MTF特性図とレンズの性能(3)

カメラとレンズの組合せ

今回は、MTFから、次の組合せの比較問題が考えます。

(1)フルサイズセンサーの高いカメラ+とても安価な単焦点レンズ

(2)APSーCセンサーの安いカメラ+少し安価な単焦点レンズ

前回は、焦点距離50㎜前後で、価格の異なるレンズのMTFを比較しましした。

今回は、換算50㎜で価格の異なるレンズの比較です。

1本は、前回と同じ、フルサイズ用の50mmのレンズです。

もう1本は、APS-C用の32mm(換算50mm)のレンズです。

例によって、MTF曲線を比較すればよいのですが、ASP-Cでは、フルサイズの中央部分をトリミングして利用することになります。

レンズは周辺になるとMTFが悪くなります。そのまま比較するとアンフェアです。

そこで、50mmのレンズをマウントアダプターで、APS-Cにつけた状態を想定して、50mmのMTFは、32mmの部分だけを使って比較することにします。

CANONは、次のように、MTF特性図の見方を説明しています。


MTF特性図上の10本/mmのカーブが1に近いほどコントラスト特性がよく、ヌケの良いレンズとなり、30本/mmのカーブが1に近いほど高解像力を備えたシャープなレンズとなります。シャープで抜けのよい高性能レンズであるためには、両者でバランスが取れていることが大切ですが、一般的に10本/mmのMTF特性が0.8以上あれば優秀なレンズ、0.6以上あれば満足できる画質が得られると言われています。


コントラスト特性を表す「10本/mmのMTF特性が0.8以上あれば優秀なレンズ、0.6以上あれば満足できる画質」で、高解像力を示す30本/mmのカーブも1に近い方がよいそうです。

写真1に2本のレンズのMTF曲線を並べています。

写真2に2本のレンズのMTF曲線を重ねています。

50mmのレンズは、17㎜を超えると、10本/mmのMTF特性が、0.6を切って、あまり満足できない画質になっています。

32mmのレンズは、16㎜でも、10本/mmのMTF特性が0.7以上あります。

0から5mmの範囲で、10本/mmのMTF特性をみます。

50mmのレンズは、約0.9ですが、32mmのレンズは、約0.95で、差があります。

0から5mmの範囲で、30本/mmのMTF特性をみます。

50mmのレンズは、約0.65ですが、32mmのレンズは、約0.85で、差があります。

つまり、レンズの差は歴然としています。

ボケの量は、広角側より望遠側が大きくなるので、50mmの方が有利ですが、F値が、F1.4とF1.8で異なりますので、トータルの差はないでしょう。

ダイナミックレンジは、フルサイズの方がおおきいです。

しかし、MTFの違いがあまりに大きいので、今回の組わせでは、(2)の圧勝と考えます。

レンズを通じて入力された信号が劣化している場合には、センサーサイズで、それを修復することはできないからです。

追記:

写真3に、SIGMAの30mmF1.4のレンズのMTF曲線をのせています。

価格は、CANON EF-M32mm F1.4 STMが50千円、SIGMAの30mmF1.4が35千円です。

SIGMAの30mmF1.4のMTF曲線は、CANON EF50mm F1.8よりよいですが、CANON EF-M32mm F1.4 STMより、劣ります。

MTF曲線でみると、マウントが同じならば、レンズの性能は、価格に比例しているように見えます。

CANON EF50mm F1.8 STM

https://cweb.canon.jp/ef/lineup/standard/ef50-f18stm/spec.html

CANON EF-M32mm F1.4 STM

https://cweb.canon.jp/ef/lineup/ef-m/ef-m32-f14stm/

SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary https://www.sigma-global.com/jp/lenses/c016_30_14/

CANON MTF特性図の見方

https://cweb.canon.jp/ef/knowledge/#anc-MTF%E7%89%B9%E6%80%A7%E5%9B%B3%E3%81%AE%E8%A6%8B%E6%96%B9

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写真1

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写真2

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写真3