カブールで自爆テロが続いています。
時間を追ってみると、次の様になります。
在アフガニスタン米国大使館は25日、首都カブールの国際空港周辺で「脅威」が高まっているとして、アフガンに残る米国人に対し空港に行かないよう警告した。(中略)
毎日新聞 バイデン米大統領は24日、ホワイトハウスでの演説で、過激派組織「イスラム国」(IS、ISIS-K)の分派が空港周辺で攻撃を計画しているとの情報があり「長くとどまるほど危険は急激に増す」と指摘していた。
このあと、26日に2回の自爆テロがあり、27日には、3回目の自爆テロがあったようです。(補足:後から、爆発は1回とわかっています。)
空港周辺などで、ISSI-K活動しており、タリバンが、ISIS-Kを押さえるつもりがないのか、抑えられないのかはわかりませんが、ISが、活動しています。
タリバンは、資金や、技術者が、海外に流出することを避けたいようにいっていますが、治安を維持できなければ、これは、難しいでしょう。
2021/08/27のニューズウィークは次の様に伝えています。
バイデン米大統領は26日、アフガニスタンの首都カブールの空港周辺で起きた爆発を巡り、実行犯を捕らえて償わせると表明した。また、イスラム過激派への反撃計画を策定するよう国防総省に要請したことを明らかにした。
さて、タリバンが政権をとることは、中国のシナリオであった訳ですが、タリバンが政権をとっても中国が、安泰とは言えません。
2021/07/20のNewSphereは、パキスタンと中国の関係を次の様に伝えています。
パキスタンでは中国権益を狙ったこういったテロ事件は今回が初めてではなく、近年は繰り返し発生している。たとえば、西部バルチスタン州の州都クエッタにあるセレナホテルでは2021年4月、爆発物を用いたテロ事件があり、少なくとも4人が死亡、11人以上が負傷した。セレナホテルはクエッタにあるホテルのなかでも最高級である。事件後、イスラム過激派組織「パキスタンタリバン運動(TTP)」が犯行声明を出した。中国大使は爆発当時セレナホテルに滞在しておらず無事だったが、同大使を狙ったとの見方が強い。
2019年5月には、バルチスタン州グワダルにある高級ホテルパールコンチネンタルホテルで武装集団による襲撃事件が発生し、兵士や武装勢力のメンバーら8人が死亡した。事件後、パキスタンからの分離独立を掲げる武装勢力「バルチスタン解放軍(BLA)」が中国人や外国人投資家を狙ったとする犯行声明を出した。また、2018年11月、最大の都市カラチでBLAのメンバーが中国領事館を襲撃し、警察官2人を含む4人が死亡した。事件後、BLAは犯行声明を出し、中国が地元の資源を搾取し続けており、それを停止しない限り攻撃を続けると警告した。
パキスタン北西部のカイバル・パクトゥンクワ州で(7月)14日、中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に関連するダムの建設現場に向かう中国人ら30人以上が乗るバスが爆発して谷に落下し、これまでに少なくとも中国人9人を含む13人が死亡した。現在までに犯行声明は出てない。中国外務省は同事件を非難する声明を出し、パキスタン当局に徹底的な調査を要請したという。
8月15日のタリバンのカブール制圧後、主要国で大使館を維持したのは中国とロシア、それにイランだけです。
中国の華春瑩・外務省報道局長が記者会見(8月16日)で「アフガニスタンとの良好な隣人関係と協力を発展させる」と発言し、早々とタリバンによる統治を容認する姿勢を明らかにしています。
2021/08/25の日本経済新聞は、次のように、中国の積極的関与を伝えています。
中国外務省の汪文斌副報道局長は25日の記者会見で、アフガニスタンの首都カブールで、イスラム主義組織タリバンと駐アフガン中国大使が接触したと明らかにした。「アフガン再建のために建設的な役割を果たしていきたい」と述べた。
2021/08/19 JIJIは、国際安全保障の専門家サッジャン・ゴヘル氏の発言を伝えています。
ゴヘル氏は、中国の支援が可能かという点で、懐疑的です。
今のタリバンはメディアに精通している。組織が変化したかのようにアピールするすべを知っている。だが、実態は昔も今も同じだ。アイデンティティーの土台には女性蔑視がある。自身の主張とは懸け離れた抑圧的な組織だ。
―近隣国の反応は。 パキスタンは最大の受益者だ。戦略的にタリバンと最も近い関係にあり、常に強く支援してきた。重要な戦略的勝利と言える。 ―中国はどうか。 中国も潜在的な受益者だ。中国はタリバンと関係と対話を確立するのが極めて早く、また、それは主にパキスタンの仲立ちで実現した。中国はアフガンに多大な投資をし、巨大経済圏構想「一帯一路」につなげたがっている。中国は一方で、アフガンがテロの温床になり、隣接する新疆ウイグル自治区に波及することを懸念し、そうしたことが起きないようタリバンに求めている。 ―タリバンと国際テロ組織アルカイダとの関係は。 アルカイダとは世代を超えた深い関係がある。イデオロギーや戦闘員の家族同士の結婚で生じたつながりを土台にした信頼関係で結ばれている。タリバンは公式のプロパガンダとして、アフガンを過激主義の場所にはしないと言うだろうが、それを真に受けることはできない。
今回のテロは、ISIS-K(イスラム国ホラサン)が行ったと推測されていいます。
2021/08/27のニューズウィークで、ジェニ・フィンク氏の記事は、次の様に伝えています。
CNNは、ISIS-Kはアフガニスタンの首都カブールに複数の構成員を擁しており、タリバンとは「不俱戴天の敵」同士だと指摘。米安全保障コンサルティング企業、ソウファン・グループの政策・調査担当ディレクターであるコリン・クラークはCNNに対し、2つの組織は政治、イデオロギーや軍事面で考え方が対立していると述べた。
つまり、ISIS-Kはタリバンとは対立しているという判断です。
パキスタンのイスラム過激派組織「パキスタンタリバン運動(TTP)」は、アフガニスタンのタリバンとは関係がないと言われています。また、パキスタン政府は、TTPの中国に対するテロについて、取りしまりを強化していると言います。
しかし、2021/08/16のGDBは、次の用に伝えています。
2021年8月15日、タリバンのアフガニスタン制圧に伴い、過去副指導者を務め、TTPの中でも比較的穏健派と考えられているファキール・ムハンマドがカブールの刑務所から解放された。
この報道が、真実なら、TPP 、タリバン、パキスタン政府の関係はかなりグレーです。
2021/08/25のPresident Onlineで、高口 康太氏は次の様にいっています。
8月20日、パキスタン南西部のグワダルで、中国人が乗った車を標的とした自爆攻撃が行われた。イスラム武装勢力の「バルチスタン解放軍」が犯行声明を出している。(中略)
米軍なきアフガニスタンでも今後同様の構図となるだろう。中国の存在感が高まれば高まるほどに、標的となるリスクもまた大きくなる。
アフガニスタンのタリバンは、戦闘能力は高いですが、政策実行能力には、不安があります。それを、補うには、人とお金をある程度つぎ込む必要があります。
中国の華春瑩・外務省報道局長は、それをする予定があると言ったわけですが、パキスタンの例をみると容易ではなさそうです。
一方中国の国内は、個人の経済活動への締め付けを強化しています。
2021/08/26のブルームバーグは、「国務院が3月に発表した税制改革の指針を実行に移すと、国家税務総局が26日表明した」と伝えています。
2021/08/24のJB Pressは、「様々な産業分野で規制の強化が行われている」ことを伝えています。
パキスタンでの現状をみていると、アフガニスタンで、中国が、タリバンをうまく支援できるとは思えません。このことは、「一路一帯」の行き詰まりを示しています。
遠藤 誉氏は、アフタガニスタンを起点にして、中国は、米中の外交的な影響力の逆転をねらっていると考えていると指摘します。確かに、中国の意図は、そこにあるとは思いますが、成功する確率はあまり高くないように思われます。
バイデン大統領は、今回の徹底の不手際で、評価を下げてしまいました。その点では、米国は、政治的には不安定ですが、経済は、大きく揺らいではいません。
現在、中国が、貿易相手国に1位または、2位に位置していない国をさがすことが難しいほど、中国経済は、世界経済や、各国経済に組み込まれています。このことが、中国の外交力の源泉でもあります。
しかし、これは、見方を変えれば、中国がセキをすれば、すぐに風邪をひく国が増えていることを意味します。つまり、中国経済が傾くと、自国では制御できないくらいに、経済が傾いてしまう国が多い訳です。その場合には、中国経済との強いつながりは、外交的にはマイナスになります。
今の中国経済は、毛沢東時代へのアンシャン・レジームです。このままいくと、傾くまでに、さほど時間はかからないように思われます。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/08/isis-k.php
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【解説】タリバン指導部にはどんな人物がいるのか? 2021/08/17 AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3361885
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アフガン・カブール空港周辺で「脅威」 ISが攻撃計画か米が警告 2021/08/26(現地25) 毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/e5a7bab91c331533d73645a62e65be2dcd767906
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米英両政府、カブール空港から離れるよう警告 攻撃脅威と 2021/08/26(現地25) BBC NEWS
https://news.yahoo.co.jp/articles/8ec7116bf8e145bc895f1b75f2e1d16c36ee951d
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カブールの空港近くで爆発 米国人らが待機するホテルか 2021/08/26(現地26) 朝日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/bf9fc69f288a333f755e30427b95d4be2dd391f1
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カブールで3度目の爆発 攻撃ではないとタリバン 2021/08/27(現地27未明) AFP
https://news.yahoo.co.jp/articles/2a2ba59e7e5a0025a12669c5933487ea9f949aea
https://news.yahoo.co.jp/articles/1f051c5b228362aaf7bcda6ad98fabc509fed92b
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自衛隊機がカブールに 退避希望者は空港へたどり着けず 2021/08/26 朝日
https://news.yahoo.co.jp/articles/cc8cc3b6c3ea6725018c80d7988003e5f606b486
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【独自】邦人らのアフガン退避、最大500人を想定…隣国パキスタンに移送・週内の完了目指す 2021/08/26 読売新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/90a92a947d13413e907f0b266b1407f58b6fa2f3
https://www.bbc.com/japanese/56828809
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パキスタンで中国標的のバス爆発テロか 続く一帯一路への抵抗 2021/07/20 NewSphere
https://newsphere.jp/world-report/20210720-2/
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021081800805&g=int
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/08/isis-k-1_1.php
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2597W0V20C21A8000000/
https://news.yahoo.co.jp/articles/85b5658dd60428c9862ff8ddcfa4c3ba7e465dbc?page=4
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Kabul, i talebani prendono possesso del palazzo presidenziale 2021/08/16 GDB
https://news.yahoo.co.jp/articles/b2b414be5d3f8bca555d7ab7e6dad054208f3566
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墓穴を掘り始めた中国:民間企業への規制強化がもたらす影響 2021/08/24 JB Press
https://news.yahoo.co.jp/articles/41522ef433f4bfbe06691ecfa0f9dbc5c29bdbf0
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