IT化とIT人材

ITの遅れを取り戻すことが重要政策に上がっています。一方で、ITの促進は20年前から、政策目標になっていながら一向に進んでいないことも指摘されています。この場合に、恐ろしいのは、IT化が進んでいないことではなく、IT化が進まない原因がわかっていないことです。原因分析のレポートが出ていれば、レポートに基づいて、IT化促進政策をすれば、今度はうまくいくかもしれません。しかし、以前行われていた政策を繰り返すだけであれば、今度だけは成功すると考えることには無理があります。

IT化の促進では、担当大臣の話を聞いていると日本には、優秀なIT技術者がいるといっていますが、本当でしょうか。

ITはパソコンのコマンドが英語のように、日本語にはむいていません。効率的にソフトウェア開発をするのであれば、全て英語で行うことがベストです。しかし、英語の苦手な人も学生を中心にいますので、日本語の教科書があると便利です。20年前と比べて、日本語の教科書は激減しています。数少ない良い教科書の著者は外国人で、翻訳本です。日本人の書いた本の多くは入門であったり、ゲームの作り方であったりして、ビジネスのアプリ開発には使えません。これから、よい教科書がかけるIT人材が、きわめて少ないことは確かです。

 

このブログでは、darktableというフリーソフトの使い方を説明していますが、世界的に使われているフリーソフトで、開発に日本人が関与しているものは、まつもとゆきひろ氏のrubyしか思い浮かびません。英語ができて、世界的なプログラマと言える人も、きわめて少ないです。

フリーソフトではなく、有料ソフトで、日本製で、世界的に使われているものは思い浮かびません。日本のITメーカーのレベルは、低いと判断できます。

以上の状況を見ると、日本に優秀なIT技術者がいるという説明は眉唾です。優秀な人はいますが、圧倒的に数が少ないと思われます。これについては、次の点がわかっています。

  • エンジニアを出す理系の大学定員が外国と比べて少ない。日本のように文系の学科定員の方が多い国は少ないです。

  • 理系の中でもIT系の学科の定員が、外国と比べて少ない。

  • 日本のIT系の学科の教育は、大学ランキングなどをみると、水準が高いとは言えない。

  • アメリカの大学では、副専攻システムがあるので、副専攻にIT系の学科をとる学生の比率が5割を超えている。日本には副専攻システムはない。

以上を考えると、日本のIT系人材は質と量の点で劣勢にあると判断されます。

人材不足の解決方法は、処遇と組織学習能力にあると思います。

IT系の学科を卒業すれば、給与が5倍くらい高ければ、希望者が増えます。もちろん、年功序列では不可能です。

国立大学は動きが遅いですが、私立大学は、組織学習能力があれば、こうしたときにニーズにはやく対応できると思います。