AB命題とAXB命題~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(AXB命題を使えば、ヒストリアンのAB命題の欠点をカバーできます)

 

1)AXB命題

 

if A then B

 

if (A,X) then B

 

ここで、(A,X)は、(A and B)または、(A or B)です。当面、andで考えます。

 

より複雑なモデルはいくらでも考えられますが、データににノイズがのっていると、過学習になるので、簡単なモデルが使いやすくなります。

 

2番目のif thenをAXB命題と呼ぶことにします。

 

例をあげます。

 

ダイレクトメールを送る方法は、AB命題です。

 

A=ダイレクトメールを受け取る。

B=商品を購入する。

 

この場合には、AB命題が成立する可能性は低いです。

 

リスティング広告の場合には、AXB命題です。

 

X=類似のキーワードを検索した。

 

このAXB命題は、ヒストリーの再構築とも解釈できます。

 

AB命題を過去の事例の単純な引用、前例主義とすれば、AXB命題は、XによるBの発生確率が変わることを意味します。

 

むかしAを実施したら、成功してBになった。

 

これが、過去の成功体験です。このとき、Xを考えます。

 

X=デジタルシフトの有無とします。

X=0:デジタルシフト以前。

X=1:デジタルシフト以降。

 

こう考えれば、AXB命題では、Bが発生する確率はゼロになります。

 

2)ビジョンとAXB命題

 

単純データの機能では、AB命題しかうまれません。

 

科学の仮説のようなビジョンであれば、Xを考えることができます。

 

スマホは2000年代の中期に出てきて、成功したビジネスモデルです。

 

この場合には、Xが、4Gとクラウドの普及であって、それ以前に、スマホを発売しても売れません。逆に、多くのメーカーが、スマホを販売して普及した後で、市場に参入しても成功しません。2022年に、アップルは、スマホの前のヒット商品であったiPadの製造を終了しました。スマホの前の通信環境(X)であれば、iPadの方が、iPhoneより、商機があった訳です。

 

このように、現在は、技術(X)が急速に変化していますので、過去の事例を引用する前例主義では、完全に乗り遅れてしまいます。

 

3)年功型雇用の課題

年功型雇用は、建前上は、過去の経験がものをいうので、高齢者は高給であるべきという考えです。

 

これは、AB命題のロジックになっています。

 

しかし、今の時代、AB命題のロジックを持ち出されたら、企業はつぶれてしまいます。

 

AXB命題で経営しないと全く時代についていけません。

 

米国も、デジタルシフトが始まる前の1990年頃までは、経験がものをいいました。リー・アイアコッカ氏のような経営者が多くいました。

 

米国の現在の経営者は、ビジネススクールの卒業生で、数年の経験を積んだ人です。

経営者は若いですが、経営を成功させるポイントは、他の企業よりも先に、商機を生み出すパラメータ(X)を見つけて、ビジネスを組み立てられる人です。

 

デジタルシフトに伴って、パラメータ(X)には、デジタルシフトにかかわる科学技術が多く含まれますので、経験は豊富だが、科学技術に詳しくない経営者では、企業が立ち行かなくなります。経営者は、技術開発をするわけではありませんが、技術動向について、誰よりも、先を見る目が求められます。この先を見る目は、未来予測ではありませんので、よさそうなアイデアは、順番に試してみて、結果を見て、更に、先に進めるか、中断するかを判断します。

 

AXB命題は、科学理論では仮説になりますが、データサイエンスでは、モデルになります。

 

データサイエンスでは、より複雑なモデルを扱いますが、人間の頭では、追跡できませんので、取り敢えずAXB命題で考えることをお薦めします。これは完全には、程遠いですが、AB命題の間違いを回避できる効果があります。