ウェブ替え玉受験の闇~プランBの検討

(ウェブ替え玉受験には、因果モデルを考えない闇があります)

 

1)因果モデル

 

何か問題が発生した場合、問題の再発を防ぐには、原因をシャットアウトすることが原則です。

 

「結果から原因を推定できるか」という手続き問題は、難問で、現時点では、統計的な因果律が唯一の一般解です。例外は物理学のように、因果律を記述する数式が既に分かっている場合です。

 

統計的因果律は、もっとも原因らしいものを選出する手続きであって、確実な原因が分かるわけではありませんが、現時点で、ベストな手順です、

 

このように原因を特定することは難しいのですが、だからといって、原因の追求を諦めてしまえば、問題は解決できなくなってしまいます。



2)共通の原因

 

因果モデルを考える場合に、一番簡単なモデルは、1原因、1結果ですが、このような単純なモデルが当てはまるのは例外です。

原因をC、結果をOとすれば、1原因、1結果モデルは、次のようにかけます。

C1→O1

 

交絡条件は次のような物です。

C1→M1→O1

 

このような場合には、O1の原因は、C1ともM1とも解釈できてしまいます。

ここで、C1が真の原因であるとすれば、M1は見かけの原因になります。

 

一方では、風が吹けば桶屋が儲かる式に「原因→結果」が繰り返されることもあります。

C1(原因)→M1(結果)

M1(原因)→O1(結果)

 

この問題を整理するには、→の始点が原因、→の終点が結果という約束で、ナットワーク図を書いて考えることになります。

 

共通の原因とは次のタイプを指します。

C1→O1

C1→O2

この場合には、C1は、O1とO2の共通の原因になります。

 

3)替え玉受験

 

替え玉受験の背景には、一旦入社すれば、実力にかかわらず一定の給与が得られるという前提があります。仮に、入社試験で良い成績を取っても、その後の実績が伴わなければ、クビになるのであれば、お金を払って、替え玉試験を依頼するメリットはありません。

 

例えば、大前研一氏は、マッキンゼーのジョブ型雇用について、「毎年20%くらい解雇される」といっています。このようなジョブ型雇用であれば、替え玉試験を依頼するメリットは考えられません。

 

「全国学生調査」(文部科学省国立教育政策研究所)によると、文系学部の大学4年生の場合、1週間の授業出席時間は、「5時間以下」が62%を占め、卒業論文や研究に、3分の1から半分の学生が5時間以下しか費やしていません。

 

合計すると文系では、大多数の学生が、授業出席と卒業論文・研究に、1週間で10時間以下しか使っていないことになります。

 

4年生では、就職活動がありますが、それでも、理系では、1週間に20時間は使っているので、その差は歴然としています。

 

ジョブ型雇用であれば、大学で、勉強しなければ、実力がつきませんので、解雇者のグループになってしまう可能性が高くなります。したがって、学生は、言われなくとも勉強します。

 

年功型で、一旦採用されればクビにならず、給与は実力ではなく、主に年齢で決まるのであれば、替え玉試験をしてでも採用されれば、勉強は不要です。給与は年齢別平均賃金からの差が少ないので、平均給与の高い企業に入ることが合理的です。実際に、就職関係のHPでは、どの企業の平均給与が高いかというランキング情報を特集しています。

 

ジョブ型雇用で、年齢に関係なく給与差が大きければ、企業の平均給与ランキング情報には価値はありません。

 

自分の成績なり、能力をアピールして、上司と給与交渉を毎年することになりますので、ランキングよりは、自分の実力をつける方が重要です。

 

不景気の就職氷河期の時期に卒業した学生では、正規社員になれる割合が低いとも言われています。しかし、ジョブ型雇用であれば、新規採用に意味はありませんので、景気の良かった時に採用した学生で、成果の出ない人をクビにして、より成果の出せる人に入れ替えますので、就職氷河期問題は存在しません。

 

年功型雇用では、解雇規制があるため、社内で働かないオジサンが多いと言われますが、こうして考えれば、年功型雇用が、勉強しない大学生をつくり、替え玉受験を生み出していることがわかります。

 

当たり前ですが、社内で働かないオジサンと勉強しない大学生が多くなれば、労働生産性は地に落ちて、経済は停滞します。

 

年功型雇用は、「社内で働かないオジサン」、「勉強しない大学生」、「替え玉受験」を生み出す共通の原因の可能性があります。

 

これは仮説ですから、間違っているかも知れません。

 

とはいえ、替え玉受験では誰も因果モデルを考えていないように見えることは異常です。

 

なお、更に、ジョブ型雇用をしない原因を考えると、ジョブ評価が出来ないことが原因であることがわかります。ジョブ評価は、自動車のセールスマンのように、売り上げのアウトカムズで評価出来れば簡単ですが、プログラマーなどの場合には、そんなに簡単にはいきません。プログラムでつかうモジュールは半年毎にグレードアップするので、モジュールの仕様を暗記しても、半年で、無駄な知識になります。バカロレアやSTEAMでは、暗記をあまり評価しませんが、知識が、半年毎にグレードアップする場合には、暗記では対応できないからです。つまり、能力評価は難しいですし、教育の現場で、暗記以外の教育評価がどの程度できているかにも、疑問がつきます。

 

そう考えると、ジョブ評価が出来ないので、ジョブ型雇用をしないという因果モデルと、ジョブ型雇用をしないので、ジョブ評価が出来るようにならないという2つの面があると思われます。

 

STEAMもITのリスキリングも暗記ではどうにもなりません。強いて言えば、数学と統計学のスキルが基本としか言いようがありません。

 

検討は、ここで、中断しますが、根の深い問題です。



引用文献

 

ウェブ替え玉受検、関電社員「ネット検索で摘発ないと思った」…企業もAI監視で対策 2022/12/06 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/national/20221205-OYT1T50282/

 

「働かないおじさん」問題の解決へ 日本企業は「ジョブ型雇用」に転換できるか 2022/10/08 週刊ポスト 大前研一

https://www.moneypost.jp/955477



大学生が勉強しないのだから日本経済の基礎体力低下は当然のこと 2022/11/13 現代ビジネス 野口 悠紀雄

https://gendai.media/articles/-/102030