ハドソン・リバー・スクールの研究(12)

13)ビアスタットの技法



今回は、ビアスタットの技法を写真に応用してみます。

 

アダムスのゾーンシステムは、部分的に露光をアップまたはダウンさせる手法です。

 

この技法は、darktableであれば、露光モジュールのインスタンスを増やして、各インスタンスにマスクを併用することで、再現できます。

 

大まかに行うのであれば、トーンイコライザーをつかうことも可能です。

 

今回は、露光モジュールのインスタンスを6つ使ってみました。

 

素材は、燧ヶ池(ひうちがいけ)です。

 

この池の脇には巨木があり、秋には、彼岸花が咲きます。

 

また、筑波山もみえます。

 

つまり、素材は、巨木、池、筑波山彼岸花の4つです。

 

しかし、この4つが同じフレームに収まるアングルは存在しません。

 

まず、近景、中景、遠景がある写真を探しました。

 

風景画では、ターナー印象派を除けば、この3つを書き込むことは、お約束です。

 

とはいっても、過去に撮影した写真で、この3つが入っているものは少なかったです。

 

写真1の左が、選んだ写真です。

 

近景が、彼岸花、中景が、巨木、遠景が、山になります。

 

彼岸花は、近景から、中景まで、連続しています。

 

これでは、焦点がボケてしまいますので、ビアスタットであれば、中景付近には、彼岸花は入れなかったと思われます。

 

写真1の右は、近景の彼岸花、中景の巨木、遠景の山の部分の露光をあげて、視線が、近景から遠景に誘導されるようにしています。

 

写真1の左と右とを比べると、露光を部分的に変更することで、写真にメリハリがでていますが、若干不自然です。

 

写真2は、写真1の右の部分です。

 

写真3は、筑波山と池の写真です。類似のアングルで、手前に彼岸花をいれることは可能です。ここでは、この写真から筑波山を切り取り、写真2に貼ります。

この作業は、darktableでは出来ないので、kritaを使っています。

 

写真4は、筑波山を張り込んだ画像です。

 

これで、巨木、彼岸花筑波山が、同じ画面に配置されています。

 

ビアスタットの風景画では、画面に水面を入れます。

 

写真4に、写真3の池を貼り込むことも考えましたが、難易度が高そうなので、スキップしました。代わりに、写真3の道路の部分を小川らしく見せるように、カラールックアップテーブルを使って、色を替えてみました。

 

写真5が、その画像で、左上の空の部分の露光も調整しています。

 

写真6では、写真1の左と写真5を比べています。どちらが、ビアスタットの絵やアダムズの写真からうける印象に近いかと言えば、写真6の右(写真5)だと思います。

 

山については、筑波山では、低すぎて全く様になりません。

 

ビアスタットの技法では、素材の並べ替えをしますので、darktableでは対応できません。

 

アダムズの技法では、素材の並べ替えをしませんので、darktableでは対応できます。

 

ビアスタットの時代には、一般人が西部に旅行するのは容易ではありませんでした。

 

したがって、風景画と実際の風景に齟齬があっても問題はなかったと思われます。

 

アダムズの時代には、一般人も、西部旅行が可能になっていたので、素材の並べ替えをしなかったとも言えます。

 

例えば、写真5を観光パンフレットにいれれば、クレームがつくことは必須ですから、写真5の構図は使えません。

 

素材の並べ替えをしないと、近景、中景、遠景を揃えることは、容易でない場合も多いので、写真では、この条件は満たされないことも多いです。

 

主題が3つでなくてもよいとして、主題を2つ、1つと減らしていくと、どこまで。減らせるかという発想になり、ミニマリズムに繋がっていきます。

 

写真1

 

 

 

 

 

写真2

 

写真3

 

 

写真4

 

写真5

 

 

 

 

写真6