成長と分配の経済学(32)~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

モダンレジームへの切り替え問題

 

(本書がモダンレジームによる問題解決を提案できる確率は50%です)

 

1)アンシャンレジームの出典

 

フランスのアンシャンレジームは、1789年7から8月のフランス革命で打倒されますが、1815年のナポレオンの失脚によりアンシャン・レジームは復活します。復活したアンシャンレジームが最終的に崩壊するのは、1830年7月の7月革命を待たねばなりませんでした。

 

日本経済のアンシャンレジームは、高度経済成長と土地神話で形成されます。産業はモノづくりが主体で、良いものを安くという松下幸之助水道哲学にその典型をみることができます。

 

1990年代に入って、バブルが崩壊して土地神話は崩れます。

 

このころ安い人件費を元に、良いものを安くつくる方針は維持ができないだろうと思われました。

 

発展途上国の追い上げがあるので、時間の問題で、賃金は上げざるをえないだろう。賃金が上がるのであれば、高付加価値のモノでしか海外企業とは競争できないだろうと考えられました。

 

物まねではなく、独創的な製品を作るためには、教育を変える必要があるということで、ゆとり教育が提唱されました。それまでの知識優先で、記憶力中心の教育では、考える力が育たないと考えられたのです。

 

つまり、1990年代は、産業構造と教育において、フランス革命に匹敵するような変化をとげられなければ、日本経済は立ち行かなくなると考えられていました。

 

この予想は、今から振り返っても、大きく間違ってはいなかったと思います。

 

「良いものを安く」については、中国製品が伸びて日本製品は、競争力を失いました。家電製品はその典型です。中国や、タイなど海外に工場の移転が進みました。

 

2000年頃になって、産業構造と教育の転換が上手くいっていないことが明らかになります。

 

西暦2000年のアンシャンレジームはこの時を問題にしています。

 

ゆとり教育の失敗が明らかになりました。しかし、ゆとり教育に変わる人材育成の目標は出ませんでした。

 

1996年(平成8年)7月の中央教育審議会の答申以降の教科「情報」については、余りに混乱しているので、ここでは、詳しく述べません。しかし、「情報」は、教養ではありませんので、筆者はケースメソッドで、問題が解決できなければ役立たないと思います。問題の解決とは自立的に動くソフトウェアやハードウェアをつくることだと考えます。いずれにしても、現状では、人材育成の目標は、教養に近く明確ではありません。

 

産業構造の組み換えも明確な目標が出せませんでした。

 

2000年頃になって、産業構造と教育の転換が上手くいっていないことが明らかになった訳ですが、この時に、フランス革命に相当する目標を再構築するのではなく、王政復古と同じように、アンシャンレジームが息をふき返しています。

 

新卒採用の賃金の上昇はなくなり、賃金が抑制されます。非正規雇用や外国人研修生を使ってさらに安い賃金設定がなされます。円安が更に賃金を抑制します。つまり、高付加価値モデルは放棄され、「良いものを安く」が復活します。

 

西暦2000年のアンシャンレジームは、王政復古と余りかわりません。

 

賃金の抑制は将来の年金財源にツケを回します。

「良いものを安く」は時間稼ぎにすぎません。

 

大規模な製造業で、国際競争力のある分野は自動車だけです。

 

エンジンのある自動車は部品のすり合わせがあり、新興企業の参入は難しいと言われています。しかし、EVになれば、これは、電気製品です。自動運転機能を除けば、家電製品と変わりませんので、家電製品の二の舞になる可能性があります。自動運転機能については、テスラやアメリカのIT大手に勝てるか不明です。

 

2)アンシャンレジームの崩壊

 

アンシャンレジームは、7月革命と同じように、どこかで崩壊するでしょう。

 

しかし、7月革命と同じように、ただ待っていれば、実現するものではありません。

 

アンシャンレジームの解消には、日本型7月革命が必要です。

 

本書が、提示するのは、現在の立ち位置を確認する作業です。

 

アンシャンレジームが崩壊して、モダンレジームに移行することは、年功型雇用から、ジョブ型雇用への移行に他なりません。

 

しかし、ここには、大きな障害と混乱があります。

 

2-1)ジョブ型雇用の障害

 

ソ連が崩壊した後で、市場経済の移行には、大きな混乱が伴いました。

 

恐らく、ジョブ型雇用に伴う障害も似たようなものではないかと想像しています。

 

市場経済では商品に価格を付けますが、その時に、付いている価格と、商品の価値を比べて、割安か割高かを判断します。ソ連は、市場経済が不完全だったため、市場経済に移行したときに、この値踏みができる人が少なかったと思われます。

 

年功型雇用では、賃金は、年齢で決まりますので、適正な賃金の値踏みは、不要か、禁止されています。禁止されているというのは、本当に自分の適正な賃金が値踏みできれば、賃金交渉が始まるからです。若年労働者の場合には、明らかに、実績よりは安めに設定されています。アメリカにIT企業に転職する人が出てきている企業では、自分の価値の値踏みできる人も増えていると思われます。しかし、仕事は、ジョブで与えられないと、自分の労働生産性を評価できません。もちろん、ジョブ管理をしないと、企業の労働生産性はあがりませんが、欧米の企業と異なって、日本では、転職できる労働市場がないために、経営者は、賃金を上げないと、転職されて労働者がいなくなる心配をしないのです。

 

この話は他人事で、書いている訳ではありません。こうして文章を書いていると、他の人の記事と共通の内容、自分の記事にしか載っていない内容がわかってきます。他の人の記事に比べ、劣っている部分、すこし、上に来ている部分もわかってきます。上手くかけた日も、あまり上手くいかなかった日もわかってきます。頭の中にあるアイデアは、とりあえず文字にしないと消えてしまって、あとで、何を考えていたのかわらなくなりますので、まずは文字に起こします。でも、時間をみて、書き直すべきものが大半です。小説の場合には、基本的に場面展開なので、頭の中に描いた場面を思い出せるように、キーワードを並べておいて後でじっくり執筆することもできますが、論理的な展開の内容は厄介で、ある程度文章にしておかないと消えてしまいます。このように、自分の値踏みができるようになるには、時間がかかります。

 

2-2)ジョブ型もどき雇用

 

年功型企業でも、2013年頃から。ジョブ型雇用を始めたという企業がかなりあります。しかし、本当の意味で、ジョブ型雇用になっている企業は少ないと思います。日立のように全世界統一賃金体系に移行できていれば、完全にジョブ型雇用に移行できていますが、ジョブ型雇用とは言え、そこまでできている企業は少ないです。



3)アンシャンレジームの崩壊以降

 

日本型7月革命が起こって、アンシャンレジームが終わった場合を考えます。レジームシフトから、次の2つの場合が考えられます。

 

3-1)デジタル社会の先進国にレジームシフトした場合

 

日本は居住に適した国です。



3-2)デジタル社会の開発途上国にレジームシフトした場合

 

日本に住むべき理由はありません。

 

4)まとめ



ここでは、事前情報がありませんので、3-1)と3-2)になる確率は50%ずつと仮定します。

 

本書は50%の確率でしか、問題解決の方法を提示できていないことになります。