トレンド予測の間違い

(トレンド予測の問題点の例を示します)

 

1)人手不足の話

 

ここのところ、人手不足の話がよく出てきます。

 

トレンドを描いて、何年問題という表現をすることもあります。

 

その根拠はトレンド予測です。

 

トレンド予測は、因果モデルではないので、正確には、帰納法ではありませんが、因果モデルを真面目に検討されることは少なく、トレンド予測が、多く用いられています。

 

そこで、デザイン思考で考える予測とトレンド予測が異なる例を示します。

 

2)プログラマーの不足問題

 

将来、情報化の進展によって、プログラマーが不足するという予測があります。

 

野口 悠紀雄氏は、「AIは、パラダイムの転換を引き起こし、アメリカの産業構造を大きく変えようとしている」といいます。

<< 引用文献

日本の半導体産業「世界から後れる」歴史的事情 日本の半導体産業は世界から取り残されている 2024/03/17 東洋経済 野口 悠紀雄

https://toyokeizai.net/articles/-/740774

>>

 

情報化の要は、AIにシフトしたと言えます。

 

つまり、産業構造は、プログラマーがAIをつくれるか否かで、変わってしまいます。



ここに、2人のプログラマーがいて、AI1とAI2を開発したと仮定します。これは、デザイン思考です。

 

AI1とAI2の性能には、差が付きます。そこで、AI1の能力が、AI2の能力より大きいと仮定します。

 

次に、AI1とAI2の市場価値(利用価格)を考えます。

 

その前に、トースターのような機械の性能と価格を復習します。

 

トースター1は、10分間で、食パン10枚を焼けると仮定します。

 

トースター2は、10分間で、食パン5枚を焼けると仮定します。

 

この場合、トースター1の価格は、トースター2の価格の2倍が適正と思われます。

 

性能の悪い機械は、性能に応じた価格を設定すれば、売ることができます。

 

さて、AIに戻ります。

 

トースターに準じて考えれば、AI1の処理能力が、AI2の処理能力の2倍であれば、価格も2倍になるはずです。

 

しかし、このルールは、ハードウェアのGPU性能にはあてはまりますが、ソフトウェアには、あてはまりません。

 

現在、AIは、薬の開発に用いられています。AIは、どのような分子構造が開発する薬の候補になるかを、提示します。

 

この場合、性能の悪いAIを使うことはありません。AIの性能は、薬の開発費を大きく左右します。

 

なので、ベストな性能のAIを使わなければなりません。

 

企業1が、AI1を使い、企業2が、AI2を使ったと仮定します。

 

その場合、新薬の開発に先にたどり着く企業は、企業1になります。

 

先行企業が、特許をとってしまえば、後発企業の研究投資は、無駄になります。

 

これから、ベストな性能のAIでなければ、市場価値がないことがわかります。

 

現在の日本では、高度人材に、能力に応じたジョブと給与を提示できていません。

 

頭脳流出が起こっています。

 

これでは、日本国内で、ベストな性能のAIが開発できる可能性はないでしょう。

 

日本企業は、GAFAM以上の給与を提示して、高度人材を引き抜けば、逆転できるかもしれませんが、現在は、春闘と初任給の話をしていますので、問題外です。

 

現在のAIでも簡単なプログラムをつくることができます。

 

今後、AIが進めば、中級レベル以下のプログラマーの仕事は、AIが代行するはずです。

 

こう考えると、将来起こるシナリオは、プログラマーの人余りになります。

 

一方、日本企業は、プログラマーの仕事を代行するAIの使用料を、アメリカや中国のAI企業に支払うことになります。

 

もっともそれは、貿易黒字があって、外国企業に支払うお金がある場合です。

 

貿易黒字がなくなれば、日本企業は、DXから取り残されて、大企業は、消滅します。

 

経済は、開発途上国経済になります。

 

以上のシナリオは仮説で、検証はされていません。

 

読者が、気付いた点があれば、シナリオを編集してもらってかまいません。

 

重要なことは、トレンド予測が、このシナリオよりも、高い確率で、未来を予測できるという根拠はないという点にあります。

 

3)学問の迷走

 

日本の多くの学会では、帰納法とトレンド予測は、過去のデータに基づくので科学であって、デザイン思考が科学ではないという妄想にとらわれています。

 

これは、どこかに確かなものがあって、確かなものでなければ、学問ではないという妄想です。

 

研究者は、査読付きの論文がないと失業しますので、帰納法とトレンド予測をつかった論文ばかりを作成しています。

 

その結果、デザイン思考の出来る研究者は、絶滅危惧種になっています。

 

論理展開に間違いがなければ、結果の正しさは問題にしないという基準がないとデザイン思考は、論文になりません。

 

相対性理論の結果の正しさが検証されるには、時間がかかりましたが、論文は、結果の正しさが判明する前に評価されています。

 

仮に、相対性理論の結果が間違っていても、論文を取り下げる必要はありません。

 

論理展開に間違いがなければ、結果の正しさは問題にしないという基準は、物理学では守られtいます。

 

これは、科学哲学やデータサイエンスの基本ですが、日本の多くの学会では、科学哲学やデータサイエンスは、自らの学問分野とは、別の学問分野であるとして、基本ルールを無視して、科学的に間違った、伝統ルール(帰納法)を採用しています。

 

落ちこぼれ問題の専門家は、落ちこぼれの実態を調査して、帰納法で、問題の傾向を把握して論文にします。しかし、そこには、デザイン思考がありませんので、因果モデルがなく、問題解決ができません。

 

マスコミが、専門家に、「どうしたら問題を解決できると思いますか」という質問をすることがあります。

 

そのインタビューに対する解答は、因果を無視したまったくの思いつきになっていますが、これは、必然的な結果です。