RGB空間に広がるワークフロー:「フィルミックRGB」「トーンイコライザー」「RBGカーブ」「RBGレベル」 ~darktable3.0の新機能解説(5)(darktable3.0第75回)

解説

derktable3.0の最大のセールスポイントで、かつ、理解が難解である最大のポイントがこの回のRGB空間のワークフローになります。これでも、十分わかりやすいとは言えませんが、過去の解説よりは、その全体像が、かなりわかりやすくなっていると思います。

筆者は、このRGBワークフローをつかってから、カメラのJpeg保存はやめてしまいました。

利用上は、使っては、いけない、モジュールの組み合わせがある点がポイントになります。

RGB空間に広がるワークフロー:

特にRGB空間で利用できる新しいモジュール追加されました。 darktable 3.0では、このセクションで紹介するモジュールを使用して、画像を完全にRGBで編集できます。ほとんどの画像は、「ホワイトバランス」、「露光」および「ノイズ低減(プロファイル)」モジュールと組み合わせて、これら新しいモジュールだけで処理できます。少ないモジュールで強力かつ高速なワークフローが達成でき、一言で言えば、効率的です。

=>この新しいワークフローを最適に使用するには、「 input color profile」モジュールで「 linear Rec2020 RGB 」作業プロファイルをアクティブにすることを強くお勧めします( 「linear prophoto RGB 」も使用できます) 。

=>このコンテキストでは、darktable 「 preferences」、tab「 core options」、heading「 quality」 の3つの新しいオプションを使用して、「ベースカーブ」および「シャープ化」モジュールを無効にすることも強くお勧めします。

(訳注:上の2つのパラグラフは、ソフトでは動作確認がとれていません。次のPierreのビデオを見ると、ダークルームに「 input color profile」が表示されているのですが、筆者の3.0では表示されません。2番目のパラグラフも同様に確認がとれません。)

このリニアRGBワークフローと、ダークテーブルで採用されている理由を理解するには、次のビデオをご覧になることをお勧めします。: Image processing and pixel pipeline in darktable 3.0.。一般に、Aurélien Pierreのバージョン3.0の最新ビデオを視聴れば、画像処理の効率が向上し、新しいワークフローを最大限に活用でき、最終的には多くの時間を節約できるでしょう。

ともあれ、このワークフローの概要とその利点を以下に示します。

darktable 2.6から徐々に導入された「フイルミック」および「カラーバランス」を備えたリニアRGBワークフローにより、紙印刷用の低ダイナミックレンジ写真を中心とした1980-1990年のグラフィックの遺産から解放されます。ディスプレイ参照と呼ばれるこの従来のワークフローは、RGB値が(知覚的な意味で)色をエンコードし、心理的に現実的な方法でRGB値を操作することを前提としています。残念ながら、(物理的な)光を(心理的な)色彩感覚にリンクする心理物理モデルは、100:1(6.67 EV)程度の低コントラスト(または低ダイナミックレンジ)の画像にのみ有効です。ディスプレイ参照ワークフローは、ダイナミックレンジが増加した(現在は12〜14 EV、または4096:1〜16384:1)現代のカメラで問題を増加させています。ダイナミックレンジ広いローライトの画像では、次のよう問題が予想されます。寄生的に生ずる陰影の交差、飽和または過飽和の問題、輝度を補正に伴い爆発する色、色を補正すると爆発する輝度などです。これらを調整するのは大変です。

シーン参照型として知られるリニアRGBワークフローは、RGB値は発光をエンコードすると仮定しています。 つまり、カメラのセンサーを介して3つの強度に減らされた光スペクトルは、比色計に過ぎません。物理的に意味のある方法でRGB値を操作し、光学フィルターの効果をデジタルで再現します。これにより、アルゴリズムを変更せずに(したがって、より具体的なHDR処理を行わずに)あらゆるダイナミックレンジに対応でき、より自然で予測可能な結果が得られます。

この新しいワークフローは、ー実際的な必要性から1990年代以降映画業界で既に採用されていますがー依然として写真の好奇心ひく厄介ものになっています。このワークフローは、ユーザーの画像編集推定の中心を色(心理的および知覚的)から光(物理的)からに移動するように習慣化させます。

しかし、心配は不要です。紙に絵を描く子供は、気づかずに物理的に意味のある方法で色を操作します。彼は、青と黄色を追加すると緑になることを知っています(絵画は減法合成であることに注意してください)。ただし、ディスプレイ関連のスペース(Gimpなど)で動作する描画ソフトウェアでは、白から青と黄色を差し引くと、黒になります。青と黄色を追加すると、白になります。黄色と青を追加して「緑の種類」(シアンに近い)を得るには、Kritaとその線形ペインティングスタイルを利用する必要があります。これは、方程式による色の知覚ないとしても、物理的に意味のある線形RGBワークフローが直観的に利用できる十分な証明です。

新しいフイルミック RGBモジュール

「フイルミックRGB」 は、ユーザーがパイプラインのRGB色空間を定義できる新しい内部API用に書き直された「フイルミック」(2.6 one)の新しいバージョンです。(さっき説明したように、「 input color profile」モジュールで設定します)。前のバージョンと同様に、その目的は、中間値(ラティチュードの範囲内)のコントラストを維持しながら、撮影シーン空間から得られたRGB値(潜在的に高いダイナミックレンジ)を画面空間(低いダイナミックレンジ)に変換することです。したがって、「S」トーンカーブの代わりに、ダイナミックレンジの圧縮または拡大の両方で機能するか、ダイナミックレンジを同一に保つことさえできます。

ついでに、クロミナンス保存モードによって引き起こされる過飽和(特に赤)などのいくつかのバグが修正され、人間工学に基づいたくつかの改善が行われました。

  1. コントロールはシーン/ルック/ディスプレイのタブに分かれており、モジュール画面の下側にはっきり表示されます。

  2. フィルミックトーンマッピングカーブは、フィルムの濃度反応曲線の動作を再現する新しく作られたスプラインです。前のバージョンよりも深く、色あせの少ない黒を提供し、中間調のローカルコントラストを改善し、どのようなパラメーターでも発振しません。

  3. フィルミックトーンマッピングカーブは、等価直線上のグレーポイントを維持するように自動的に調整され、曲線のより良い制御を可能にします。

  4. ラティツュードはダイナミックレンジの割合として定義され、白と黒の相対的な露出が変更された場合は調整が不要になりました。

  5. 色飽和低減カーブがグラフに表示されます。

  6. クロミナンス保存バグの影響を修正するために実装されたグローバル飽和設定は削除されました。カラーバランス内の彩度の使用を勧めます。

 

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フイルミックRGB

 

古いモード(最大RGB)に加えて、輝度Yとパワーノルムの2つの新しいクロミナンス保存モードが追加されました。これらは、最大RGBモードで青空が暗くなる場合など、色々なシナリオに適合できます。

新しい「トーンイコライザー」モジュール

「トーンイコライザー」はトーンマッピングとカーブの機能を使用しますが、アンセルアダムスの「ゾーンシステム」に従って(EVの)輝度の対数表現に適合させます。その関数は、ピクセルの元の輝度に応じて変化するパラメトリック露出補正値として単純に定義されます。トーンイコライザー」の動作は、パラメトリックモードでマージされ、異なる露出レベルを分離するように設定された「露光」モジュールの複数のインスタンスを使用すれば完全に再現できます。「 トーンイコライザー」はプロセスを高速化し、その一部を自動化しているだけです。

ハイファイアンプのオーディオイコライザーと同様に、0 EV(白)から-8 EV(黒)までの各露出帯域の選択的な露出補正をすばやく定義できるインターフェイスを提供します。露出補正は、ガイド付きフィルターによるコンテンツ抽出を実行し、画像の連続領域に同じ補正を適用して、ローカルコントラストを維持します。((ロジックは「シャドウとハイライト」モジュールに似ていますが、ガイド付きフィルターはコントラストの強いエッジでハローを生成しないように設計されています)。したがって、「トーンイコライザー」は、クロミナンスに影響を与えたりハローを作成したりすることなく、後で物理的に現実的な方法でシーンに再度明るさ編集するとを可能にします。

また、画像上にカーソルを移動すると、カーソルの下の領域の露出を表示し、「マウスホイール」 mouse wheelを介して対応する露出補正を直接調整できる対話型カーソルを提供して、ユーザーインタラクションを革新しています。

 

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トーンイコライザー


 

(ガイド付きフィルターに基づく)詳細保存モードは無効にできます。この場合、モジュールは、対数インターフェイスクロミナンス保存アルゴリズムを備えた単純なトーンカーブとして動作します。一連のガウス分布を使用した補間は、単調スプラインによる補間よりも滑らかで、「ベースカーブ」および「トーンカーブ」モジュールのキュービックスプラインによる補間よりもぶれが減ります。

(訳注:この部分も動作確認できていません。)

新しい「RGBカーブ」および 「RGBレベル」モジュール

これらの2つのモジュールは、古い「レベル」および「トーンカーブ」(RGBモードで使用)の代わりの機能として使用しますが、パイプラインのRGB空間で動作し、線形RGBフュージョンモードを使用する点が違います(古いモジュールはLabでマージされることに注意してください)。また、RGBチャンネルを個別に管理し、アタッチされたチャンネルモードで「フィルミックRGB」と同じクロミナンス保存ロジックを使用できます。

「RGBレベル」モジュールは、「カラーバランス」モジュールのスロープ、オフセット、冪乗モードとまったく同じアルゴリズムを使うことに注意してください。黒はオフセットに対応し、グレーは冪乗に対応し、白はスロープに対応します。本質的に変化するのはインターフェイスであり、「RGBレベル」は0%から100%の間の入力値を想定し、適用される変換のために16ビットLUTを事前に計算するという事実です(10年前に処理を加速するために導入された手法です。)一方、「カラーバランス」は0から無限大までの値を受け入れ、正確なピクセル値を直接計算します。