、LUMIX G VARIO 35-100mm F4.0-5.6でした。
これは、フルサイズの換算70-200mmを想定しています。
しかし、EF-Mでは、55-200mmがキットレンズです。望遠端が320㎜になります。
EF-Sマウントのキットレンズは、EF-S55-250mm F4-5.6 IS STMでした。望遠端は換算400㎜です。
NIKONのキットレンズの望遠端は、最初は200㎜でしたが、CANONの250mmをうけて、途中から、300mmに伸びます。換算450㎜です。
MFTの入門キットレンズの望遠ズームは、パナソニックが、換算200㎜、OMDSが、換算300mmです。
初心者は、レンズを買い替えません。特に、高価なズームレンズは購入しません。
MFTは、センサーが小さいので、望遠側が有利になります。
しかし、キットでみれば、以下になります。
パナソニックが、換算200㎜
OMDSが、換算300㎜
CANONのEF-Mが、換算320mm
CANONのEF-Sが、換算400㎜
NIKONのFが換算、450mm
初心者は、レンズの性能はわかりませんので、ズームレンジに着目します。
F値は、ISO感度で置き換えられる部分がありますが、画角は置き換え不可能なので、ズームレンジに着目するのは、正しい判断です。
この状態で、もしも1台だけ、ミラーレスのキットを購入するのであれば、CANONか、NIKONになります。
換算200mmでは、運動会の撮影には使えません。
CANONは、EF-Mに、55-250㎜ではなく、55-200mmを搭載しました。
これは、サイズが問題にならない人は、ミレーレスではなく、性能のよい(ズームレンジの広い)EF-Sマウントを進めるメッセージになっています。
LUMIX G VARIO 35-100mm F4.0-5.6は、マーケットのないレンズと思います。
このレンズは、キットについていたので、手元にありますが、1度しか使ったことがありません。
あえて、他の望遠ズームがあれば、このレンズを持ち出す場合はありません。
キットレンズのM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6の中古が1万円で入手でき、ズームレンジも広く、遥かに良く写ります。サイズが大きいので当たり前です。
レンズを極端に小さくすれば、画質に無理がきます。
MTFなどのスペックで問題がなくとも、画質に余裕がなくなります。
望遠ズームレンズとしては、ED 40-150mm F4.0-5.6の190gでも、十分軽いです。
マーケットを考えれば、キットの価格が、望遠ズームをつけるとプラス1万円ではなく、プラス2万円になっても、望遠端300mmのキットレンズを準備すべきだったと考えます。
今までのキットでは、MTFでは撮影できないが、ASP-Cであれば撮影できる対象がありますので、これでは、MFTの販売台数が伸びなくとも当然と思います。
パナソニックも、OMDSも、標準キットレンズが小さすぎると感じます。
Fujifilmは、フジノンレンズ XC15-45mmF3.5-5.6で、広角端を換算22.5㎜に設定しています。換算24㎜より換算1.5㎜広くなっています。
広角の1㎜の差は大きいので、今まで、撮影できなかったような写真が撮れます。
MFTは、サイズに余裕があるのですから、ズームレンジを広くとる、少しだけ、F値を明るくするなど工夫があれば、差別化できたと思います。