ウクライナ戦争後の世界

2022/02/28に、ロシアとウクライナの停戦協議を開始しましたが、協議が可能か不明です。

 

当初のロシアの想定通りの局面であれば、ロシアが主導権をとって、協議がすすんだと思われます。

 

しかし、想定外が2点あります。

ちょっと、中断して、補足します。

 

ウクライナの戦争で、ロシアの事情に詳しい専門家がTVに登場しますが、専門家は、「ロシアの過去の事情に詳しい」のであって、「ロシアの将来の事情に詳しい」訳ではありません。もちろん、厳密に、「ロシアの将来の事情に詳しい」専門家はいませんが、「ロシアの将来の事情」とは、これから、何が起こるかというビジョンです。一方、「ロシアの過去の事情」は、ヒストリーです。ヒストリアンが将来のビジョンを考えられる訳ではありません。専門家が、どのようなビジョンを提示しているかをみれば、ビジョナリストとしての力量がわかります。

 

このヒストリーとビジョンの交差する地点が、想定外になります。ビジョナリストは、過去の繰り返しのヒストリーと想定外の新しい局面を区別します。

 

1)戦力の評価

 

開戦前は、ロシアの戦力が圧倒的に優位と言われていました。現在も交戦中なので、結果は不明ですが、ロシアの戦力が圧倒的に優位でなかったことは確かです。

 

対戦車ミサイルは、1973年の第4次中東戦争ではじめて用いられ、大きな戦果をあげましたが、今回も、有効に作用しているように思われます。最近の戦車には、ミサイル対策がなされているので、ミサイル1本で、停止することは、難しいですが、ミサイルは、数本命中すれば、戦車は破壊されます。

 

トルコ製のドローンも使われています。こうした最新の兵器をつかった場合、戦力が、兵数では、評価できなくなります。

 

実際の状況が不明なので、詳しい評価は出来ませんが、戦力の評価を変えるべき時期にきていると思われます。

 

2)制裁措置と支援

 

ロシアからドイツへの天然ガス供給がどうなるかは、不明です。また、天然ガスの代金支払いが、SWIFT排除に含まれるのかは不明です。

 

しかし、ロシアが考えていた、天然ガスを人質にすれば、欧州(とくにドイツ)が動けないという今までのルールは変更されています。

 

以下、煩雑になるので、個別の出典は書きませんが、出典は、末尾の文献で確認して下さい。

 

ドイツのショルツ首相は26日、計1000の対戦車兵器やスティンガーミサイル500基の供与をツイッター上で発表しました。

 

チェコとオランダは26日に、ポルトガルは25日に軍事支援を発表しました。チェコのフィアラ首相は850万米ドル(約9億8600万円)超相当の武器をウクライナ側が望む場所に送る方針を表明しました。

 

欧州連合(EU)の行政トップ、フォンデアライエン欧州委員長が27日のテレビインタビューで、EUがウクライナの参加を望むと発言しました。

 

EUは27日早く、ウクライナへの武器供給を発表しました。欧州委員会は「EUは初めて、攻撃にさらされている国への武器や他の装備品の購入と供給に資金を出す」との声明を出しています。

 

スウェーデン政府は27日、紛争地には兵器を供与しないこれまでの国是を破り、ウクライナに提供すると発表しました。提供兵器は対戦車砲が中心です。紛争国にスウェーデンが兵器を送るのは、1939年にフィンランドが当時のソ連の侵攻を受けて以来です。

つまり、経済を犠牲にしても、侵略された国を支援するという新しいルールが生まれつつあります。(注1)



今後の展開:

 

ウクライナが、首都キエフを守れるかは不明ですが、これだけの軍事支援がつぎ込まれると、ロシアの軍事力の前に、圧倒的に敗戦というシナリオは描きにくいです。

 

ドイツは、軍事費をGDPの2%にする計画です。

 

国連は機能しないことが明白になりました。

 

エネルギーの再編の速度があがるでしょう。地下資源にエネルギーを頼ることは、独占的な利益の源泉を生み出し、紛争の原因になります。

 

自然エネルギーによる分散的なエネルギー開発が可能になれば、それは、紛争を回避する手段になります。

 

今回のロシアの戦争は、自然エネルギーが主流になる前の、最後のチャンスにかけて行動した可能性もあります。

 

2022/02/28のニューズウィークに、渡瀬 裕哉氏は、「ロシアによるウクライナ侵攻がどのような結果に終わったとしても、我々はこの出来事が『世界を既に変えてしまった』という認識を持つ必要がある」といっていますが、世界は、新しいルールの構築に向けて動き出しています。

 

注1:

 

東日本大震災などの災害のあとでは、外国からの支援があります。

逆に、外国が、被災した場合には、日本が支援しています。

この関係は、give and takeです。

 

今回は、多くの国がウクライナに武器を提供しました。

これは、今までなかったルールですが、侵略を受けた国に武器を提供すれば、逆に、自国が、侵略を受けた場合には、武器の提供を受けられる可能性があります。

このスキームは、今回の事例では、国連よりも、はるかに機動的に、平和に貢献します。

 

日本は、give and takeを考えずに、武器の輸出は一律禁止する考えですが、これは、リスクの高い戦略と思われます。



ロシアによるウクライナ軍事侵攻以後の世界を想定する 2022/02/28 ニューズウィーク 渡瀬 裕哉

https://www.newsweekjapan.jp/watase/2022/02/post-33.php

 

国是破りウクライナに兵器供与 スウェーデン 2022/02/28 JIJI,COM

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022022800481&g=int



No Limits Meets Reality 2022/02/26 中国問題グルーバル研究所 フレイザー・ハウイー

https://grici.or.jp/2939

 

英BP、ロスネフチ株売却 ロシアから事実上撤退 2022/02/28 KYODO

https://nordot.app/870755389256761344

 

ロシア軍艦の通航制限示唆 2022/02/28 KYODO

https://nordot.app/870764951434297344

 

「集結ロシア軍3分の2が侵攻」ウクライナ激しく抵抗と米 2022/02/28 KYODO

https://nordot.app/870694992605003776

 

永世中立国スイス、ロシア資産凍結する公算大=大統領 2022/02/28 ロイター

https://news.yahoo.co.jp/articles/b0440bebea4ded9891d586129f28181d92453156

 

欧州委員長、EUはウクライナに参加望むと発言 2022/02/28 CNN

https://www.cnn.co.jp/world/35184136.html

 

欧州各国のウクライナへの武器供与相次ぐ、独も政策転換 2022/02/27 CNN

https://www.cnn.co.jp/world/35184112.html