帰納法(前例主義)の馬鹿馬鹿しさ

欧米で成功している方法をコピーして、補助金をつけて国産化する方法は、1980年代には行き詰っています。1980年代まで、この方法が成功した原因は以下です。

 

(S1)日本の人経費が安かった。ソ連と中国は、冷戦で対象外であり、アジアは基本インフラ(電気、道路、港湾)が未整備で、競合相手がいなかった。

 

(S2)技術進歩が緩やかで、ソフトウェアがなかったので、製品は、外観を見て、リバースエンジニアリングをすれば、容易にコピーできた。

 

成功事例を集めて、帰納法で、前例を抽出して、補助金をつけて工場をつくる方法は、1980年代中ごろまでは成功していました。簡単に言えば、工場をつくりさえすればよかったのです。

 

銀行は、工場の建設に融資して、金利を稼ぎました。

 

1980年代中ごろになって、この方法は行き詰ります。工場を立てても、製品が売れなくなります。この時に、銀行は、融資先を選別しし、ベンチャーを育てて、伸びる産業に投資すべきでした。しかし、それを怠って、土地に投資した結果、バブルになります。

 

政府と産業界は、バブル以降も、補助金を使って、欧米の古いタイプの工場を日本で作りますが、悉く失敗します。

 

それは、(S1)と(S2)の条件が失われたので、当然のことです、

 

半導体工場を作れば、確実に儲けが出るのであらば、豊富な資金を持っているGAFAMが、かならず投資しているはずです。

 

TSMCやASMLのように、次のステップの製造ラインを設計するノウハウがあれば、利益を出すことが可能ですが、ノウハウがなければ必ず赤字になります。

 

GAFAMは、このことを理解しています。

 

防衛上重要だから、赤字でも税金を投入し続けて半導体を作り続けるという方法はあります。

 

国産の牛肉は、オーストラリア産の2倍以上します。しかも、畜産農家には、補助金が膨大に偽込まれてています。

 

牛肉のように赤字の製品を補助金を投入して作り続けることが可能な条件は、次の2つです。

 

(T1)赤字を補填できる貿易収支の黒字がある。

 

(T2) 赤字の金額が、補填可能なほど小さい。

 

半導体には、(T1)と(T2)の条件は当てはまりません。

 

したがって、時間の問題で、半導体の工場の売却と撤退になります。

 

TSMC,インテルサムスン以外が、半導体の工場を作らない理由は、工場を作っても赤字で経営できないことが自明だからです。

 

台湾TSMCは、2021年に、米国工場計画で建設費は6倍、人件費は3割高いと言いました。超過費用を、TSMCは、米政府に補助金として要求しています。初期投資の建設費の6倍は、補助金でキャンセルできるかも知れませんが、人件費の3割高は、解消可能かが、グレーです。

 

同じように考えれば、日本に半導体工場を作る場合には、台湾に作る場合より、いくら割り増しになるかを計算して、差額を補助することになります。

 

しかし、そのような数字は一切出てきません。TSMCは、駒本工場の割り増しコストを計算して、補助金との収支を計算しているはずです。



エビデンスにもどつく政策決定がなされていれば、赤字幅の数字は出てきます。これは、2023年の日本以外の先進国の常識です。

 

日本の経営者は、「ものが良ければ、作れば売れる」と考えてきたと言われます。

 

しかし、ここでいう「ものがよい」は、故障率が低いという低レベルの話です。半導体の「ものがよい」は、微細化が進んでいることです。日本製品の「ものはよくない」わけです。

 

つくれば売れるという話は、1980年代のバブルのスタート以前の話です。

 

それまでは、前例主義で、コピーを作ればうれたのです。

 

未だにm40年前の先例主義をまだ繰り返していますので、成功すると考える理由は見つかりません。

 

要するに、エビデンスに基づいて、軌道修正せずに、間違いを繰り返しますので、経済は疲弊します。