ドキュメンタリズムの闇

1)銀行の送金

 

10万円以上の現金を他行に送金してきました。

 

先月に続いて2回目です。

 

先月に言った時には、通帳をもっていかなかったので、免許証で、身分確認をしました。

 

その時の説明では、預金通帳があれば、免許証は不必要という説明でした。

 

2回目には、預金通帳を持って行ったのですが、やはり、免許証の提示を求められました。

 

今回は、免許証のデータを行員さんがタブレットで入力して、最後に、タブレットにサインを求められました。

 

タブレットには、チェック項目がありましたが、行員さんが、すべてチェックしてくれました。

 

預金通帳を持っていっているので、預金通帳に、2次元バーコードがついれば、通帳をかざすだけで、行員さんがデータを入力せずに、済むはずです。

 

先月持参した免許証のデータが登録されていれば、今回は、免許証のデータをチェックするだけで、免許証のデータの再入力は不要なはずです。

 

ATMをつかう時にも、毎回詐欺に注意のメッセージがでます。

 

しかし、このメッセージの効果は検証されていないと思われます。

 

リスクマネジメントの観点からすれば、エラーはかならず起こります。

 

ノーエラーはあり得ません。対策は、起こりやすいエラーを回避することです。

 

タブレットには、チェック項目があっても、だれも、それを真面目によみません。

 

項目が増えれば増えるほど、チェックの効果はなくなります。

 

こうした場合には、状況に応じて、3つ程度に絞った最重要項目のリストをAIなどで、選択して、少数のチェックを確実に行う方が効果があるはずです。

 

ATMの注意のメッセージも、毎回同じものが出てくれば、3回目以降は、頭に入らなくなります。

 

何を言いたいかというと、送金のチェックリストの目的は、詐欺を防ぐことではなく、担当者の責任逃れのためにつくられているのです。

 

こうしたチェックリストが煩雑になれば、注意はそちらに注がれ、詐欺の回避にはまわらなくなります。

 

科学的には、全く効果の検証されていない方法です。

 

詐欺にかかる場合には、特定の心理状態になります。これから、詐欺を防止するためには、心理状態を計測して、1次絞り込みをまずすべきことがわかります。

 

煩雑なチェックリストを作って、問題を転嫁する方法はドキュメンタリズムです。

 

マイナンバーカードと同じレベルの間違いは、広く分布しています。

 

2)霞が関答弁の闇

 

沖縄で、コロナウイルスの患者が増えました。医師会は、第9波であるといっています。

 

政府は、第9波ではないといいます。これは、ドキュメンタリズムです。

 

第9波であるかないかという名称は、リアルワールドとは関係がありません。

 

判断すべきは、沖縄県のコロナ対策を見直すか否かです。

 

現在見直さないのであれば、どの条件で見直すかを事前に決めておく必要があります。

 

最近の政府の答弁には、「○○とは判断しない」といった意見だけを述べる答弁が多発しています。これは、典型的なドキュメンタリズムです。

 

この答弁は、リアルワールドとは関係しません。

 

発言している人は、無謬主義を守ったと思っているのかもしれませんが、これは問題解決からの逃避に他なりません。

 

河東哲夫氏は、ASEAN諸国は、「落ち目の日本よりも中国」を選んでいるといいますが、日本には、ドキュメンタリズムが蔓延していますので、ASEAN諸国は、学ぶべきものはないと考えています。

 

ASEAN諸国のエンジニアは、母国語の技術文献はありませんので、英語の文献を読んでいます。そうすると日本の科学技術の進歩は、30年前から進歩していないことを知っています。デジタル技術については、日本は、全く、競争力のないことを知っています。実際に、最近では、ASEANにも、デジタルベンチャー企業が出現しています。日本の企業には、こうした企業のモデルになるような企業はありません。

 

年功型雇用は、ドキュメンタリズムに結びついています。

 

IT人材について、給与を増額する企業が出てきています。しかし、それは、ジョブ型雇用ではありません。年功型雇用の中にIT特別枠を設定するような方法です。

 

どうして、こうなるかといえば、年功型雇用の企業は、ドキュメンタリズムに洗脳されて、ジョブの評価ができないからです。ジョブ型雇用では、年俸は、応募者がある前に、事前に決めるものではありません。年俸は、応募者の能力に応じて設定する必要があります。ところが、応募者の能力評価ができる人材がない企業が多数あります。

 

マイナンバーカードのようなシステムを設計するために必要な人材は、数人です。大勢はいりませんが、問題解決が出来ない人は居ても戦力になりません。

 

日本企業が、欧米の企業並みに労働生産性をあげて競争するためには、ジョブ型雇用が必須です。

 

しかし、ジョブ型雇用を導入した企業は殆どが失敗すると思います。それは、ドキュメンタリズムに洗脳されているため、ジョブのイメージが作れないことに原因があります。

 

だからといって、年功型雇用に戻ることはできません。

 

不祥事があって、会社の幹部がマスコミに出てきて頭を下げる企業は、年功型雇用のドキュメンタリズムです。

 

サッカーや、野球のチームで成績は悪ければ、監督や選手は首になって入れ替ります。連戦連敗で、監督がマスコミに出てきて頭を下げることはありません。その時間があれば、人材の入れ替えを優先します。これが、ジョブ型雇用の世界です。

 

次期監督は、チームの作り方を説明する必要があります。






引用文献

 

日本とASEANの複雑な50年 2023/07/01 Newsweek 河東哲夫

https://www.newsweekjapan.jp/kawato/2023/07/asean50.php