1)大学ランキング
イギリスの高等教育専門誌(Times Higher Education)の「THE世界大学ランキング」の2023年版はよく知られていて、次の様になっています。
トップ20にはアメリカの12大学、イギリスの3大学、スイスの1大学、カナダの1大学、中国の2大学、シンガポールの1大学が名を連ねています。
東京大学は39位です。
トップ40には、アメリカの21大学、イギリスの7大学、スイスの1大学、カナダの2大学、中国の2大学、香港の1大学、シンガポールの2大学、ドイツの2大学、オーストラリアの1大学が含まれています。
ここまでは、良く知られていますが、 MINKABUで、溝上憲文氏がこの先を紹介しています。(筆者要約)
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日本の大学は、京都大学が68位、東北大学が201~250位、大阪大学が251~300位、名古屋大学が301~350位、北海道大学と九州大学が、501~600位、慶應義塾大学が801~1000位、早稲田大学と立教大学が1001~1200位になっています。
さらに最下層の1201~1500位に法政大学や日本の国立大学がひしめいています。
このランクにはパキスタン、ジンバブエ、モロッコ、アルジェリア、ウガンダ、タイ、インドなどの途上国や新興国の大学があります。多くの日本の大学は、途上国や新興国の大学と同レベルにあります。
つまり、欧米では、日本の有名大学と同レベルの大学を卒業しても、グローバル企業に、就職できません。
(筆者注:これが、日本企業が、グローバル企業に連戦連敗な理由と思われます)
東京大学クラスの卒業生は、大手外資系の金融投資会社やビジネスコンサルティング会社、IT企業にも就職しています。
大手米系メーカーの人事担当者は、この実態を、次のように語っています。
「アメリカの本社採用と、日本法人採用は違います。本社採用の欧米の大学の卒業生は、30歳前後で海外の拠点の幹部として派遣されます。日本法人採用は、派遣されたボスの下で働かざるを得ません。日本法人で採用された人は、東大出身者でもバイスプレジデント止まりです」
そのレベルの人が、仮に、直接、アメリカ本社の採用試験を受けても、東大大学院卒の学歴では、合格は難しいです。
日本のグローバル企業でも、東大よりも世界ランクトップクラスの大学の卒業生に優秀な人材が多くいます。日本のグローバル企業は、アメリカのトップクラスの大学からの採用が難しいので、中国、シンガポール、ベトナム、インド、マレーシアのトップ校からの採用を積極的に推進しています。
日産自動車は、ゴーン氏の時代に、欧米の特定のビジネススクールのMBA卒に絞り、日本の採用者と異なる高い処遇と出世コースを用意してリクルートメントをしていました。
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日本の新聞の広告をみていると、日本企業の平均給与ランキングが出ていたり、企業の社長の出身大学は、慶應大学が一番多いといった記事を見かけます。つまり、実力というよりは、学閥を頼りに出生するストラテジーです。
グローバル企業に就職して、活躍したいという人はいないように見えます。
2)人材発掘
2023年3月1日の 現代ビジネスで、加谷 珪一氏は、ニトリの似鳥昭雄会長の発言を紹介しています。(筆者要約)
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似鳥氏は雑誌のインタビューで次のように言っています。
「日本経済はは労働生産性が低いから停滞しています。原因は経営陣が同じことばかりやるからです。改革ができないなら組織を変えるべきです。社長の重要な仕事の一つは、自分の給料を減らしてでも優れた人を高給で引き抜くことです」
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加谷 珪一氏、似鳥氏同じように、日本経済の停滞の原因は、日本企業の経営が原因と考えてます。
経営者を入れ替える場合について、加谷 珪一氏は、「外部の力によって大企業経営者のハードルを上げるという議論をすると、必ずといって良いほど、なり手がいなくなるという指摘が出てくるが、筆者はまったく心配していない」と言い、米GMのトップが、高卒で工場のラインで働いていた従業員出身、ウォルマートのトップがアルバイト出身であった例を引いています。
一見すると、大学ランキングと高卒出身のCEOは矛盾するように見えるかも知れません。しかし、CEOの選抜が実力に基づいて行われるので、あれば、大学卒か、高卒かといったラベルは関係ありません。
グローバル企業が、世界の一流大学の卒業生を採用したがるのは、大学のラベルのためではありません。世界の一流大学の卒業生には、優秀な人材がいる確率が高いからです。
溝上憲文氏が紹介した大手米系メーカーの人事担当者の話の「日本法人で採用された人は、東大出身者でもバイスプレジデント止まり」は、ラベリングでストーリーが出来ているので、日本流に解釈されている可能性があります。
問題は、実力評価の方法です。
どれほど優れた経営案であっても、100%成功することはありません。
必ず、失敗のリスクがあります。
このことは、言い換えれば、実力は、結果だけでは判断できないことを意味しています。
似鳥氏は、「日本の経営陣が同じことばかりやるから、労働生産性が低くなる」と言います。
これは、失敗を避けるために、責任回避の前例主義が繰り返されていることを示しています。
The fixation of belief で言えば、固執の方法に相当します。
The fixation of belief の科学の方法は、失敗を許容するかわりに、同じ失敗を繰り返さないことを要求します。
実力評価には、結果の評価も含まれますが、より重要な点は、計画の評価です。
経営計画の段階で、ディスカッションすれば、科学的に見れば、誰の経営計画が優れているかは、評価できます。
つまり、実力評価の半分以上は計画段階で評価出来るはずです。
もちろん、これは、経営計画が科学の方法で行われることが前提です。
企業の経営計画のディスカッションは、非公開なので、内容を知る方法はありません。
しかし、政府の政策(経営計画)のディスカッションは公開されています。
マスコミ各社は、政策のディスカッションが科学的でないといって批判することはありません。
これから、マスコミ各社の経営計画は、科学的にディスカッションされていないことがわかります。
経営者を入れ替える場合について、加谷 珪一氏は、「外部の力によって大企業経営者のハードルを上げるという議論をすると、必ずといって良いほど、なり手がいなくなるという指摘が出てくるが、筆者はまったく心配していない」とも言っていますが、ここには、日本企業のCEOの自分たちは優秀であるという自負が示されていると思われます。
しかし、「世界の大学ランキング」と「世界の企業の労働生産性」は、この自負を否定しています。
日本の大学の世界ランキングをあげる方法は、大学が、高度人材の市場に参画することです。
香港の大学のように短期間で、ランキングをあげた大学の教員は、国際的な人材で構成されています。
日本の大学は鎖国状態になっていて、世界共通の業績評価になっていません。
業績評価はドキュメンタリズムになっていて、審査付の論文の本数で行われます。
内容を理解していない人間が制度をつくれば、必ずドキュメンタリムになります。これは、制度を作る人間の能力不足が原因で、能力よりポストを優先する年功型組織の欠点です。ジョブ型雇用では、原則として、内容を理解していない人間が制度をつくることはないので、ドキュメンタリムは起こりまぜん。
本数が足りないと、年功型雇用で、昇格できないので、引用される可能性のないつまらない論文を濫造します。
引用されないとわかっている論文を書いている教員も多数います。
専門ごとの定員は、省庁と同じようにほぼ固定化しています。
まともな、日本語のテキストはないにもかかわらず、テキストや授業は英語でできません。
これは英語力の話ではありません。
筆者は、ブログで、RAW現像ソフトのdarktableの話を書いています。
このソフトは、半年ごとにメジャーバージョンアップされます。
日本語のマニュアルはありません。仮に、日本語のマニュアルを作っても、半年ごとに、改訂し続けることは至難です。
このように、進歩の早い分野の高等教育では、テキストは英語以外はありえません。
多くの日本の大学の世界ランキングは、途上国や新興国の大学と同レベルにあります。
具体的には、パキスタン、ジンバブエ、モロッコ、アルジェリア、ウガンダ、タイ、インドなどの国と同じレベルにあります。
しかし、パキスタン、ジンバブエ、モロッコ、アルジェリア、ウガンダ、タイ、インドでは、技術教育の教科書は、英語版を使っています。
つまり、同じ大学ランキングのレベルで、カリキュラムの内容を比べると、日本の大学の方が、途上国や新興国の大学より、はるかに遅れています。
2023年4月16日の日経新聞は、2020年までの20年間で、アルゼンチン(37倍)、メキシコ(19倍)、トルコ(10倍)、インド(7倍)への留学生が急増しているといいます。留学生が使う教科書は、英語で、授業も英語です。
実は、東京大学など、大学ランキングで途上国や新興国の大学よりは上に来ている日本の大学でも、英語の教科書を使わないので、カリキュラムの内容が途上国や新興国の大学より遅れている学部や学科が多数あります。
大学の10兆円ファンドは、こうした問題を避けたまやかしに過ぎません。
生成AIが出てきたので、過去の事例を記憶していることの価値はゼロになりました。
日本の教育カリキュラムは、異常に暗記偏重です。
日本では、科学的に、ディスカッションやディベートはできず、同調(The fixation of beliefの権威の方法)が求められます。
科学的はスキルは、全く収入の増加に結びつかないので、リスキリングは誰もしません。
この先に何が起こるかは、言うまでもないと思います。
「ある発展途上国の大学の話」は、ここまでです。
引用文献
「世界では低学歴」日本の大卒の末路…途上国レベルに急落「学生に優秀な人材がいない」という人事部の本音 2023/04/13 MINKABU 溝上憲文
https://news.yahoo.co.jp/articles/e5c3f071c60778537ff8d395a20ad65f71cd4812
日本経済が低迷しているのは「経営者がぬるま湯につかっているから」という“身も蓋もない現実” 2023/03/01 現代ビジネス 加谷 珪一
https://gendai.media/articles/-/106829?imp=0