レンズを巡る旅;17mmのダブルガウス

ダブルガウス構成のレンズは、特殊レンズを投入しなくとも、収差の補正が可能です。

 

ボケはきれいになります。

 

レンズ中央の画質は良いですが、周辺の画質はあまりよくありません。

 

ダブルガウスレンズは、フィルムカメラ時代に、量産されました。

 

ダブルガウス構成のレンズは、レンズの枚数が少ないので、抜けのよい画像になります。

 

最近のレンズは、特殊レンズを投入して、レンズ枚数の増加を気にしません。

 

レンズの枚数を増やして調整することは、料理で言えば、調味料を多種類加える方法です。

 

カレーや、シチューのルーをつかう調理法です。

 

料理では、調味料の種類を増やすと、素材の特徴や違いがわからなくなります。

 

刺身になるような鮮度のよい素材を、調味料を多種類加えて、煮込んでも、素材の良さは失われてしまいます。

 

写真も同じで、レンズ枚数の増加させ、デジタル現像で調整すると、フィルム時代であれば、失敗になった写真を、それなりの写真にすることができます。

 

しかし、この方法では、どの写真も、金太郎飴になってしまいます。

 

プロが使うF2.8通しのズームレンズは、金太郎飴でもよいので、ともかく失敗しない写真が撮影できることが設計思想になっています。

 

プロが結婚式で、撮影する写真では、失敗がないことが最優先です。

 

失敗がないことが、プロとアマチュアの違いです。

 

逆に、誰も撮影したことのない写真を撮影するには、クセのある単焦点レンズを使うべきです。

 

ダブルガウスレンズの設計は、画角では、35㎜から50mm前後が可能です。

 

より、広角やより望遠で、ダブルガウスレンズを採用している例は少ないです。

 

銘匠光学 TTArtisan 35mm f/1.4は、1万円前後の格安レンズですが、ダブルガウスレンズで良く写ります。

 

銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4は、ダブルガウスではなく、特殊レンズを使っているため、1.7万円前後と少し高価になっています。

 

画角の違いはあるのですが、この2本で、使いたくなるレンズは、ダブルガウスのTTArtisan 35mm f/1.4です。

 

ダブルガウスでは、主題は中央に、周辺は、ボケる構図が主流になります。

 

周辺の解像度は絞った場合にしか問題になりません。

 

写真1は、 TTArtisan 35mm f/1.4のMTFです。

 

周辺に行くと、MTFの曲線が下がり、周辺(グラフの右側)の画質が劣化していくことがわかります。

 

30本の線は、0.6以下です。

 

10本/mm の曲線が1に近いほどコントラストがよくヌケの良いレンズになり、30本/mmの数値が高いほど高解像なレンズになります。

 

高周波の線があまり高くないと、写真は柔らかくなり、ボケはきれいになります。

 

写真2は、 TTArtisan 35mm f/1.4のF1.4の撮影例です。

 

ボケがよく出ています。

 

さて、今回のテーマは、銘匠光学が、ダブルガウスを放棄した17mmのダブルガウスレンズです。

 

フォーサーズからMFTの切り替えで、先行したメーカーはパナソニックでした。

 

オリンパスは、最初のMFTのカメラとして、E-PL1を2009年に発売します。

 

その時に、キットレンズとして、ダブルガウス構成のM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8を発売しています。

 

17㎜の画角では、単純には、ダブルガウス構成はできませんので、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8では、非球面レンズを1枚入れることで、ダブルガウス構成を実現しています。

 

このレンズは、2009年には、強気の4万9,875円という価格設定でしたが、2013年には、3万1,500円に値下げしています。

 

このレンズの評価は割れています。

 

多くの評価は、解像度があまりに低いというものです。

 

F値が2.8なので、数値の上では、単焦点のメリットはすくなくなります。

 

MFTのレンズは、パナソニックは最初からカメラのデジタル補正ありで設計していましたが、オリンパスは、最初は、デジタル補正なしでスタートしています。

 

最終的には、オリンパスも、デジタル補正ありのカメラとレンズに収束するのですが、古いレンズレビューは、カメラとレンズのデジタル補正の対応が混乱しています。つまり、最近のカメラで古いレンズ使う場合には、レビューが当てはまりません。

 

さて、キットレンズとして、ダブルガウス構成のM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8を設計した設計思想などこにあったのでしょうか。

 

設計者は、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8で撮影した写真をみれば、E-PL1が売れると確信していたはずです。

 

写真掲示サイトで、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8の写真を見ることができます。

 

結論から言えば、17㎜のダブルガウスでは、恐ろしくノスタルジックな写真が撮れています。

 

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8は、現在は、製造中止で、より高価で、レンズ枚数の多い17mm F1.8が、現行レンズです。

 

しかし、撮影例を見るかぎり、ノスタルジックな写真を撮るのであれば、17mm F2.8に分があると思います。

 

フルサイズカメラのレンズは高価になり、個性的なレンズは、売れない可能性が高いです。

 

MFTでは、レンズが安価になるので、かなり個性的レンズが製造されています。

 

17㎜のダブルガウスレンズは、他に例がないと思います。

 

写真1

 

 

写真2