遠藤誉氏は、筆者と同じように、当初、ロシアは戦争は起こらないと予想していましたが、その後、戦争は不可避だったという判断に転じてます。その根拠は、筆者と同じように、欧米がウクライナには、軍隊をださないと確約したことにあると考えています。
この戦争で、利益を得るのは、米国のエネルギー産業で、欧州とロシアには、メリットはありません。つまり、戦争が起こらないと考えていた人は、ロシアは、経済的にメリットのない戦争はおこさないだろうと考えていたわけです。
この点に注意して、今回は、遠藤誉氏の論旨をまとめて、検討してみます。
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バイデン大統領は副大統領の期間(2009/01/20~2017/01/20)に、6回もウクライナを訪問し、訪問するたびに息子のハンター・バイデン氏を伴い、ハンター・バイデン氏は2014年4月にウクライナ最大手の天然ガス会社ブリスマ・ホールディングスの取締役に就任しています。ブリスマ・ホールディングスは脱税など多くの不正疑惑があります。
2015年、バイデン副大統領はポロシェンコ大統領に対して、同社を捜査していたショーキン検事総長の解任を要求します。バイデン副大統領はポロシェンコ大統領に、「解任しないなら、ウクライナへの10億ドルの融資を撤回するぞ!」と迫って脅迫し、検事総長解任に成功したと言われています。
ハンター・バイデン氏には、スキャンダルの疑惑があります。
2019/02/07に、ウクライナ憲法116条に「NATOとEUに加盟する努力目標を実施する義務がウクライナ首相にある」という趣旨の条文が追加されましたが、これには、バイデン副大統領時代からの工作が、効いていると言われています。
ウクライナとNATOの軍事演習は1996年から始まっていますが、2021/09/20にはNATOを中心とした15ヵ国6000人の他国西軍による開始以来、最大規模のウクライナとの軍事演習を展開しています。
2022/10/23に、バイデンはウクライナに180基の対戦車ミサイルシステム(ジャベリン)を配備しています。これは、ロシアのクリミア併合を受けて、バイデン副大統領時代に、配備を提案したものの、オバマ大統領から「プーチンを刺激して、プーチンがさらに攻撃的になる」として、一度は、却下された案件です。
2021/12/07のバイデン大統領とプーチン大統領との首脳会談直後に、米軍派遣の可能性については、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟国ではないことから、集団防衛の義務は「ウクライナには適用されない」としつつ、「それは他のNATO加盟国の行動次第だ」と述べています。
2022/02/24に、NATOのストルテンベルグ事務総長は記者会見で、東欧での部隊増強の方針を示す一方、ウクライナには部隊を派遣しないと述べています。
ここで、、米軍がウクライナへ派兵しないことが、決定的になります。
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NATO加盟を希望することは、あってもよいと思いますが、憲法に書き込む必要はありません。
つまり、バイデン大統領は、機会を利用して、ロシアを煽って、孤立させています。
この状況は、太平洋戦争前のハル・ノートにそっくりです。
遠藤誉氏の記事から、米軍の派遣については、US ArmyのWEBにも、情報があることがわかりました。
2021/09/20の演習は、遠藤誉氏が引用していますが、詳しく見れば次になっています。
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約300人の米兵が、NATOとヨーロッパ大西洋のパートナー国のための協力プログラムである平和のためのパートナーシップの旗印の下で、6,000人の多国籍軍と戦術面で協力します。
米国の参加には、2021/04から合同多国籍訓練グループウクライナを支援するために配備されたワシントン陸軍国家警備隊の第81ストライカー旅団戦闘チームが含まれます。さらに、約150人の他の米陸軍代表がミッションイネーブラー(mission enablers)として参加します。
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ここで、米陸軍代表は、州兵をさすと思われます。
2022/02/12に、国務省報道官ジョン・F・カービーは書面による声明で次のように述べています。
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2021/11下旬以降、合計160人のフロリダ国家警備隊のメンバーがウクライナに派遣され、ウクライナ軍の訓練、助言、指導を行っています。第53歩兵旅団戦闘チームに割り当てられた軍隊は、合同多国籍訓練グループ-ウクライナの一部です。
彼らはウクライナを去り、ヨーロッパの他の場所に再配置されます。
事務局は、ウクライナの米国職員に関する国務省のガイダンスに従って、職員の安全とセキュリティを第一に念頭に置いて、十分な注意を払ってこの決定を下しました。
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つまり、2022/02/12まで、ウクライナにいた米兵は、戦争の直前になって、ウクライナを去っています。これが、合同多国籍訓練の成果です。これが、事前にわかっていれば、合同多国籍訓練に参加するウクライナ兵は、いなかったと思われます。
ロシアと並んで、最大の被害者は、ドイツです。
2022/02/22に、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認したことを受け、ドイツのオーラフ・ショルツ首相はノルドストリーム2事業の無期限停止を発表しました。
ただし、中身は、川口 マーン 惠美氏によれば、「政府の発表したのが運開停止ではなく、認可の手続きを停止という『トリック』だそうです。
2022/02/24のブルームバーグによれば、「バイデン大統領、対ロ制裁対象を『ノルドストリーム2』に拡大」したそうです。
米国の最大の関心は、「ノルドストリーム2」を停止して、米国産の天然ガスを売ることにあります。
これに対して、2021/07/22に当時のメルケル首相は、ウクライナへの援助額を増やすという条件をつけて、米国に、「ノルドストリーム2」を認めさせています。
「ノルドストリーム」や「ノルドストリーム2」が稼働していれば、これは売る側にも、買う側にも、メリットがありますので、戦争のような急激な変化を回避する安全弁になります。
「ノルドストリーム」や「ノルドストリーム2」の利用計画を変更する場合には、時間的な余裕をもって、徐々に変更しなければ、軋轢の元になります。
アンゲラ・メルケル前首相は、2021年12月8日に連邦首相を退任し政界を引退しています。
バイデン大統領は、メルケル前首相との「ノルドストリーム2」についての約束を、実質、反故にしています。
メルケル前首相が、まだ、現役であったならば、プーチン大統領とは、交渉が可能で、戦争にはならなかったと思われます。ショルツ首相では、役不足だったとしか言いようがありません。
平和に対する一国の宰相の力は、決して侮れないと感じます。
US, NATO, Ukraine enhance interoperability with Rapid Trident exercise 2021/09/21 US Army
More U.S. troops deploying to Europe, Guard leaving Ukraine 2022/02/15 US Army
https://www.army.mil/article/254003/more_u_s_troops_deploying_to_europe_guard_leaving_ukraine
米軍のウクライナ派兵「検討していない」 バイデン大統領 2022/12/09 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASPD92SF5PD9UHBI00N.html
バイデン大統領、対ロ制裁対象を「ノルドストリーム2」に拡大 2022/02/24 ブルームバーグ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-02-23/R7RUDUT1UM0W01
対ロシア制裁でドイツのガス価格は「1000㎥あたり2000ユーロの新世界」へ 2022/02/25
川口 マーン 惠美
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92765?imp=0
米独、ガス計画めぐる対立に終止符 ウクライナ支援合意 2021/07/22 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2215F0S1A720C2000000/
裏目に出た?ノルドストリーム2を停止したドイツの決断 2022/02/26 ニューズウィーク デービッド・ブレナン
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/02/2-410.php
バイデンに利用され捨てられたウクライナの悲痛 2022/02/25 中国問題グローバル研究所 遠藤 誉
メルケル後のドイツ、不安定な新政権に試練多く 2021/12/17 東洋経済 田中 理
https://toyokeizai.net/articles/-/476341