東京都の休業要請解除基準
15日に東京都は休業要請基準を公開しました。
このうち、解除の数値基準は次の3つです。
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1日の新規感染者数が20人未満
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新規感染者のうちの経路不明率50%未満
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新規患者数が減少している
数値は直近7日間の平均値を使う。
15日の東京都の発表では、現状は1日の新規感染者数18人(14日まで)、新規感染者のうちの経路不明率50.4%(12日まで)だそうです。
なぜ、2つの数字の日付が違うのか、情報操作の疑義がでます。これは、5月1日の専門家会議の資料でも見られた疑義です。例えば、新規感染者のうちの経路不明率が14日であると50%を切っているのではないかという疑いです。
計算方法
今まで、このブログでは、7日間移動平均を使ってきました。例えば、1日から7日の感染者数をp1,p2,..,p7とすると、この移動平均(p1+p2+p3+p4+p5+p6+p7)/7を第4日の値p4の代替値としてきました。今回は、直近の7日をとるので、同じデータをp7の代わりに使うことになります。
問題は次です。新規感染者のうちの経路不明率の計算方法には次の2つがあります。
まず、同じように1日から7日を考えます。感染者数が、p1,p2,...,p7とし、経路不明な感染者数をq1,q2,...,q7とします。
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毎日経路不明率を計算し、その直近の7日の平均をとる。(q1/p1+q2/p2+q3/p3+q4/p4+q5/p5+q6/p6+q7/p7)/7
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7日分の経路不明感染者数を同じ期間の感染者数でわる。(q1+q2+q3+q4+q5+q6+q7)/(p1+p2+p3+p4+p5+p6+p7)
どちらもだいたい同じですが、平均の重みのかけ方の違いになります。
ここでは2.を使います。
東京都のデータの推移
図1の東京のデータは、先日東京都の発表した訂正をしてありませんので、東京都の数字と細部の値は、違ってきますが、今回はそこには目をつむります。
図1が、経路不明感染者率の推移です。感染者数と経路不明感染者数もプロットしてあります。いずれも直近7日間の平均をとっています。
これから、感染者数と経路不明感染者率について、次のことがわかります。
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感染者数は4月17日から減少傾向にある。トレンドとしては近くに20人を割りそうである。
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経路不明感染者率は4月は60%以上あったが、5月に入って低下して、一時期40%近くまで下がったが、5月8日ころからぶり返して、50%近くまで増加した。明確な減少傾向はみられないが、50%を越えないところで踏みとどまっている。
既に検討しているいるように、経路不明感染者と経路解明感染者では、感染拡大リスクが異なります。
いわゆるクラスーターが発生した場合には、経路解明感染者が増えます。ある感染者がクラスターから感染したというクラスターが確認できる条件は、感染者の経路がわかって、同じクラスターに属していることがわかることです。経路がクラスターが発生すると、一度に、感染者数が増えるので、目立ちますが、リスク対象の人が限定されるので、短期間に、対策が可能です。韓国は風俗店でのクラスターからの感染者の追跡ができないことが問題となっています。このような場合、確かに、クラスターから経路不明者が発生しているのですが、仮に、風俗店に行った人が陽性になって感染した場合に、当人が風俗店にいったことを隠していれば、経路不明感染者で、風俗店のクラスターとは独立なデータに登録されます。病院の院内感染のように、感染者は時間的、空間的に集中して発生する場合には、比較的追跡がしやすく、経路解明感染者になりますが、韓国の風俗店の場合のように、空間的に広がってしまうと追跡が難しくなります。
ですから、対数軸で考えれば、経路不明感染者数は、経路解明感染者数より、リスクが1ケタ高いと考えるべきではないかと推定しています。
問題は、「感染者数が減少している」と同じように「経路不明感染者率が減少している」という条件を付加すると、休業要請解除が出来なくなってしまいます。
したがって、筆者は、休業要請解除は、近い将来に休業要請解除ができるように、データの推移から、近い将来に休業解除ができる条件を作成した「後だしじゃんけん」の疑いがあると思います。
なお、経路不明感染者数は、今、検討しましたように、空間的は移動との関連が高いと思われますので、よりちさな空間解像度(例えば区単位)での検討が有効かもしれません。23区以外では、数字が小さいので、今後、部分的な解除が課題になると思われます。
経路不明感染者条件の補足
感染者数が20人未満で、経路不明感染者率が50%未満なので、これは、経路不明感染者数が10人未満になります。
つまり、次の2条件はほぼ等価と思われます。
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感染者数が20人未満で、経路不明感染者率が50%未満
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感染者数が20人未満で、経路不明感染者数が10人未満
感染率が小さくなった場合には、接触にによる感染拡大より、移動により拡大のリスク制御が重要になってくることは、既に解説しています。そして、移動による感染リスクの指標は、経路不明の感染者になります。