(AXB命題を使えば、ヒストリアンのAB命題の欠点をカバーできます)
1)AXB命題
if A then B
if (A,X) then B
ここで、(A,X)は、(A and B)または、(A or B)です。当面、andで考えます。
より複雑なモデルはいくらでも考えられますが、データににノイズがのっていると、過学習になるので、簡単なモデルが使いやすくなります。
2番目のif thenをAXB命題と呼ぶことにします。
例をあげます。
ダイレクトメールを送る方法は、AB命題です。
A=ダイレクトメールを受け取る。
B=商品を購入する。
この場合には、AB命題が成立する可能性は低いです。
リスティング広告の場合には、AXB命題です。
X=類似のキーワードを検索した。
このAXB命題は、ヒストリーの再構築とも解釈できます。
AB命題を過去の事例の単純な引用、前例主義とすれば、AXB命題は、XによるBの発生確率が変わることを意味します。
むかしAを実施したら、成功してBになった。
これが、過去の成功体験です。このとき、Xを考えます。
X=デジタルシフトの有無とします。
X=0:デジタルシフト以前。
X=1:デジタルシフト以降。
こう考えれば、AXB命題では、Bが発生する確率はゼロになります。
2)ビジョンとAXB命題
単純データの機能では、AB命題しかうまれません。
科学の仮説のようなビジョンであれば、Xを考えることができます。
スマホは2000年代の中期に出てきて、成功したビジネスモデルです。
この場合には、Xが、4Gとクラウドの普及であって、それ以前に、スマホを発売しても売れません。逆に、多くのメーカーが、スマホを販売して普及した後で、市場に参入しても成功しません。2022年に、アップルは、スマホの前のヒット商品であったiPadの製造を終了しました。スマホの前の通信環境(X)であれば、iPadの方が、iPhoneより、商機があった訳です。
このように、現在は、技術(X)が急速に変化していますので、過去の事例を引用する前例主義では、完全に乗り遅れてしまいます。
3)年功型雇用の課題
年功型雇用は、建前上は、過去の経験がものをいうので、高齢者は高給であるべきという考えです。
これは、AB命題のロジックになっています。
しかし、今の時代、AB命題のロジックを持ち出されたら、企業はつぶれてしまいます。
AXB命題で経営しないと全く時代についていけません。
米国も、デジタルシフトが始まる前の1990年頃までは、経験がものをいいました。リー・アイアコッカ氏のような経営者が多くいました。
米国の現在の経営者は、ビジネススクールの卒業生で、数年の経験を積んだ人です。
経営者は若いですが、経営を成功させるポイントは、他の企業よりも先に、商機を生み出すパラメータ(X)を見つけて、ビジネスを組み立てられる人です。
デジタルシフトに伴って、パラメータ(X)には、デジタルシフトにかかわる科学技術が多く含まれますので、経験は豊富だが、科学技術に詳しくない経営者では、企業が立ち行かなくなります。経営者は、技術開発をするわけではありませんが、技術動向について、誰よりも、先を見る目が求められます。この先を見る目は、未来予測ではありませんので、よさそうなアイデアは、順番に試してみて、結果を見て、更に、先に進めるか、中断するかを判断します。
AXB命題は、科学理論では仮説になりますが、データサイエンスでは、モデルになります。
データサイエンスでは、より複雑なモデルを扱いますが、人間の頭では、追跡できませんので、取り敢えずAXB命題で考えることをお薦めします。これは完全には、程遠いですが、AB命題の間違いを回避できる効果があります。