(EV一択の流れが変わらない理由を説明します)
1)トヨタ自動車の見解
トヨタ自動車の社長は、佐藤恒治氏になって、トヨタ自動車のEVの本気度が問題になっています。
トヨタ自動車は、EVのラインアップを発表しました。
EUは、合成燃料「e-fuel」(イーフューエル)を使用した場合など条件付きでガソリン車を容認する方針を打ち出して、全面的なEVシフトに、ブレーキがかかっています。
これに対する佐藤恒治氏の対応は、「敵は炭素。CO2をいかに下げるか」を強調していますので、前豊田社長の路線を引き継いでいます。
ここ数年、「EV一択か、ハイブリッドとの併存か」の議論がなされていますが、筆者は、EV一択が、ほぼ確定していると考えますので、その理由を述べておきます。
2)2つの理由
EV一択になると考える理由は2つあります。
2-1)量産効果
大量に売れるものは、利益を研究開発に回すことによって、技術革新が進みます。
ロケットや航空機製造には、高度技術が必要ですが、技術的には、自動車に勝てない理由は、マーケットが小さいからです。
自動車のエンジンが、高度技術を使えた理由は、マーケットの大きさと利益の大きさにあります。
EVシフトが起こると、エンジンのマーケットは小さくなります。
一方のEV,特に電池関連の技術は、自動車に限定されないマーケットをもっています。
今後、エンジンの技術投資にかけられる金額は、EVの技術投資にかけられる金額より小さくなります。
この動きを促進する要素は、株価です。評価額が高くなると、資金調達が容易になりますので、技術投資にかけられる金額が大きくなります。
筆者は、テスラの株式評価額が、トヨタ自動車の株式評価額を越えた時点で、技術投資にかけられる金額におけるエンジンの優位性は失われたと判断しています。
2-2)ソフトウエアと規格化
自動車単体でのCO2負荷量は、EVよりエンジンの方が小さいと思います。
しかし、交通システム全体になれば、逆転すると考えます。
現在のクラウドシステムは、情報の流れを対象にしています。
一方の電力システムは、古典的な送電網にたよっています。
しかし、電力クラウドのようなシステムが実現する可能性が高いです。
類似の事例があります。
ASMLは、オランダ北ブラバント州フェルトホーフェンに本部を置く半導体製造装置メーカーです。半導体露光装置を販売する世界最大の会社で、16カ国に60以上の拠点を有し、世界中の主な半導体メーカーの80%以上がASMLの顧客です。
個別の装置の性能は、ニコンとキヤノンも良いのですが、システムとしてのスループットでは勝負になりません。
恐らく、EVは電力クラウドの一部になって、システムとしてのスループットで、エンジンを越えると考えます。
筆者は、トヨタのウーブンプラネットに期待しますが、トヨタがエンジンを捨てられるかは、微妙だと感じます。
筆者は、トヨタの自動運転技術を評価できるデータを持ち合わせませんが、トヨタの純正のカーナビとGoogleマップのナビ機能間には、大きな差があります。
トヨタの純正のカーナビは、OEMでトヨタがつくっている訳ではありませんが、自動運転技術にはこの技術の差がそのまま反映されます。
つまり、Googleの自動運転に、トヨタの自動運転が勝てない可能性が高いと判断しています。
引用文献
欧州の「EV一辺倒」転換 トヨタ社長「現実的な選択」2023/04/07 ITmedia 樋口隆充
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2304/07/news144.html
「世界はなぜEV一択なのか」 トヨタ社長に“直球質問”してみた 【回答全文あり】2022/06/11 ITmedia 樋口隆充
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2206/10/news203.html