ミームの研究(17)穴とバケツ

(穴とバケツを取り違えては、問題は解決できません)

 

1)日本丸の現状

 

2024年の日本丸(日本経済)の状況は悲惨です。

 

IMD(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)は、「世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)」の2023年版を6月20日に公表しました。日本の競争力総合順位は過去最低の35位でした。



アジア・太平洋地域の順位は以下です。

 

4位 シンガポール

6位 台湾

7位 香港

21位 中国

24位 オーストラリア

27位 マレーシア

28位 韓国

30位 タイ

31位 ニュージーランド

34位 インドネシア

35位 日本

 

<< 引用文献

IMD「世界競争力年鑑」2023年版からみる日本の競争力 第1回:データ解説編 2023/10/24 MRI

https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20231024.html

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スイスに拠点を置くビジネススクール・IMD(International Institute for Management Development) が2023年9月21日、「世界人材ランキング2023」を発表しました。

 

調査対象の64カ国・地域のうち、日本は過去最低だった2022年調査から、さらに2ランク後退し43位という厳しい結果となった。2005年の調査開始以降で過去最悪の順位でした。

 

<< 引用文献

世界人材ランキング、日本は“過去最悪43位”に転落…「管理職の国際経験」は64カ国で最下位 2023/09/21 Business insider

https://www.businessinsider.jp/post-275601 

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ビジネススクールINSEAD(インシアード)が7日発表した2023年版の「世界人材競争力指数」で、日本は134カ国中26位と、調査を始めた13年以来で初めて上位25カ国から脱落しました。韓国が日本を逆転して24位でした。

<< 引用文献

人材競争力、日本25位内から脱落 仏調査で韓国が逆転 2023/11/07 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM074QB0X01C23A1000000/

 

The Global Talent Competitiveness Index 2023

https://www.insead.edu/system/files/2023-11/gtci-2023-report.pdf

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これらのランキングをオリンピックのメダルの国別順位と見るべきではありません。

 

因果モデルで考えれば、国際競争力のある企業が活躍して、貿易黒字を生み出すことで、経済が成長します。内需も大切ですが、日本は資源がないので、貿易赤字になって、貿易黒字で、外貨を稼げなくなると経済が止まります。

 

因果モデルで考えれば、競争力は、将来の経済成長や貿易黒字の原因になります。

 

たとえば、競争力の順位でみれば、「4位 シンガポール、6位 台湾、7位 香港、21位 中国、24位 オーストラリア、27位 マレーシア、28位 韓国、30位 タイ、31位 ニュージーランド、34位 インドネシア」の企業と日本企業が競争になった場合に、日本企業が勝ち残れる可能性が低いことを意味します。

 

競争力は、国別なので、企業単位でみれば、バラツキがあります。企業競争力の順位は、国のランクとはずれます。半導体などの電気製品では、日本企業は、既に、台湾、中国、韓国の企業に勝てなくなっています。

 

競争力の順位は、この競合企業のリストに、今後、マレーシア、タイ、インドネシアの企業が参入する可能性が高いことを示しています。

 

今回は、引用しませんが、競争力ランキングに似たものに大学ランキングがあります。教育の結果、人材が育成できて、その人材が、競争力ランキングに反映されます。

 

こうした因果モデルで考えれば、大学のランキングが下がり続ければ、10年以上のタイムラグで、競争力ランキングが低下し、更に、5年程度のライムラグで、企業経営の結果に反映されます。

 

日本丸は、フナ底の穴があいて、沈みかけているように見えます。

 

株価や企業利益は、因果モデルの結果です。

 

入手可能なデータには、因果モデルの原因のデータと因果モデルの結果のデータがあります。

 

科学は、因果モデルを使うので、データの中から、原因に相当する部分を抽出します。

 

原因が変化すれば、結果は変化します。

 

因果モデルで考えれば、日本経済は中期的には悪くなると予測できます。

 

それを止めるには、原因である人材の育成、生産性の向上を図るしか方法がありません。

 

政府は、ゾンビ企業に、補助や支援をしています。

 

しかし、ゾンビ企業は、生産性が低いためゾンビになったのです。

 

ゾンビ企業に税金を投入すれば、税金が無駄になるだけでなく、生産性の向上が阻害されて、日本の競争力を低下させます。

 

IMD「世界競争力年鑑」の日本の競争力は、毎年低下していますが、これは、政府のゾンビ企業の保護政策が効果を発揮した結果でもあります。

 

人材の育成では、2000年頃、分数のできない大学生が問題になりました。つまり、日本の大学の人材育成には問題があるという指摘です。

 

しかし、大学改革は、放置され、政府は、定員割れ赤字の大学(ゾンビ大学)に対して、補助を続けています。

 

政策は、十分すぎる効果をあげています。

 

2)バケツの話

 

フナ底に穴のあいた船は、沈み始めます。

 

この時に、バケツで水を汲みだしても、沈没をさけることはできません。

 

前節の例でいえば、フナ底の穴は、人材の育成と生産性の向上になります。

 

問題が発生した場合に、問題を解決するためには、次の条件が必要です。

 

第1に、原因をさがして、原因の対策を講ずるべきです、

 

第2に、対策の効果を量的に評価すべきです。

 

第3に、複数の対策が考えられる場合には、対策の費用対効果を考えて、効率的な対策を選択すべきです。

 

第4に、複数の対策が同時並行で行われる場合には、総合的な効果を評価すべきです。

 

第5に、対策の評価を行う利害関係のない第3者組織があるべきです。

 

3)穴を塞がない理由

 

フナ底にあいた穴を塞ぐと不都合があります。

 

フナ底にあいた穴を塞ぐと、バケツが売れなくなります。

 

バケツの製造会社が、政治献金をしていた場合、利権の政治では、建前の目的は、日本丸の沈没を回避することですが、本音の目的は、補助金(税金)でバケツを購入して、バケツの販売数をふやすことです。

 

バケツが売れなくなると困る(選挙で当選できなくなる)ので、フナ底の穴の話はタブーです。

 

科学のミームでは、フナ底の穴を塞ぐ(人材の育成、生産性の向上を図る)ことが目的であり、人材と生産性に評価関数が設定されます。

 

政治家は、法度制度(権威)のミームで行動しています。

 

学歴詐称問題が発生する原因は、政治権力の根源(ミーム)が権威にあるためです。

 

政府は、問題があれば、審議会に丸投げしますが、審議会もまた、法度制度(権威)のミームで行動しています。

 

法度制度(権威)のミームは、科学のミームではなく、経験主義のミームでもあります。

 

ゆとり教育の時の審議会のメンバーが、「自分の経験では、2方程式が必要になったことはない」と主張しました。その結果、円周率は、3になってしまいました。

 

「自分の経験では」は、経験主義で、科学のミームではありません。

 

審議会の検討事項は、フナ底の穴を塞ぐことではなく、バケツの購入になっています。

 

審議会の議論は、補助金で、何色のバケツを購入すべきかというレベルの議論です。

 

マイナンバーカードは、バケツに過ぎません。

 

マイナンバーカードで、フナ底の穴を塞ぐ(生産性の向上を図る)ことができるのであれば、生産性の向上に対する効果が説明できるはずです。

 

フナ底の穴を塞ぐことは一度にできないのであれば、ロードマップが示されているはずです。

 

恐らく、マイナンバーカードは、バケツの1種に過ぎないと思われます。

 

マイナンバーカードの目的が、フナ底の穴を塞ぐ(生産性の向上を図る)ことにあるのであれば、マイナンバーカードによって、日本の生産性が何時までに、外国の生産性を上回るのかというロードマップが必須です。

 

マイナンバーカードによる生産性の向上効果が、海外のDXシステムより劣る場合、日本企業には、競争力がなくなります。

 

日本経済が、市場原理に基づいていれば、「日本の生産性が、海外の生産性を上回る」ことは、輸出の必須条件です。

 

政府は、この点が、気にならないので、政府の政策は、中抜き経済を目指していることがわかります。

 

問題の原因はミームにあります。

 

ミームの違う人とは相互理解は不可能です。

 

問題解決には、科学のミームが必要です。