成長と分配の経済学(19)~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

変わらない日本をどう分析するか

 

(ここでは、変わらない日本を、データサイエンスや生態学の世界観で分析します)

 

この本は、変わらない日本の原因を考えるところからスタートとしています。

 

そして、ここで提示する仮説は、変わらない日本の原因は、意図的に作り出されたアンシャンレジームにあるというものです。

 

もちろん、変わらない日本の原因の検討は既に多数なされています。

 

新たに、考察をもう一つ加える価値はあるのでしょうか。

 

変わらない日本の原因の検討は、主に、人文・社会科学の方法論を用いて探求されています。

 

この本の特徴は、人文・社会科学の方法論、特にヒストリアンの方法論を使わない点にあります。

 

人文・社会科学の伝統的な手法は、データサイエンスの視点から、妥当性の見直しを行い、データサイエンスの手法として、再構築を試みます。

 

この本で使う手法は、データサイエンス、生態学認知科学GISなどで使われてる世界観に基づいて問題を見直すことです。認知科学に近い心理学の世界観が時に使われます。

 

しかし、人文・社会科学の方法論は基本的には使いません。

 

世界の目指す方法は、サイエンスによって大まかには決められていていると考えます。

 

サイエンスを活用するエコシステムとサイエンスを活用しないエコシステムがあれば、効率性の面から、前者が生きのこり、後者が淘汰されるだろうと考えます。生態学的世界観とも言えます。

 

多様性を許容するエコシステムと多様性を許容しないエコシステムがあれば、環境変化に対して脆弱な後者は、淘汰されるだろうと考えます。

 

この世界観でも、サイエンスを活用しないエコシステムや、多様性を許容しないエコシステムは、存在します。そのことは否定されません。しかし、時間が経過するに伴い、脆弱なエコシステムは淘汰されると考えます。

 

ここでは、これから10年くらいかけて、世界は、DXによって、デジタル社会の世界のレジームにシフトすると予測しています。

 

つまり、現在は、大きな環境変化の入り口に差しかかっていると考えます。

 

検討のスタートは、変わらない日本の原因から始まりましたが、外界に大きな環境変化があるときに、変わらないエコシステムは、絶滅してしまいますので、絶滅しないためには、何が問題かを考えることになります。

 

対象としているエコシステムは、日本社会で、絶滅とは、先進国から発展途上国への転落を意味します。100年程度の歴史を振り返れば、そのような例は、世界の国に多数みつけることができます。

 

とくに、デジタル社会へのレジーム・シフトに失敗すれば、発展途上国への転落は必須であると考えます。

 

なお、人文・社会科学の方法論を使わないことで、より正確なビジョンが描けるわけではありません。

 

ここでは、ヒストリアンの方法論には、有効性がないと考え、ビジョンを描くことに専念します。

 

そのメリットは、より多様なビジョンが描けることです。

 

なお、レジーム・シフトへの移行は、文字に書けば簡単ですが、非常に頭の痛い問題です。

 

デジタル社会へのレジーム・シフト後は、知識の有効期限は10年程度になります。

 

そうなると、功成り名を遂げてという世界観は全く通用しません。

 

人生は、10年毎に、やり直すような世界観が必要になります。

 

60歳で定年退職して、10年間70歳まで、再雇用もダメです。

 

実は、30年前の退職は、50歳過ぎでした。既に、10年近く引き延ばしています。

 

解決策は、ここには、提示しませんが、非常に重要な問題です。