チャイナ・アズ・ナンバー・ワン

エズラ・ボーゲルがなくなりました。ボーゲルは、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で著名です。「コロナ対策とデジタル教科書に見る科学技術立国の終わり」にも関係が深いので、ここで、振り返っておきます。日本経済が世界のGDPに占めるシェアが、一番おおきかったのは、1990代のバブルのころです。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の賞味期限は12,3年はあったことになります。筆者は、1998年頃、次の世紀の経済予測をレビューしたことがあります。そのころ、イギリスの歴史学者は、2020年から2030年頃に、東アジアでは、日本と中国の覇権争いがおこり。おそらく、中国が勝つであろうと予測していました。つまり、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」のあとには、中国がアジアの盟主になるという予測です。少なくとも東アジアでは、「チャイナ・アズ・ナンバー・ワン」になるという予測です。もちろん、中国が米国を追い越すまでには、もう少し時間がかかるという予測でした。

コロナで、米国の経済成長が減速し、コロナ対策に成功した中国の経済成長が減速していないことから、「チャイナ・アズ・ナンバー・ワン」が、東アジアだけでなく、全世界のナンバー・ワンになる可能性が出てきました。

結局、日本は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で、気を良くして、日本製品は品質がよいとまだ考えていますし、中国との外交政策も、方針をはっきり決めかねているところが多くあります。

1979年の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」はその後の12年間を見通すうえではよかったのでしょうが、そのあとには、同様に考えれば、「チャイナ・アズ・ナンバー・ワン」になってきていたのですから、それに合わせて、政策決定ができなかったことが、失われた30年の理由でもあります。

ひとは褒められればうれしく、けなされれば、気落ちします。「チャイナ・アズ・ナンバー・ワン」がでてこなかったことは、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が単に褒められてうれしかっただけ(要するに内容は理解していなかった)であったことを示しているようにも思われます。失われた30年のルーツは、既に、40年前にあったのかもしれません。