大阪府の感染者数増加と東京都の陽性率の課題~コロナウィルスのデータサイエンス(107)

GoogleDataの更新時期は不定期なのですが、今回は、7月14日バージョン(前回は13日バージョン)で2日分だけ、データが追加になりました。対応したデータの更新作業をしましたが、アップしなおすほどではないと、思いました。そこで、重要な検討課題として、次を考えてみました。

大阪府の感染者増加

1点目は、大阪府の感染差数が増えているが、これをどう考えるかです。都道府県別の総感染者数では、大阪府は東京都についで多くなっていて、これは、人口が影響していると思われます。

そこで、大阪府は東京都に準ずる第2の感染源と考えるべきかという疑問が生じます。

図1は大阪府と首都圏3県の感染者数の推移をみたものです。

6月の第1週から、第2週をみると大阪府はほぼゼロです。これから、大阪府では、コロナウィルスは6月の初めには、根絶されていたと思われます。データから、6月の初めに、コロナウィルスが根絶できていなかったと思われる都道府県は、北海道、福岡だけです。山梨、岐阜、愛知、静岡にも、感染者数が若干ありますが、これらの県では、感染者数は増加せず、ほぼ一定です。これは、外から、移入してきたことを示していると思われます。北海道と福岡はゼロにはなりませんでした。つまり、コロナウィルスの感染源が消滅しなかった都道府県は、北海道、東京、神奈川、福岡だけです。こう考えると、大阪府の感染者は、東京都から移入して、府内で感染拡大したと考えられます。仮に、この仮説が正しければ、感染者数の推移は、首都圏の3県に似ているはずです。

この視点で、図1を見ると、神奈川県の6月1日から6月中旬までを別にすれば、非常によく似た傾向になっています。

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図1 大阪と首都圏の感染者数の推移

 

東京都の感染者数と陽性率

GoodleDataを更新した、東京都の感染者数の推移を図2(線形)と図3(対数)で示しておきます。

軸のくわしい説明は(77)にあります。感染者数とGootleTransit(Tokyo)は共に7日移動平均で、GoogoleDataは14日前倒しの日付になります。

図3のように、感染者数の拡大率はほぼ一定です。

図4は1日当たりの検査数(右軸:人)と感染者数(左軸:人)、です。感染者数が検査数の影響を強く受けていることがわかります。

図4の感染者数は、検査データのもので、図2,3の発表データとは一致しませんし、日付もずれています。検査データの日付は発表データの日付より古くなり、そのタイムラグは、1日が多いですが、ばらつきます。

検査数が増えると、感染者数がふえます。ですので、感染者数の増加は、検査数の増加によるので問題がないという発言がなされます。しかし、検査を受けたい人が増えているのですから、感染は拡大しているとも思われます。また、安全のために、症状の有無にかかわりなく、ある集団の人を全員検査すれば、検査数は増えますが、陽性率はおちます。なので、

  • 7日平均をとることで、短期変動が消去できます。

  • 陽性率と感染者の関係を調べて、できれば、基準化指標をつくればよいと思われます。

後者の検討のために作成したグラフが、図5です。図5は、陽性率(縦軸:%)と感染者数(横軸:人)の散布図です。時系列変動が追跡できるように、値は線で結んであります。値は7日平均で、感染者数は図4で使ったものです。このグラフでは、5月1日からのデータを使っています。7日平均なので、一番古いプロットが、5月7日になります。

これから、5月7日に4.3%だった陽性率は、5月19-22日に0.8%にさがります。この間に感染者数は、約20人が約10人に半減します。

5月23日から陽性率と感染者数が増加に転じますが、6月10日までは陽性率の上限は2%で、感染者数も26人以下で、増減を繰り返しながら緩やかに増加していきます。

6月11日から、7月9日に過去最大の感染者数146.9人を記録するまでは、陽性率と感染者数は、単調に、増加していきます。

7月10日以降は、感染者数は130-140人当たりで増減するとともに、陽性率が少しづつ増加していきます。

これから、次のことが言えます。

検査数が増えたから感染者数が増えたという傾向(感染者数が増加し、陽性率が低下する傾向:右下向きのベクトル)は観測されていません。感染者数が増えた要因は患者数の増加によります。

7月10日以降には、検査拡大と感染者隔離の効果が出ていると思われます。明らかに、この部分では、感染対策に対する介入が効いていると思われます。

この原稿を書いているときに(7月17日の東京都の感染者数は290人台)というニュースが入ってきました。

図5を見る限り、300人弱という感染者数は、7月に入っての積極的な介入で抑えられた結果の感染者数と思われます。ただし、細心の検査のデータはここでは、15日までです。16日のデータの公開は20時以降です。

そこで、陽性率の増加を確認したいと思います。

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図2 東京都の感染者数の推移

 

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図3 東京都の感染者数の推移(対数)

 

 

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図4 東京都の検査数と陽性数

 

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図5 東京都の感染者数と陽性数

 

政府がババを引いた日

GoToキャンペーンで、東京都は除外されました。

この問題では、GoToキャンペーンは、中止した方が良い状況になったのですが、今更、中止すると、期待していた観光業界の反発があるので、「GoToキャンペーンの中止」のババをだれが引くのかという駆け引きになっていたことです。仕掛け人は小池知事で、ババを引いたのが政府という構図と思われます。

このババ抜きに野党も便乗して、国会討議をしていました。

ババ抜きの参加者には、誰も危機意識はみられません。政府も東京都も対策や、その時期も、専門家会議に丸投げしています。

 

 

引用

 

  • 都内の最新感染動向

https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

  • NHK 特設サイト

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/

https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: <2020.07.16>7-14version.