テスラとトヨタの株式評価額~2030年のヒストリアンとビジョナリスト(3)

2020/01に、テスラは、世界の自動車メーカーで、時価評価額が、トヨタに次ぐ2番目になります。

 

2020/02/28のWIREDの記事を要約します。

 

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2020年1月末に、テスラの時価総額が日本円にして10兆円を突破し、フォルクスワーゲンを抜いてトヨタ自動車に次ぐ世界2位の自動車メーカーになった。株価は過去半年でほぼ2倍に上昇した。だが、生産目標の達成が危ぶまれるなど波乱の1年を過ごしてきたテスラにとって、この評価は「正当」なものと言えるのだろうか?

 

では、テスラには本当に1,000億ドルの価値があるのだろうか。

 

答えは恐らく「ノー」だ。

 

問題になるのは常に生産目標で、向こう数カ月で年間50万台も視野に入ると言われている。ただ、生産拡大には多額の投資と時間が必要になる。そして生産台数が大幅に伸びない限り、テスラの売上高が株式市場における同社の評価に見合う額になることは難しい。

 

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2020/06/10に、米国の電気自動車(EV)最大手のテスラ社の「時価総額」が、トヨタ自動車を超えて世界の自動車業界でトップになります。テスラの2019年の引き渡し台数は約36万7500台で、トヨタの1074万台のわずか30分の1に過ぎません。時価総額は「株価×発行株式数」で出る数字で、現在の実力だけでなく成長力なども含めた総合的な評価が反映されています。



テスラの株価は2020年の1年間で8倍にも伸びて、2021年11月には、日本人にも馴染みの深い国内・アメリカ・ヨーロッパの伝統的な主要自動車メーカー時価総額上位7社の合計よりも大きい額になっています。





2021/11/15時点で時価総額は、トヨタの34兆円に対し、テスラは3.4倍の118兆円になっています。トヨタ自動車は、2021年7〜9月期決算(国際会計基準)で純利益がこの時期としては過去最高になっています。一方、トヨタの販売1台あたりの利益は25万円。対してテスラは73万円で、テスラに3倍近い差をつけられています。

 

2022/01に発表された2021年のトヨタ自動車グループの世界販売台数は1049万5千台余りで、2年ぶりに1千万台を超え、ドイツのフォルクスワーゲングループを上回り、2年連続で世界トップとなっています。

 

トヨタ自動車が、2022年度の世界生産台数について、今年度の見込み台数をおよそ2割上回る、およそ1100万台と計画しています。

 

ヒストリアンであれば、トヨタはすごいということになりますが、ビジョナリストは、この状況を喜べないと判断します。

 

ビジョナリストは、現実に起こっていることの背後に真実があると考えますので、この視点は、データサイエンティストに一致しています。

 

2020/02/28のWIREDの記事は、テスラの株価は過大評価であると指摘していますが、予測は全く、外れています。

 

間違いの原因は、以下です。「テスラの売上高が株式市場における同社の評価に見合う額になることは難しい」

 

「売上高」と「株式市場における評価額」が見合うべき理由はありません。

 

WIREDの記事は「生産拡大には多額の投資と時間が必要になる」といいます。これは、現在の状態から将来が連続的に変化するというフォーキャストの視点であり、ヒストリアンの視点です。トヨタは、売上げの大きな大会社であり、当面つぶれることはないだろうという考え方です。

 

つまり、WIREDの記事の執筆者は、ヒストリアンです。

 

一方、米国で、株式を売買している人の多くはビジョナリストです。

 

テスラの評価額が、トヨタの3.4倍あるということは、簡単に言えば、テスラの将来性は、トヨタの3.4倍あるということです。

 

日本の企業の多くが、「売上高」に見合うだけの「株式市場における評価額」しか得られていないのであれば、その企業は、株価に反映されるだけのビジョンを提示できていないことになります。

 

経済が停滞して、社会変化が小さいときであれば、この状態でも問題はないかもしれませんが、これからは、エネルギー、働き方(つまり企業)など、社会が劇的に変わることは必須です。

 

しかし、国内では、ビジョナリスト淘汰してきた結果、ヒストリアンだらけになっています。WIREDの記事の執筆者が特殊な訳ではなく、国内では、一般的な状況です。

 

これは、簡単に言えば、日本の企業は、今までのサービスや製品の改良はできるが、世の中を大きく変えるような新しいコンセプトやシステムのサービスや製品を作る能力がなくなっていることを意味しています。

 

時価評価額の違いは、これから起こる、社会システムの変化に、日本の社会が取り残されている状況を反映しています。

 

- テスラには本当に「10兆円企業」の価値がある? 専門家たちの見解  2020/02/28 WIRED

https://wired.jp/2020/02/20/tesla-valuation/