何でも手に入るわけではない

BBCによれば、以下のようになります。(筆者の要約)



 

北大西洋条約機構NATO)首脳会議が12日、閉幕しました。

 

NATOは、ウクライナが求めていた自動的な早期加盟は認めませんでした。



ここで、英国のウォレス国防相は、アメリカを筆頭とする軍事支援国にかかっている政治的圧力を、ウクライナはもっと理解しようとすべきだと言った。アメリカをアマゾンの支店のようにみなし、武器の買い物リストを手にワシントンを訪れるなら、どうしても「文句」が出るだろうと指摘しました。

 

ほぼ1年半にわたり、西側の政府はウクライナの要求を聞き入れ、その大部分に応じてきました。ウクライナは、常に追加の要求を重ね、西側諸国は結局、肩に乗せて発射する携行型ミサイルから装甲車、主力戦車、そしてついにクラスター弾まで提供する計画です。

 

とはいえ、サミットでは「だめなものはだめ」ということもはっきりしました。

 

 

ロシアのキーウへの侵攻の場合には、兵器の投入の効果は明快でした。

 

戦況は、半年程度で、膠着して、大きな変化が見えなくなりました。

 

2023年6月10日に、ウクライナ軍の兵士たちが反転攻勢を開始しました。

 

Nesweekによれば、次のようになります。

 

 

2022年の9月6日〜10月2日の約1カ月に実施した反転攻勢では、ウクライナ軍は500以上の集落と4600平方マイル(約120ヘクタール)の領土を奪還した。(これに比べれば、筆者注)現在進行中の反攻は膠着状態に陥っている。ウクライナのボロロディミル・ゼレンスキー大統領は、現在の状況を「望んでいたよりも遅い」と表現した。

 

 

1平方マイルは、 2.59 km2 です。

4600平方マイルは、11914km2=120万ヘクタールです。

Newsweekの記事では「万」が落ちています。

 

日本の都道府県で面積の小さいランクは以下です。

1位 香川県 1,877㎢

2位 大阪府 1,905㎢

3位 東京都 2,194㎢

 

11914km2は東京都5.4個分、大阪府6.3個分になります。

 

面積の大きい順でいえば

6位 秋田県 11,637.52

程度になります。

 

これは、2022年の攻勢であり、2023年は、膠着です。

 

GIS衛星写真で見る限り、大きな戦況の変化はありません。

 

現状は、ベトナム戦争を思い起こさせます。

 

開戦当初、アメリカの最新編器をもってすれば、ベトナム戦争で勝利することは容易であると考えられていました。しかし、ゲリラになすすべはありませんでした。北ベトナムから南ベトナムへの補給物資は、隣国のラオスを経由していました。

 

ラオスは、表向きは戦場ではなく、米軍は駐留していませんでした。

 

中央情報局(CIA)は、ベトナム戦争時に、ラオスで秘密作戦を行うために設立されたフロントカンパニーとして、エア・アメリカを使います。

 

1965年は、ラオスの秘密戦争と呼ばれる戦闘が開始された年で、エア・アメリカは追撃された米軍パイロットの捜索救助活動に実施するようになります。



CNNとGNVの記事を要約します。

 



ラオスは、1953年に独立を果たした。しかしラオス国内で独立後の政治主導権をめぐってラオス王国政府と共産主義勢力であるラオス愛国戦線(パテト・ラオ)が対立し、紛争が勃発した。

 

米中央情報局(CIA)は、秘密裏に次の目的で空爆を実施しました。

 

第1は、共産主義勢力であるパテト・ラオへの攻撃でした。

第2は、北ベトナムから南ベトナム解放民族戦線への兵力・戦争物資の供給路線である「ホーチミンルート」を打ち切ることでした。

 

更に、タイでの米軍基地からベトナムに向かったアメリカの空爆機がベトナムでの本来のターゲットを爆撃できなかった際、爆弾を積んだまま着陸することができないので帰路にあったラオスは爆弾の投棄地としても利用されました。

 

このラオスの「秘密の戦争」は、1971年の米議会公聴会で明るみに出てマスコミにも報じらました。

 

「秘密の戦争」を含む1964年から1973年の間の空爆の回数は約58万回で、時間に換算すると9年間、8分に1回の空爆が行われたことになります。爆弾の量は200万トンを越える。当時のラオスの人口で計算すると、1人当たり 1トンの爆弾になる。ラオスは「一人当たりの空爆の数が世界で最も多い国」です。

 

 

不発弾の中では、クラスター弾が問題で、2023年までに除去された比率は1%と推定されています。

 

ロシアが強固な塹壕を構築している場合、戦況を帰ることは困難です。

 

ウクライナに投入された武器の利用効率は、極端に低下しているように見えます。

 

ベトナムだけでなく、アフガンで、米軍は勝利できませんでした。

 

状況はベトナム戦争に似ています。アメリカを代表とするNATOは、供給する武器の利用効率の悪さにうんざりしています。

 

バイデン大統領は、ウクライナとロシアだけが戦争して、勝敗が付くという都合のよいシナリオを描きました。しかし、経済封鎖は、2国間には止まりません。局所戦は、アフガニスタンベトナムの場合のように、長期戦になります。ベトナムでは、ホーチミンルートを分断するために、ラオス空爆を行いましたが、効果は限定的でした。

 

アメリカは経済封鎖を先導していますが、得られるものより、失われるものの方が大きい可能性があります。



ウォレス国防相が言ったように、ウクライナは、「何でも手に入るわけではなく」なっています。

 

しかし、また、アメリカも、「何でも手に入るわけではなく」なっていると思います。






引用文献

 

【解説】 NATOウクライナに示した現実 「何でも手に入るわけではない」  2023/07/13 BBC ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-66184847



英国防相ウクライナに不満 「アマゾンではない」2023/07/13 CNN

https://www.cnn.co.jp/world/35206521.html

 

<双方向マップ>ウクライナ軍の反転攻勢1カ月、支配地域を広げたのはロシア軍 2023/07/11 Newsweek ニック・モルドワネック

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/07/post-102167.php



米国の「秘密の戦争」暴く図書館新設、史上最悪のラオス爆撃に脚光 2022/06/16 CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35189001.html



ラオス:世界で最も空爆された国 2018/02/05 GNV アサノエイコ

https://globalnewsview.org/archives/6334