2021/11/21には、米国と英国が、北京オリンピックへの、「外交的ボイコット」を検討していると伝えられています。
台湾への軍事圧力
中国商務省が11月1日、野菜や米、食用油などの生活必需品の備蓄を求める声明を発表したことを受け、台湾との戦争準備ではとの臆測がオンラインで広がりました。
中国共産党は「平和的手段による台湾との再統一」が建前で、この方針は総じて国民に支持されていると言われています。
一方、台湾は、11月9日に公表した2021年版国防報告書で、「中国は圧倒的な軍事力を背景に、台湾の領空を侵犯するなど度重なる『脅し』で台湾軍の戦意を失わせるグレーゾーン戦略を展開している」と警告しています。
李登輝氏が、総裁に選出される時には、ミサイルを外して打っていましたので、現在の『脅し』の効果は、まだ小さいという意見もありますが、李登輝氏が選出された頃に比べると軍事力の差が大きく、大陸優位になっていますので、そうとは言い切れないところもあります。
中国共産党が「平和的手段による台湾との再統一」の建前を進めるのであれば、現在の『脅し』は、逆効果に見えます。
実際に、リトアニアは、11月、事実上の大使館である台湾の代表機関設置を認めています。これに対して、中国は、リトアニアとの外交関係を格下げしています。
中国経済の行方
以上の現状を見ると、中国は、「平和的手段による台湾との再統一」ではなく、時間的により早い解決を望んでいるように見えます。
シナリオとしては次の2つがあります。
1)時間が経つと中国の軍事力と外交力は、次第に増加する。
2)時間が経つと中国の軍事力と外交力は、次第に減少する。
1)のシナリオであれば、早急に、軍事的な『脅し』をかける必要はありません。
実際に、1971年に、国連で中華人民共和国の中国の代表権が認められてから、一貫して、中国と外交関係を結ぶ国が増え続け、台湾と外交関係を結ぶ国は、減り続けてきました。
しかし、ここにきて、リトアニアのように、逆の動きが出てきました。
つまり、1)のシナリオから、2)のシナリオに、シフトしつつあるように見えます。
2020年には、中国の経済規模が2028年に米国を抜き世界一になるという予測が、英有力シンクタンクの「経済経営研究センター(CEBR)」によってなされましたが、2021年になって、否定的な予測も出てきています。
経済成長を阻害する要因は、以下です。
1)高齢化により、労働人口が減少する。
2)温暖化対策、人権問題、ITセキュリティ、不十分な市場開放に対して、米国を中心に、中国に圧力をかける傾向が強まっている。
3)不動産危機で、お金を回すことが難しくなっている。
4)共産党中心の体制が強化され、市場経済が委縮してきている。
5)ポストコロナ対策で、集団免疫ができていないので、withコロナ経済が、不透明になっている。
6)一帯一路のいきづまり。
北京オリンピック問題
ここにきて、消息不明の中国の女子テニス選手問題で、オリンピックの開催が不透明になってきています。
中国が本当に、シナリオ1)から、シナリオ2)に、シフトしているのであれば、残された時間が少ないので、無理を仕掛ける可能性があります。(注1)
一帯一路も、中国以外の国が、投資を見送っていた理由は、ハイリスク投資であったからです。
投資が回収できない場合には、スリランカの場合のように、港の使用権を得ることができるかもしれませんが、投資が回収できないことには、変わりがありません。つまり、財政余力があれば、無理ができますが、なくなれば、一帯一路は、お荷物になります。アフガニスタンに見られるように統治が不十分な国では、投資の回収は容易ではありません。
中国は、ダム大国で、ここ20年間、ダム建設を輸出しています。ダム建設の主な目的は、発電です。しかし、筆者は、太陽光発電の効率が良くなれば、発電ダム建設は不要になると考えています。一帯一路は、ゼロエミッション前の古い開発デザインに基づいているので、焦げ付く可能性もあります。
実のところ、現時点では、シナリオ1)から、シナリオ2)への切り替えが起こったかは不明です。
しかし、近い将来、その切り替えが来ることは、避けられないと思われます。
北京オリンピックの頃には、その時期が明確になってくると予想しています。
ゲーム理論で考えれば、台湾併合が起きるのであれば、その時期が、台湾併合のベストな時期になると思われます。
注1:
日本の場合には、残された時間という概念なしに、30年が経過しています。
これは、異常な状態ですが、同調圧力のためか、認識できない人が多いと思われます。
ジャパンアズナンバーワンのあとの日本では、同様のシナリオシフトが起こりました。