1)売れない分野
アドビは売れない(売れにくい)写真の代表として、「花、ペット、夕焼け、観光名所」をあげています。
一方、カメラメーカーが、カメラを売る場合には、視点は全く異なります。
フジフィルムは、「あなたが主役の写真展」を募集しましたが、その募集分野は以下です。太字がアドビの売れない写真の分野です。
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カテゴリハッシュタグ(以下のいずれか1つ)
#猫の写真、#犬の写真、#家族の写真、#風景の写真、#旅の写真、#仲良しの写真、#推しの写真、#日常の写真、#フォトインフォト、#その他
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「家族の写真」と「仲良しの写真」は、通常は販売対象にはならないです。
ストリートフォトのような「日常の写真」は、重要な被写体ですが、売りにくいです。
これから、カメラの販売は、売れない写真を大量に生産してもらうことで成立していることがわかります。
2)推しの写真
売れない写真の典型は、「推しの写真」です。
フジフィルムは、「推しの写真」と言っていますが、「推しの写真」という日本語があるかは不明です。
問題は、「推し」と「推し活」の違いです。
「推し活」という言葉は、2021年の流行語大賞にノミネートされ、広く認知されています。
自分のイチオシを決めて、応援する活動を「推し活」といいます。熱狂的なアイドルファンが自分の好きなアイドルを「推し」と呼んだことが、起源です。
それまで「オタ活」(オタク活動の略)と呼ばれていました。
「推し」の対象は、俳優・声優・アニメキャラクターなどから、アクスタ(アクリルスタンド)やぬい(ぬいぐるみ)などの「推しのグッズ」に拡大しました。
その結果、ぬい撮り・アクスタ撮影なども、「推し活写真」と呼ばれています。
サンリオは「推し」として、キャラクターグッズを販売しています。
フジフィルムの「推しの写真」とは、キャラクターグッズをつかった「推し活写真」を指すようです。
検索する限り、「推し活写真」に比べて、「推しの写真」の利用頻度はとても少ないので、「推しの写真」という日本語は、定着していません。
ただし、「推し活写真」には、俳優・声優・アニメキャラクターなどが入りますので、キャラクターグッズをつかった「推し活写真」を「推しの写真」と区別して呼ぶことは便利なので、以下では、「推しの写真」を使います。
フジフィルムの主力商品は、「チェキ」ですが、チェキの写真は、99%は販売写真にはなりません。
つまり、カメラ教室にかよえばプロのカメラマンのような写真がとれて、上手くいけば、写真が売れるかもしれないというビジネスモデルとは、全く、逆のコンセプトの商品です。
これから考えるとSNSでフォローワーが多数つく「推しの写真」は、アドビの売れる写真とは、異質なことがわかります。
Z世代の若者は「推し活」が好きで、グラスに推しの名前のシールを貼る「推しグラス」や推しの誕生日を勝手に祝う「本人不在の誕生日会」など様々な推し活を誕生させています。
今Z世代の間では、「アンパンマンこどもミュージアム」が人気推し活スポットになっているようです。
Z世代は、アドビストックから写真を購入することはないと思われます。
その意味では、「推しの写真」は売れない写真の代表になります。
一方、SNSを通じた社会的な影響を考えると、「売れない」と切り捨てる訳にはいきません。
フジフィルムは、チェキで、Z世代のマーケットをもっていますので、デジタルカメラが売れなくとも、ビジネスが継続できます。
「推しの写真」のインフルエンサーは、プロのカメラマンよりはるかにおおきな社会的な影響力を持っています。
風景写真のルーツは、ハドソンリバースクールの画家にあります。ハドソンリバースクールの画家は、自然風景の観光というマーケットを生み出しました。
「アンパンマンこどもミュージアム」が、「推しの写真」で潤えば、「推しの写真」はあたらしいマーケットを生み出したことになります。
売れない写真の定義を見直す必要があるのかも知れません。