「ブリーフの固定化法」の何がスゴイか

(「ブリーフの固定化法」は未完成で、開かれています)

 

1)実験計画書の拡張

 

理論科学の仮説を検証するためには、実験を行います。

 

実験を効率的に行うために、実験計画書があります。

 

実験計画書は、科学ではなく、ノウハウ集のようなものですが、大変役に立ちます。

 

実験計画書を使わないで、実験をすることも出来ますが、その場合には、実験は、大変非効率になります。

 

定型の文章やソフトウェアを作成する場合には、テンプレートを使うと効率的に作業ができます。

 

生成AIで文章を作成すれば、より効率的に作業ができますので、生成AIは、進歩したテンプレートにもなっています。

 

そう考えると、生成AIが作成した文章が間違っているとクレームを付ける理由はありません。

 

テンプレートで、問題になっている点は、効率にすぎません。

 

さて、ここでは、実験室で実験ができる理論科学の実験計画書を第1の実験計画書と呼ぶことにします。

 

実験室で実験が出来ない場合の科学の研究方法はいい加減です。

 

読者は、権威ある大学の研究者は、まともな科学的研究をしていると思っているかもしれませんが、それは幻想です。

 

パースの「ブリーフの固定化法」は、実験室で実験が出来ない研究のために、第2の実験計画書をつくる方が良いだろうという提案です。

 

「ブリーフの固定化法」のは、4つの方法として、プリミティブな第2の実験計画書が示されています。

 

「ブリーフの固定化法」は、第1の実験計画書と同じようなノウハウ集です。評価基準は、実験をより効率的に行うことです。

 

つまり、実験をより効率的に行うことの出来るノウハウが見つかれば、「ブリーフの固定化法」は改訂されるべき性質の論文です。

 

2)第2の実験計画書

 

第2の実験計画書をつくるための重要なノウハウは、フィッシャーのランダム化試験(RCT)です。RCTは、実験室で実験が出来ない場合の研究を、実験室レベルで行う唯一の方法です。

 

従来採用されてきた経験的な方法では、正しい結論に達することができないことがわかっています。

 

つまり、過去の研究成果は、粗大ごみだらけであることが判明しています。

 

残念ながらRCTには、大きなコストと時間がかかりますので、適用可能範囲は、限定されています。

 

つまり、実験室で実験が出来ない場合には、科学的な方法によって真理に到達できないことがわかっています。

 

殆どの研究分野では、実験室で実験は出来ません。

 

つまり、殆どの研究分野では、科学的な方法によって真理に到達できません。

 

だからといって、解決すべき問題がそこにあれば、研究を放棄するわけにはいきません。

 

それでは、どのように研究すべきでしょうか。

 

現在、指示されている第2の実験計画書は、エビデンスベースのアプローチ(EBA)

です。

 

エビデンスベースのアプローチとは、RCTの条件を緩めた不完全RCTを使う方法です。

 

1993 年に初めて「エビデンスに基づいた医学(EBM)」という言葉が使われました。EBMは、1992年に、全ての RCT を最新の状態に保ち、人間の健康と健康政策に関する主要な研究を提供する「コクラン レビュー」がスタートしました。

 

根拠に基づく政策決定(EBP:Evidence Based Policy)は、英国のブレア政権によって一般化され、1999 年に発行された英国政府の白書 ( 「政府の近代化」 ) は、政府は「問題に実際に対処し、短期的な問題への対応ではなく、将来を見据え、証拠によって形作られた政策を策定しなければならない」と述べています。1999 年には、コクラン コラボレーションの姉妹組織であるキャンベル コラボレーションが設立されています。

 

教育におけるEBPの例には、Michael KremerとRachel Glennersterによる、「最も効果的に生徒のテストの点数を上げる方法」の検証があります。彼らはケニアでランダム化比較試験を実施しました。新しい教科書やフリップ チャート(flip chart; 一枚ずつめくれるようになっている解説用の図表)を試し、少人数のクラスも試しました。しかし、就学率を上げた唯一の介入は、子供の腸内寄生虫の治療でした。

 

EBPは、最近日本でも研究はされていますが、政策決定の一選択肢としてしか認識されていません。「経験的な方法では、正しい政策ブリーフに達することができない」ことが理解されていません。

 

英国では、20年以上前から、EBPを採用しています。これは、EBPが、唯一の科学の方法であるためです。日本は、2023年時点で、まだ、EBPを検討中ですので、25年以上遅れています。

 

パースは、政策ブリーフの固定化法にも、科学の方法を使わなければ、効率が落ちると言いました。

 

Michael KremerとRachel Glennersterの研究は、例えば、少人数のクラスを止めて、少人数のクラスのための予算を給食費などの他の補助に転用する方が、教育効果が上がる可能性を示唆しています。EBPを使えば、効果の出ない政策の予算を削減することが可能になります。



日本経済が、停滞した原因は、科学の方法の無視にあります。




3)ブリーフとは何か

 

「ブリーフの固定化法」のブリーフは、従来の翻訳では、「信念」と訳されてきました。

 

プラトンは、知識とは、正当化された真なる信念(Justified True Belief)と考えました。

 

JTB定式の信念は、ある命題についての信念になります。

恐らく、パースのブリーフもある命題に関する信念と思われます。

 

そう考えると、ブリーフの固定化法の対象となるオブジェクトは、命題になります。

 

信念がオブジェクトではありません。

 

仮説検証で言えば、仮説が正しいという信念になります。

 

理論科学で考えれば、ブリーフを固定化することは、複数ある仮説から、信頼できる仮説を抽出する仮定になります。



これでは、仮説や命題が直接見えないため、非常に紛らわしくなるので、ブリーフを仮説または、命題であるとして扱ってもよいと考えます。

 

上記では、ブリーフを命題として扱っています。

 

この扱いの場合には、固定化法の中に、「信頼できる」というニュアンスを含めることになります。

 

そうすると複数ある命題から、もっとも確かな命題を抽出する方法を取り扱っていることになります。