(民主党政権はどこで躓いたかを考えます)
1)議員立法の課題
選挙によって、多数派政党が入れ替わらない限り、政治資金規正法が、まともに、改正されることは困難です。
しかし、選挙によって、多数派政党が入れ替わっても、多数派政党が、悪法の改正プロセスをもっていなければ、悪法の改正はできません。
ここで、三権分立をおさらいすれば、国会(立法)は、法律(事業計画)をつくります。
行政は、法律(事業計画)を実施します。法律と行政に、問題がないかを司法がチェックします。
つまり、国会議員の仕事は、法律と予算を作ることです。
予算の細目は、行政が作りますが、大くくりについては、国会の権限になります。
ウクライナ支援の原案は、バイデン大統領が作成していますが、議会の承認が必要です。
国庫から支出を伴う案件は、財産権を制限して課税した税収を使うので、議会の承認が必要です。
これは、欧州議会でも、同じです。
日本の法律は、憲法の人権に抵触している可能性があります。
民主党政権が、仮に、アメリカの議会流の政治をしたと仮定します。
その場合には、予算の執行を伴う法案を作成します。
法案に従って、ジョブディスクリプションを作成します。
このジョブディスクリプションに従って、ジョブ型雇用で、公務員を雇って、ジョブを実行します。
このプロセスには、大きな障害はありません。
しかし、実態は違いました。
民主党政権は、予算書をつくることができず、行政仕分けという魔女狩りに突入しました。
国会議員は、予算書を作ることができません。
それどころか、国会議員は、法律を作ることができません。
国会は立法府であり、法律を作ることが仕事です。
有権者は、法律を作る、あるいは、実態に合わない法律を改正するために、国会議員を選んでいるはずです。
その国会議員が、法律を作る能力がないのですから、これはブラックジョークです。
国会には、議員立法はほとんどありません。
法案は、官僚が作り、国会議員はそれを承認するだけです。
国会議員が法律を作れませんので、国会討議には、法律の文面が出てきません。
国会議員が法律を作るのであれば、国会討議は、どのような法律を作るべきかという議論になるはずです。
これは、民主主義国の国会の基本です。
日本の国会では、三権分立が機能していません。
2)内閣法制局
国会議員が、議員立法を提案すると、内閣法制局が、その法案は、既存の法律とかち合うので、ダメだといいます。
内閣法制局は、明治時代から続く法律を詳しく知っていて、法律の継続性が大切であると主張します。
この主張が正しいとすれば、議員立法はできなくなります。
内閣法制局には、権威があります。
また、専門知識では、内閣法制局にかない議員はいませんので、議員立法はできなくなります。
しかし、最近、筆者は、「明治時代から続く法律を詳しく知っていて、法律の継続性が大切」という主張は、人権侵害であると考えています。
第1の理由は、新憲法です。
「男女雇用機会均等法」という法律があります。1972年に施行された「勤労婦人福祉法」が1986年に題名を含めて改正されたものです。
戦後新憲法が出来た時に、国民主権になりましたので、明治憲法下の人権無視の法律の継続性を取り除いて、全ての法律について、人権の問題がないように改正する必要がありました。
この改正が済んでいれば、「勤労婦人福祉法」も、「男女雇用機会均等法」も不要だったはずです。
第2の理由は、AIとビッグデータです。
内閣法制局の専門家の知識は、国会議員の知識を上回ることはありません。
しかし、人間の脳のメモリーの制約から、内閣法制局の専門家の知識が、AIに勝てることはありません。
つまり、内閣法制局のあるべき仕事は、国会議員の議員立法を支援するChatGPTのようなソフト(法案作成支援AI)を提供することになります。
それでは、法案作成AIを作ることは可能でしょうか。
データサイエンティストには、それが不可能なことは自明です。
これは、AIの問題ではありません。
法律の問題です。現状では、ある法律は、明治憲法の人権無視になっています。別の法律は、人権に基づいています。
判例を学習データに、生成AIをつくっても、もとの判例がダブルスタンダードであれば、AIがまともな回答をだすことはできません。
これは、恐ろしい状況です。
現行の全ての法律を見直して、人権(新憲法)に矛盾がないように整理して、書き直さなければ、DXができないことを意味しています。
日本は、先進国の中で、突出して、DXが遅れています。
その原因の一つに、矛盾した法体系が、考えられるということです。
このままで行くと、日本は、IT後進国に墜落していきます。
10年もすれば、法律をダイナミックに書き換える能力の高い発展途上国(例えば、ベトナム、マレーシア、インドネシア)が、日本よりIT大国になって、一人あたりGDPでうわまわる可能性もあります。