パナソニックの新レンズLEICA DG VARIO-ELMARIT 12-35mm F2.8 のブランド戦略

パナソニックが、12月15日に、「LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-35mm F2.8 ASPH. POWER O.I.S. 」を、2023年2月16日、希望小売価格は11万5500円(税込)で発売するとアナウンスしました。

 

このレンズは、2017年発馬のLUMIX G X VARIO 12-35mm / F2.8 II ASPH. / POWER O.I.Sのバージョンアップです。

 

1)Xブランド戦略の失敗

 

パナソニックのMFTのレンズのブランドは、ライカ、GX、Gの3種類です。

パナソニックは、Xレンズは、GとGXの中では、最上級のレンズといっていますが、現時点では、Xレンズは次の4本だけです。

 

(1)LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm/F4.0-5.6 ASPH./ POWER O.I.S. H-PS45175-K (3.3万円)

(2)LUMIX G X VARIO PZ 14-42mm/F3.5-5.6 ASPH./ POWER O.I.S. H-PS14042-S(2.9万円)

(3)LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8 II/POWER O.I.S. H-HSA35100(9.4万円)2017年 3月10日 発売

(4)LUMIX G X VARIO 12-35mm / F2.8 II ASPH. / POWER O.I.S(7.5万円)

 

(1)(2)の共通点は、電動ズームであることです。

 

(3)(4)の共通点は、F2.8通しのズームです。

 

(1)(2)と(3)(4)では、価格に大きな差があります。

 

(3)(4)はともかく、(1)(2)を、最上級と言われても、俄かには信じられません。XのついていないGレンズの単焦点レンズには、良い製品が多くありますので、それと比較して、(1)(2)は勝っているとは言えません。

 

一方では、ライカブランドのレンズのブランドイメージは、確立しています。

LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-35mm F2.8 ASPH. POWER O.I.S. 」が、ライカブランドの25本目のレンズになるようです。

 

Xからライカブランドのリブランドには、ライカの了承が必要であったと思われますが、今回は、それをクリアしたことになります。

 

F2.8通しの標準ズームは、レンズ交換式カメラの必須のアイテムです。

プロのカメラマンは、最初にF2.8通しの標準ズームを購入し、次は、F2.8通しの望遠ズームを購入します。この2本のレンズだけで、ビジネスをしているカメラマンが多いと思われます。

 

MFTのF2.8通しのズームは、オリンパスには、広角、標準、望遠のラインアップがあります。

 

パナソニックは、Xレンズで、標準ズームと望遠ズームを揃えています。それが、(3)と(4)です。

 

イカブランドのレンズには、F1.7通しのズーム、F2.8-4.0 のズームがあり、売れ筋は、F2.8-4.0 のズームになっています。

 

F1.7通しのズームの性能は良さそうですが、価格がとても高いので、使っている人は少ないと思われます。

 

ブランド戦略としては、Xレンズを続けるメリットはないので、(3)も、バージョンアップして、ライカブランドに、リブランドされていくと思われます。

 

なお、パナソニックは、「LUMIX G X LENS」について、次のように書いています。

「X レンズ、それは、パナソニックの光学技術を結集した、ルキックス最高峰のレンズです。画面周辺まで優れたコントラスト性能とパナソニック独自のナノサーフェスコーティングにより、ゴーストとフレアを極限まで抑制。クリアで透明感のある質感描写を実現しています」

 

7万円以上する(3)(4)なら、この宣伝文句ももっともらしく聞こえますが、実売価格3万円前後のズームレンズでは、俄か信じがたい宣伝文句です。

 

今では、殆ど製造されなくなったコンデジの宣伝文句に似ています。

 

しかし、この宣伝文句があながち嘘ではないのがMFTの恐ろしい点です。

 

写真1は、「LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm/F2.8-4.0 ASPH./POWER O.I.S. H-ES12060」で撮影しています。

 

パナソニックのライカブランドレンズでは、一番売れているレンズで、kakaku.comの評価は、5点満点の4.88点です。数字だけ見れば、これより評価の高いレンズもありますが、この4.88は、評価者66人の平均です。評価者が50人以上で、このスコアを出しているレンズは思いつきませんので、いわゆる「神レンズ」になります。

 

ボケは大変綺麗です。しかし、紅葉の切れは今一つです。

 

写真2は、(1)の「LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm /F4.0-5.6 ASPH. / POWER O.I.S.」です。

 

このレンズは、過剰在庫のため、パナソニックの入門用カメラをかったときに、ただでおまけにつけたもらいました。おまけだったので、今まで、よく調べずに、実売1万円くらいのキットレンズとおなじレベルだと思っていました。

 

写真2の方が、写真1より、紅葉の葉の切れがよいです。

 

背景にボケを入れた紅葉の写真では、紅葉が背景から浮き上がって見えることを期待しています。その点では、(2)の方が、(1)より、よいです。

 

12-60mm/F2.8-4.0は、万能レンズですが、線の切れ(解像度)はあまり高くありません。

 

MFT以外ですと、価格が3万円前後のレンズは、単焦点レンズしかありません。サイドパーティは、この価格帯でもズームレンズをうっていますが、画質を問題にするのであれば、6万円位からになります。

今週のkakaku.comでは、売れ筋No,1はシグマ「18-50mm F2.8 DC DN [フジフイルム用]」(5.9万円)ですから、このランクからになります。純正のフジノンレンズ「XF16-55mm F2.8 R LM WR」(14.8万円)は、2倍以上するので、サイドパーティが参入する余地があります。

 

これに対して、旧型の(4)「LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 II」(7.5万円)は、5.9万円と差が少ないです。

 

そのためサイドパーティのレンズは、中国製を除けば少ないです。

 

 

 

写真1








 

写真2

2)レンズビジネス

 

kakaku.comのレンズの売り上げランクをみると、フルサイズは、純正の標準ズームと望遠ズーム、あるいは、サイドパーティのズームが主体です。ASP-Cでは、富士フィルムの独壇場になっています。

 

kakaku.comのランキングは、カメラ店が中心で、家電量販店とはかなりちがう傾向があります。もっとも、家電量販店では、カメラ売り場は縮小しています。

 

また、ギネスブックに載った、過去の最大生産数のレンズは、フジフィルムのレンズつきフィルム(写るんです)のレンズです。このような大量生産レンズは、現在は、監視カメラに多用されていますが、シェアは中国メーカーが占めています。

 

数字には出にくいですが、最近20年の間に、レンズの性能は、劇的にあがって、価格もさがってきています。

 

純正のフジノンレンズ「XF16-55mm F2.8 R LM WR」(14.8万円)と代替品のシグマ「18-50mm F2.8 DC DN [フジフイルム用]」(5.9万円)は2つとも、kakaku.comにランクインしています。

 

さすがに、価格差が2.5倍ありますので、シグマのレンズが、フジノンレンズと同等とはいかないと思いますが、フジノンレンズ XF16-55mmF2.8 R LM WRは、 2015年 2月26日発売なので、7年の時間差があります。その時間を考えると性能は70%は越えていると思います。

 

フィルム時代であれば、カメラは、単焦点レンズを使っていました。

 

それは、ズームレンズの画質が悪かったからです。

 

単焦点レンズは、小さくて軽いので、交換レンズがうれました。

 

最近のカメラメーカーは、フルサイズセンサーのカメラを売りたがっています。

 

カメラの価格は、10から60万円くらいです。10万円のカメラは、フルサイズセンサーの価格が安くなって実現しています。

 

ところが、デジタルになってフルサイズのセンサーのカメラの場合、ズームレンズの性能があがって単焦点レンズを必要とする機会が減っています。センサーのISO感度もあがっています。

 

そうなると、フルサイズセンサーのカメラでは、レンズの買い替え、買い増しがおこりにくいと思われます。

 

現在は、ミラーレスへの世代交代が進んでいますので、カメラ本体は、それなりにうれています。しかし、フルサイズのレンズは、高いし、重いしあまり売れないと思われます。

 

パナソニックは、新型のカメラは改良タイプしかだしていませんが、レンズにテコ入れしてますので、それなりに、レンズは売れていると思いますが、価格が安いので、利益は大きくないと思われます。

 

この先を考えると、入門ミラーレスの市場はなくなりつつあります。

 

それに、替わっているのが、入門フルサイズです。

 

APS-Cの時代であれば、入門カメラは、レンズ2本付で、5から7万円でした。現在は、フルサイズマウントのカメラであれば、センサーがAPS-Cでも、レンズキットで、15万円以上します。

 

つまり、安い機種が儲からないので、作るのをやめています。

 

ICが不足して、カメラが製造できなくなったので、最近の実需用は不明です。

しかし、15万円のカメラも、新機種がでれば、旧機種は、半額になります。

 

円安になったので、15万円のカメラの中身は、7万円のカメラと同じかもしれません。

 

カメラメーカーが、カメラ内現像のJpegにこだわっている理由も理解できません。

 

うまく表現できませんが、レンズの市場を中心に、カメラの市場が変質しているように見えます。