「安宅和人:シン・ニホン」を読んで

安宅和人氏は「イシューからはじめよ」の著者です。ただし、今回の本では、イシューはどこかにいってしまいました。簡単にいえば、審議会資料とか、白書を読んでいるような感じです。色々かいてあるが、結局何が重要かよくわかりません。同じマッキンゼー出身者でもポイントを絞り込んで説明する、大前研一氏と比べると、その散漫さがよくわかります。半面、事典代わりに使うのであれば、便利です。

半分ちかくは予算配分の話に費やされていて。これは担当の官僚にしてみれば、喜ばしい内容と思います。

日本政府は既に財政破綻していますから、優先順位の高い政策は、お金のかからない政策であると筆者は考えています。ここのところ、日本経済が中国経済に負け続けていますが、それは、日本が社会主義の給与体系をとっているのに対して、中国は資本主義の給与体系をとっているからです。「シン・ニホン」には、科学技術予算を増やすべきと書いてありますが、優先順位が違うと思われます。インドや、インドネシアのように、優秀な技術者の給与が、他の職の10倍から100倍くらいにすれば、黙っていても社会システムは変わります。もちろん、これは、筆者の意見ですから、別の意見でも構わないのですが、ともかく優先順位をつけて、絞り込まないと(これは、官僚の最も嫌いな方法です)物事は進まないと思います。

同じマッキンゼー出身者でも、大前研一氏の場合は、日本経済が上向きの時に、活躍されています。安宅和人氏の場合は、日本経済が下向きの時に、活躍されています。この条件は、別に、安宅和人氏に限らず、現役の経営コンサルタントには全てあてはまります。(大前氏は現役でないことになるので、叱られるかもしれませんは、説明の意図は理解できるでしょう。)そう考えると、ニホンの立て直しを誰の意見を重視して行うかは、非常に難しい局面にきていることがわかります。日本の問題解決の糸口を求めるのではなく、現在日本が置かれている局面がいかに困難な状態であるかを確認するのであれば、「シン・ニホン」は非常に有益な書物です。

 

 

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