darktableとETTRの設定(1)
ETTR(Exposing to the Right)は、白飛びしない範囲で、最大限の情報をRAW画像に収める手法です。
darktableのマニュルには、さらっとしか、書かれていません。photographylifeを読んでみたところ、いままで、正しく理解していない点があることに気づいたので、まとめておきます。
今回は、基礎の基礎から入ります。
写真1は、darktableのヒストグラムです。これは、RAWファイルを読み込んだ状態で得られます。 ETTRは、正確には、カメラで撮影する時に、RAWのヒストグラムで、写真1のように、露光が右に(の赤線)寄っていることを意味します。一般的には、そのように解説されています。一方、カメラの標準露出は、フレームが、18%のグレーと仮定しています。
第1の留意点は、カメラのRAWのヒストグラムは、概念上はあり得ますが、実際にカメラのモニターに表示されるヒストグラムは、Jpegのヒストグラムだという点にあります。
つまり、darktableで現像する場合には、次の3種類のヒストグラムが存在します。
1)カメラ内のRAWの画像データ、または、センサーのRGB値のヒストグラム
3)darktableの編集したRAW画像のヒストグラム
そして、ETTRは、厳密には、1)に対して、定義されることに注意が必要です。
ところで、仮に、写真1のヒストグラムをカメラ内のRAWのヒストグラムと考えた場合、ヒストグラムが写真1のように右の赤線に寄っていることは、ETTRといえるかという点も、確認する必要があります。つまり、右端のスケールは何で決まっているかを確認する必要があります。
ここでは、右端は、センサーの能力限界に一致していると仮定して話を進めます。
写真2以下も、カメラ内のRAWのヒストグラムと考えます。写真2は、露光不足で、ETTRではありません。
写真3は、逆に、露光がオーバーで、白飛びを起こしていて、ETTRではありません。
写真4は、darktableのRAWの白飛びチェッカーで、白飛びを表示しています。
写真5は、darktableの画像ですが、写真4で、白飛びの部分は、データがありません。
写真4の露光はー0.3EVです。カメラは、パナソニックのLX100です。これから、ETTRには、露光をマイナスにすべきと、勘違いしていました。
写真6では、撮影時の露光は、ー0.7EV です。カメラはオリンパスのPL-6です。
ここでは、マイナス露光を打ち消すように、+0.7EVに露光を設定しています。赤が少しとんでいますが、大筋では、問題はありません。つまり、0.0EVで撮影すれば、ETTRになったことになります。このシーンでは、フレームに太陽が入っていますので、0.0EVが、ETTRになりましたが、通常であれば、ETTRにするには、標準露光よりも、プラスの設定をすべきことになります。
ETTRは、実際に撮影する時に、露光を変えて、白飛びするか、否かを確認すれば、できますが、シャッターチャンスが、ものをいう場合には、それは、困難です。また、写真6のような、日没のゴールデンアワーの場合には、明るさが、刻々変化します。ですから、シーン、カメラの特性毎に、標準露光からのバイアスを求めておいて、それを使うことが現実的な対応のようです。
パナソニックのLX100は、コンデジで、絞りとシャッター速度が容易に変えられる数少ない機種なので、レンズ交換カメラをもっていかない時には、もっぱら、この機種をつかっていますが、曇り空が白飛びする欠点があります。これを避けるには、曇りの日には、測光を変えてみた方がよいのかもしれません。
次回は、カメラのモニターについて、検討します。
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Exposing to the Right Explained 2018/04/04 Photography life Spencer Cox
https://photographylife.com/exposing-to-the-right-explained
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The Myth of “Exposing to The Left” 2019/11/09 Photography life Nasim Mansurov
https://photographylife.com/exposing-to-the-left
darktableとETTRの設定(2)
ETTRにするには、基本的には、標準露出よりも、プラス側に、露出を設定します。
そのプラスの量は、カメラのモニターのヒストグラムで確認することになります。
カメラのモニターのヒストグラムは、Jpegを基準にしています。保存するデータをJpeg 形式に設定した場合には、Jpegのヒストグラムを表すのは、当然ですが、RAWのみの保存設定にしても、モニターのヒストグラムは、Jpegに対応しています。このことは、予想外の問題を引き起こします。たとえば、デジタルカメラには、保存するJpeg画像の色空間を Adobe RGBとsRGBから選ぶ選択肢があります。この選択肢のどちらを選んでも、保存されるRAWデータに違いはありません。しかし、モニター上のヒストグラムが、Jpegに依存している限りは、ヒストグラムには、違いが発生します。このため、できるだけRAWに近い設定、ここでは、Adobe RGBを選ぶべきです。その他のJpeg設定も、できるだけRAWに近い設定を選ぶべきです。
次に、実際に、標準露光とのずれを確かめてみます。
写真は、撮影時の露光を変えています。
最初に、写真3を除く、写真1、2、4、5、6、7を見ます。
ヒストグラムで見ると、写真7は右が切れていますので、だめです。一つ前の写真6が、ETTRに一番近く見えます。写真には、RAWの白飛びを表示しています。写真6では、犬の前足の所に赤い点が見えます。ここだけが白飛びしてます。
この赤い点を無視すれば、ETTRは標準露光より+1.3EV、赤い点を避けるのであれば、+1.0EV になります。
次に、写真3ですが、これは、標準露光で、撮影した画像に、darktable上で、露光を増やしていって、ヒストグラムが、右による露光の増加分を求めています。+2.38Vで、ヒストグラムが、ほぼ右に達しています。
この+2.38EVと、上記の+1.3EV には、1EVくらいの差があります。しかし、写真3の方が、写真6より、明るく見えます。
そこで、写真8では、 +1.7EVと 0.0EV+2.38EVを比べていますが、やはり、右の方が明るいです。
このずれは、撮影条件が正確一致しないために起こったと考えられます。
写真9は、標準露光に対して、ー0.3EVで撮影しています。右上の窓の部分と窓が床に反射している部分では、白飛びが起こっています。
写真10では、+1.0EVで、撮影しています。ここでは、犬の白い毛の部分も白飛びしています。
つまり、+1.0EVでも、露光がオーバーで、ヒストグラムでも確認できます。
スペンサーコックスさんは、D800Eでは、ここで示したような、テストをして、+ 3の露出補正が最適と判断しています。この見つけた値から-1/3または-2/3の露出補正を決定するのが最善して、安全を見て、+ 2.3の露出補正が理想的であると判断しています。
スペンサーコックスさんのカメラはフルサイズです。今回のサンプルはKiss-MのASP-Cのカメラですので、1EVくらいかなと思いました。確かに、写真1から8をみれば、+1EVでもよさそうに見えます。しかし、写真9と10では、+1.0EVでは、明らかにオーバーです。一筋では行かないようです。
なそ、カメラのモニターの画像上に、白飛びのマークができる機種も多いですが、これは、精度が悪くて、ヒストグラムの代わりには、なりません。
写真1 ー0.3EV
写真2 0.0EV
写真3 0.0EV+2.38EV
写真4 +0.7EV
写真5 +1.0EV
写真6 +1.3EV
写真7 +1.7EV
写真8 +1.7EV: 0.0EV+2.38EV
写真9ー0.3EV
写真10 +1.0EV
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Exposing to the Right Explained 2018/04/04 Photography life Spencer Cox
https://photographylife.com/exposing-to-the-right-explained
darktableとETTRの設定(3)
屋外の写真でも、露光を変えて、ETTRのテストをしてみたので、結果を報告します。
カメラは、前回と同じKiss Mです。レンズは、EF-M11-22mm F4-5.6 IS STMです。
本題の前に、広角レンズをリストアップして見ました。
2021年時点のめぼしい広角レンズは以下です。Fuji filmは、価格COMのレンズの検索になかったので、除外しています。また、魚眼レンズも除いています。
今回のレンズは2番です。
価格は、1.が、3万円、2.と3.が4万円、4.が、7万円、5.6.7.が、10万円台前半、8.以降が、20万円以上になります。
8.は、今まで、価格に制限をつけなければ、ベストといわれてきましたが、12.が出てきて、逆転されていると思います。
広角は、画角の広い方が有利なので、画質も大切ですが、入らないことには、始まりません。
こうしてみると、1.は、破格の価格帯です。ただし、発売時期が遅すぎたとも思われます。
こうしてみると、広角レンズは、風景と建築写真以外では使われないので、マーケットが小さいのだろうと思われます。
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ニコン(x1.5) AF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VR 2017年 6月30日 発売
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CANON(x1.6) EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM 2013年 7月11日 発売
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CANON(x1.6) EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM 2014年 5月29日 発売
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SONY(x1.5) E 10-18mm F4 OSS SEL1018(APS-Cフォーマット専用) 2012年11月16日 発売
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オリンパス(x2) M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 2015年 6月26日 発売
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パナソニック(x2) LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm/F2.8-4.0 ASPH. H-E08018 2017年 5月25日 発売
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シグマ 14-24mm F2.8 DG DN [ソニーE用] 2019年 8月23日 発売
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CANON EF16-35mm F2.8L III USM 2016年10月発売
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CANON RF15-35mm F2.8 L IS USM 2019年 9月27日 発売
本題の、標準露光から、プラス何EVが、ETTRかというテストです。
実は、ー1.0EVでも、空の雲の部分が白飛びしています。
これは、パナソニックのカメラで悩まされたことがありますが、CANONも、例外ではないようです。
空の雲を、除外して考えます。
それから、前回は、露光補正を0.0EVで表示していましたが、この方法だと、ヒストグラムが右に切れているかわからないので、ヒストグラムの右端が収まるまで、露光を落とした表示に切り替えました。
結果は、+0.7で少し、白飛びが始まり、+1.0で、白飛びが明確になります。
これから、+0.3か、+07EVが、ETTRに向いていると思われます。
結果は、室内より、小さめになりました。
写真1 ー1.0EV
写真2 0.0EV
写真3 +0.3EV
写真4 +0.7EV
写真5 +1.0EV
写真6 +1.3EV
写真7 +1.7EV
darktableとETTRの設定(4)
その後、いろいろと試してみましたが、一言でいえば、ヒストグラムを見ながら、露光補正をするというより、撮影時に、ヒストグラムの右に空きが大きい場合には、露光をあげて調整することでよいと考えています。
写真1は、+2EVで撮影しています。
露光補正をする前のカメラのヒストグラムのイメージは、写真2のヒストグラムのようなものです。
このような場合には、露光を増やした方がよいです。