解説
今回はノイズ処理(プロファイル)の改善です。いままで市販のRAW現像とくらべ、フリーのソフトの最大の弱点がノイズ処理にあったと感じています。darktableの今回のノイズ低減の改善は、その面では非常に大きな進歩であるとおもいます。
以下に翻訳を示します。
ノイズリダクションの大幅な改善
ノイズ除去の品質を改善し、ユーザーの操作を快適にするために、ノイズ除去プロファイルが改善されました。
コンテキスト:プロファイルされたノイズ除去の仕組み
ノイズは、特定のピクセルに対してインコヒーレントなRGB値をランダムに生成する量子現象で、滑らかな表面上の画像を散乱させる明るいまたは色付きの「粒子」として知覚されます。ランダム現象に直面した場合の科学的な扱いは、ランダム現象をモデル化する統計分布を求めて、多数の法則を適用します。ランダム分布の必須パラメーターは平均と分散です。
分散は、平均値の周りの値のちらばりの尺度で、この場合、平均値と「通常の」ピクセル間の典型的な偏差に関する情報を与えます。このプロファイルは、分散を平均の関数として表します。
プロファイルは、光度に応じて変化するノイズ分散を表す小数のパラメーターです(この例では、チャネルごとおよびISO値ごとに2つ)。プロファイルはテスト画像の測定から構築されます(ぼけていない画像にはノイズがあることは確実ですから)。
通常のノイズ除去アルゴリズムは、分散が明度から独立であるという仮定を置いています。この仮定が当てはまらないデータにアルゴリズムを適用すると、ノイズが不均一に平滑化されます。一方、このプロファイルは、分散安定化変換(VST)と呼ばれるノイズ分散が一定になる画像生成変換を用います。その結果、暗い領域と明るい領域のノイズは同じ特性を持ち、ノイズ除去アルゴリズムはノイズ低減をはるかに容易に行えます。
ノイズ低減品質を改善するノイズ除去(プロファイル)の新機能
ダークテーブルが、各チャネルの2つのパラメーターとISO値を使用して、分散安定化変換を実行することを見てきました。
分散安定化変換をより一般化する重要な変更が導入されました。新しい分散安定化変換は、シャドウハイライトのノイズ除去量を制御する3番目のパラメーターを導入します。これにより、適切なバランスがとれます。理想的には、このパラメータはプロファイリング中に決定する必要がありますが、現時点では、プロファイルの2つの既知のパラメータからヒューリスティックに推定されます。手動で変更するインターフェイスもあります。このパラメーターは、Rawtherapeeノイズリダクションに存在するガンマパラメーターに対応することに注意してください。この分散安定化変換の変更は、バイアス低減パラメーターを導入する機会をも提供しました。これにより、(高ISOで定期的に発生する)影が紫色になる画像が修正されます。
新しいパラメーターが非局所平均アルゴリズムに追加されました。
追加された最初のパラメーターは散乱パラメーターです。これは、粒子の粗いノイズを効果的に減らします。 過去のアルゴリズムを使用したもの(左側)と、新しいアルゴリズムを使用したのもの(右側)が示されています。左側のノイズ低減では、非常に非常に醜い粗いノイズが作成されています。
(訳注:以下のサンプルは手持ちの画像に置き換えています。)
サンプル1は歩道の敷石です。右のノイズを減らした方は、敷石の隙間が見えなくなっています。
サンプル2には水面の反射です。ここでは、右の方が、水面の小さな波が再現されています。
もうひとつには「中央ピクセルの重み」 “central pixel weight”パラメーターが追加されました。 このパラメータは主に細部を制御します。このパラメータにより細部(および細かいノイズ)が復元できます。 パラメータを高い値に設定すると、モジュールは主に色ノイズを低減します。 この方法は、主に彩度ノイズを低減したい場合に推奨されます。次は意図的に少しやり過ぎた例で、上部では細部が失われ、下部では細部が強力に回復しています。
(訳注:以下のサンプルは手持ちの画像に置き換えています。)
サンプル3は夜の塔の写真で、右の処理した方が、屋根の下の細部構造がよく見えます。
サンプル4は夜の商店です。格子の部分で、右の方が細部が確認できるようになっています。
訳者補足:ノイズ処理については、比較して効果の差がでるサンプルを探すのがやっとの状態で、適切な例とはなりませんでした。
新しいパラメーターを追加すると、パラメーターが増えてかなり複雑なインターフェースになります。
そのため、プロファイルに基づいて独自のパラメータの大部分を自動設定する「自動」モードが追加されました。 このモードには、提案された自動設定を調整するスライダーがあります。このスラスライダーの値は ノイズ除去が不十分な場合は大きくし、ローカルコントラストが滑ら過ぎる場合は小さくします。 この設定は、特に画像が大幅に露出不足の場合には必要になります。
このモードで値を変更して手動モードに戻ると、スライダーは直接変更されたように更新されています。
さらに、モジュールのプロファイルに従いデフォルト設定が自動的に調整されるため、ワンクリックでモジュールを有効化してノイズを低減できます。