学術会議と科学技術指標2020

学術会議の任命問題から、あり方論が問題になっています。

しかしながら、学術会議の問題と8月に出た科学技術指標2020は繋がっているように思われます。

この中で、理系の論文数の落ち込みもありますが、文系は博士の就職をみるともっとひどいです。

結局、学問の再編成がなされてしまっているのですから、それに合わせた組織改革ができないので、立ち行かなくなっています。

40年くらいまえであれば、文系文学部の学問手法はともかくも語学ができることでした。しかし、現在は、違います。自動翻訳も本来であれば文学部のテリトリーなのですが、文学部で自動翻訳をしているひとは少ないとも思います。過去にも、文学部で、コンピュータのプロが活躍したことはあります。TeXのメタフォントをつかって、新しい文字を定義する方法に熱心だった方は、サンスクリットやマイナーな文字をつかった言語の研究者だったこともあります。

今時、フィルムカメラを使っている人はマイナーで、普通は、スマホのカメラかデジカメを使います。同じように学問のツールが大変革してしまったのです。ですから、課題は、学問の専門分野をどうして再編するかではなく、再編成された知識体系にどのように学問分野を張り付け直すかになります。しかし、学術会議の答申は、デパートのように各専門分野は独立して価値があるという前提で、定数が決まって、人選されていますから、「再編成された知識体系にどのように学問分野を張り付け直す」答申が出てくる可能性はほぼゼロです。

自動翻訳の精度とか、シンギュラリティとか難しい課題を取り上げることが好きな人が多いですが、自動辞書引きでも、十分な場合も多くあります。例えば、料理のレシピであれば、書かれている単語は、食材か調味料に決まっています。ですから、単語の置き換えで十分理解できます。手元には、タイでかったカレールーの類がありますが、この場合には、調味料は入っているので、食材の種類と重量、加熱時間がわかれば料理はできます。理系のテキストでは、式が書かれている場合には、基本的には変数の意味が解ればよいので、料理と同じレベルの自動翻訳で何とかなります。こうなると、語学は当面は英語だけで十分で、他の言語は、自動翻訳やグーグルレンズでなんとかなるだろうということになります。しかし、一方では、プログラミングができないと、試算もできないので、どうにもなりません。

学術会議問題は、学問の構成、大学の組織、学会の組織に関する大きな共通する課題の一部です。要点は、知識体系の再編に対応する必要があります。おそらく、データサイエンスは、全ての学問に共通するリテラシーの一部をなしていると思われます。

 

  • 科学技術指標2020

(出典)文部科学省 科学技術・学術政策研究所、科学技術指標2020、調査資料-295、2020年8月

https://www.nistep.go.jp/research/science-and-technology-indicators-and-scientometrics/indicators