(日本ではAIが普及することは困難です)
1)AIが仕事を奪う話
欧米では、AIが、人間の仕事に入れ替わっています。
欧米では、近い将来AIが人間の仕事を奪うという予測をしている学者が多くいます。
日本の学者には、横の物を縦にする(英文を日本語にする)ビジネスをしている人がいます。
こうした人たちは、日本でも、近い将来AIが人間の仕事を奪うという予測(欧米の予測という前例のコピー)をしています。
こうした前例主義は、帰納法であり、デザイン思考ではありません。
「日本でも、近い将来AIが人間の仕事を奪う」ためには、日本で使えるAIをデザインして、実装する必要があります。
ところが、デザイン思考で、実装の検討をしている人は、ほとんど、見当たりません。
一般的に言って、日本では、帰納法(前例主義とトレンド予測を含む)以外の推論をしている人はほとんどいません。
そこで、デザイン思考で、「日本でも、近い将来AIが人間の仕事を奪う」可能性を考えます。
2)物流問題
読売新聞の報道の一部を引用します。
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政府は2024年2月16日、トラック運転手の労働時間短縮で輸送力不足が懸念される「物流2024年問題」の対策指針となる中長期計画をまとめた。運転手の荷待ちや荷役の時間を30年度までに1人あたり年間125時間削減するほか、トラックの積載率を高める取り組みを強化し、需要に対応する輸送力を確保する。また、運転手の待遇を改善するため、輸送運賃の水準を引き上げて賃金が継続的に上がる環境も整える。
政府は大手の荷主や物流事業者にこうした取り組みを義務づけるため、今国会に物流総合効率化法など物流関連2法の改正案を提出した。事業者側は荷待ち時間の削減や積載率を高めるための計画を策定し、定期的に国に報告する義務を負う内容となっている。
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<< 引用文献
トラック運転手の荷待ち・荷役、年125時間削減へ…物流2024年問題で政府が対策指針 2024/02/16 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240216-OYT1T50153/
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政府が対策指針を実施した場合、日本の物流は完全に破壊されます。
これは、数学の待ち行列問題を無視した対策であるためです。
物流関連2法の改正案を作成した官僚には、待ち行列問題を理解できる人がいないことになります。
数学的に解決不可能な問題をゴリ押しすれば、悲惨な未来がまっています。
この政策には、エネルギー問題の解決に永久機関をつくることができると主張するレベルの科学のリテラシーしかありません。
3)カーナビによる物流改善
カーナビを使えば、以前より少ない時間で目的地に到達することができるようになりました。
つまり、カーナビは物流を改善しています。
カーナビが物流を改善できる理由を、データサイエンスで説明すれば、データとアルゴリズムの改善です。
ここではデータには、学習用のデータとリアルタイムのデータの2種類があります。
アルゴリズムは、機械学習を使うこともできますし、最短経路の探索アルゴリズムを使うこともできます。アルゴリズムの評価には、学習用のデータが必要です。
最古のカーナビは、最短経路の探索アルゴリズムを使っていたと思われますが、現在のカーナビは条件によって、アルゴリズムを切り替えていると思われます。
4)学習データの課題
物流改善法案では、「事業者側は荷待ち時間の削減や積載率を高めるための計画を策定」します。
計画には、リアルタイムのデータは反映できません。
最古のカーナビは、リアルタイムのデータを反映しない最短経路の探索アルゴリズムのみを使っていました。
このレベルでは、物流が破壊されます。
物流企業は、計画をそのまま実施、あるいは、計画と実際の運用を本音と建前で使い分けるかの選択をするでしょう。
GPSの出現によって、世界座標系は、(X,Y,Z,t、V)になりました。
全てのデータVには、X=東経、Y=北緯、Z=標高、t=時間、V=IDの属性を持つことになりました。
VV=自動車のID、VC=荷物のID、VD=ドラーバーのIDとすれば、物流の数学的な定式化ができます。
自動車、荷物、ドライバーにGPSを付けてデータを採れば、学習用のデータを得ることができます。
荷待ち時間の削減と積載率を高めることは、トレードオフの関係にあります。
つまり、評価関数は、重み付荷待ち時間と重み付き積載率の和を最少化するように別途作成する必要があります。
学習データが得られれば、AIが、物流を改善することができます。
物流問題対策をみれば、学習データがないので、AIが、人間の仕事を奪うことは当面できないことがわかります。
AIは、デジタルの学習データが無ければつくることができません。
5)日本では学習データがないわけ
欧米のように、ブリーフの固定化に、科学の方法を使っている場合には、データがあります。
日本では、ブリーフの固定化に、権威の方法、固執の方法、形而上学といった科学の方法以外の手法を使っています。
この場合、データをとると、権威の方法、固執の方法、形而上学といった科学の方法以外の手法の問題点が表に出てしまいます。
なので、データをとりません。
典型例は、履修主義に見られます。
履修主義は、習得主義と異なり、教育効果の測定をしません。
大学教育の目的は、卒業証書という権威を作成することです。
欧米の大学では、2割くらいは卒業できません。
厳しい学科であれば、半分しか卒業できません。
習得できていない学生を卒業させれば、卒業生全体の信頼性が下がり、卒業証書の価値が下がってしまいますので、それを避けます。
文部科学省は、データに基づく教育をする大学を追放しています。
学生は、習得できなくとも卒業できることを知っているので、勉強はしません。
欧米の大学生と比べると学習量に圧倒的な差があります。
欧米どころか、最近では、途上国の大学生に勝てません。
大学ランキングで見れば、地方の国立大学のランキングは、発展途上国の大学と同じレベルにあります。