ネイティブ・ジャパニーズのエコシステム~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(エコシステムのフレームワークを考えると、問題点と対策は大きく変化します)

 

前節で、1770年頃、北米大陸では、ネイティブ・アメリカンのエコシステム(NAエコシステム)とヨーロッパ移民のエコシステム(EPエコシステム)ができ、2つのエコシステムの間で争いが起こったと説明しました。

 

このとき、EPエコシステムでは、飢餓が発生し、ネイティブ・アメリカンの一員になったヨーロッパ移民がいたことが知られています。つまり、2つのエコシステムの間の労働者の移動がありました。とはいえ、その数は少なく、大勢に影響を与えるものではありませんでした。

 

労働者の移動に着目すれば、日本の社会は、ネイティブ・ジャパニーズのエコシステムを形成しています。2000年の歴史を振り返れば、日本の社会では韓国と中国からの移民を受け入れて同化してきています。一方では、アイヌの人の同化は、大きな問題を抱えていました。

 

とはいえ、現在、世界中で起こっている労働者の移動のスケールからみれば、現在の日本は、ネイティブ・ジャパニーズのエコシステム(NJエコシステム)を形成しています。

 

国際展開をしている資本主義諸国の大企業では、労働者は国際移動をしています。特に、高度人材と呼ばれる労働者は、世界中を移動しながら、条件のよいポストを探しています。

高度人材から見れば、グローバル・ビジネス・エコシステム(GBエコシステム)が形成されています。

 

この状況は、1770年頃の北米大陸ににています。

 

1770年は、次のような状態でした。

 

社会エコシステム <=>   技術エコシステム

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NAエコシステム <=> 狩猟エコシステム

EPエコシステム <=> 農業エコシステム

 

2020年は、次のような状態です。(注1)

 

社会エコシステム <=>   技術エコシステム

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NJエコシステム <=> プレ・デジタル・シフト・エコシステム

GBエコシステム <=> ポスト・デジタル・シフト・エコシステム



現在起こっていることは、西部劇のような世界です。NJエコシステムは、GBエコシステムと競合して、連戦連敗で、売り上げのシェアを落としています。これが、日本経済だけが30年停滞している理由です。

 

ITの技術レベルから言えば、ネイティブ・ジャパニーズの酋長のような経営者や政治家が、もっと、ライフルや馬を投入する算段を相談しています。

 

ITの技術レベルが高い政治家、例えばウクライナのミハイル・フェドロフ副首相兼デジタル担当大臣(入閣時28歳)、台湾のデジタル担当オードリー・タン(入閣時35歳)氏が、大きな成果をあげていることが知られています。

 

彼らは、GBエコシステム、かつ、ポスト・デジタル・シフト・エコシステムの住民です。

 

2022/11/01の東洋経済に、ロバート・フェルドマン氏と加藤 晃氏は、オードリー・タン氏が成功した原因は、2014年に、国民党内閣のデジタル大臣の蔡玉玲氏が、タン氏を「逆メンター」に指名したことにあるとしています。

 

しかし、この議論は、エコシステムの違いを無視しています。エコシステムの違いが、大きく作用している場合には、個別の違いを調べて、対策を講じるアプローチは無効になります。

 

筆者は、フレームワークの議論から問題を整理しないと、解決策に到達しないと考えます。

エコシステムは、大きなフレームワークの一つです。

 

また、タン氏の話には、続きがあります。コロナウイルス対策で、タン氏が活躍したときは、「逆メンター」ではありません。

 

フェドロフ氏は、「逆メンター」の経験はなく、最初から副首相兼デジタル担当大臣です。

 

コロナウイルス対策や、ウクライナ侵攻対策では、対応のスピードが重要なので、「逆メンター」では、間に合いません。ウクライナ侵攻対策で、日本の某大臣のように、今後委員会にはかって、鋭意対策を検討していたら、ウクライナは、今頃は無くなっていたかもしれません。「委員会にはかって、鋭意対策を検討」すれば、対策は、後手後手になります。日本は侵攻されていませんが、対応のスピードがとても遅いので、解決すべき問題が先送りにされています。「委員会にはかって、鋭意対策を検討」すれば、解決策が求まるというのは、ヒストリアンの偏見です。正しい解決方法は、試してみないと誰にもわかりません。大切なことは、委員会を開くことではなく、GBエコシステムの大臣が責任を持ってビジョンを基に政策を実行して、エビデンスを計測して、問題があれば、対策を修正していくことです。

 

北海道や周辺国への軍事侵攻を前提とした、安全保障を考えるべきであると主張する人もいますが、現在の意思決定のスピードは、それ以前のレベルと思われます。




話を戻します。ネイティブ・ジャパニーズの経営者や政治家が、企業や学校にパソコンをもっと入れるべきであると主張しているのを聞くと、技術エコシステムが違う世界の住民には、問題点の理解はできないと感じます。

 

ネイティブ・アメリカン・エコシステムを作り替えることが出来なかったように、ネイティブ・ジャパニーズ・エコシステムを作りかえることは不可能だと思います。失われた30年の歴史の重みを考えるべきです。

 

大切なことは、2つのエコシステムの間の労働者の移動をどのようにして、スムーズに実現するかということではないでしょうか。



注1:

このモデル区分がどこまで正しいかは不明です。

大切なことは、このエコシステム・モデルを前提とするか、しないかで、ビジョンが大きく異なるということです。

モデル区分の正しさは、実装後、エビデンスによって、チェックするしか方法はありません。

 

引用文献

 

日本に「オードリー・タン」が誕生しない納得の訳 2022/11/01 東洋経済 ロバート・フェルドマン 加藤 晃

https://toyokeizai.net/articles/-/464958