3つ山で考える

(分布を考えることがデザイン思考のスタートです)

 

1)平均値の弊害

 

拡張された過疎問題は、弱者を助ける論理になります。

 

これは、分布の中央、下側、上側の3箇所に代表値を設定して検討する3つ山の分布で言えば、弱者(下位の山)と強者(上位の山)の議論です。一方で問題にする数値は平均値で、中央の山に相当します。

 

拡張された過疎問題の政策と平均値の間には関係がありません。

 

サンプリングバイアスを使って、いくらでも偽装することが可能です。

 

もちろん、エビデンスを計測して、実分布の変化を問題にすれば、拡張された過疎問題はできなくなります。

 

なので、エビデンスは計測しない、DXは進めないことが必須になります。

 

2)ジョブ型雇用の賃金

 

年功型雇用をしている企業で、ジョブ型採用をします課長や部長になれるまでの年限を短縮しますと言って、人材募集をしている企業があります。

 

しかし、これは、ジョブ型雇用ではなく、年功型雇用です。

 

これは、給与体系に限りませんが、「あるルール(政策)を採用する場合に、そのルールが国際基準で通用するか」という判断基準(国際ルール基準)で、ルールの妥当性をテストできます。国際ルール基準の一般論の詳細は、別途論じることにします。

 

ここでは、ジョブ型雇用の賃金が、国際ルール基準では、どうなるかを3つ山の分布で考えてみます。

 

上位の山、中位の山、下位の山の分布は、降順のデータを並べて、上位から、0-20%、20-80%、80-100%のデータに分けて、代表値は平均値を使います。

 

これは、パレート分布で使われる手法です。

 

パレート分布では、上位の20%が、生産性の80%を生み出し、残りの80%が20%の利益を生み出します。

 

この数字をつかって、給与を計算すると、上位の給与は、4ポイント(=80/20)、中位と下位の給与は、0.25ポイント(=20/80)になります。

 

上位の20%は、中位と下位の16倍の給与を支払うべきになります。

 

簡単にいえば、リスキリングして、上位20%に入れば、給与は、16倍になるということです。

 

GAFAMの給与格差はこれより大きいと思います。

 

IT人材の場合、プログラムができる人の割合は5から10%です。

 

競争力のあるコーディングのできる人の割合は2%程度と思われます。

 

ITによるプログラム作成は、5から10%レベルのプログラマを不用にするかもしれませんが、競争力のあるコーディングのできる人プロフラマには影響しません。

 

年功型雇用企業で見られるように、誰もがIT研修をすることは、経済価値を生み出しません。

 

こうしたIT研修は、3つ山の分布を無視した発想で、分布のある変数が理解できていないために起こります。

 

IT研修の前に、科学的な推論の方法をマスターすべきです。

上位2%の人が働きやすい企業以外の企業は、情報化社会では取り残されます。

 

ここでは、成長を議論しているのであって、分配を議論しているのではありません。

 

経済成長を最大化しないと、分配の原資ができません。

 

人権宣言は、能力に応じた所得を主張しています。

 

人権を守って、経済成長を最大化するためには、給与格差がなければ、人権無視の社会主義になります。

 

能力を発揮する機会を確保するために、所得の上位の山から、所得の下位の山への所得移転は必要です。しかし、これは、財産権の侵害に当たりますので、公平で透明性のあるルールを使わないと利権が暗躍します。

 

拡張された過疎問題は、この部分に当たります。

 

例えば、土地に対する私権(財産権)の制限は、ほとんど行なわれていません。これは、透明性のある公平なルールではありません。

 

現行の法律に合ってれば、人権を無視して何でもできるという実定法主義は、憲法の人権に違反しています。

 

3)株式会社の基本

 

株式会社は、資本主義のシステムです。

 

株式会社は、株主からあずかった資金を最大限に活用するという契約の元に成立しています。

 

最近、株式公開から撤退する企業が続出しています。

 

これは、株式会社としての経営ルールが守られていなかったことを意味しています。

 

株式会社は、永久に続く訳ではありませんので、企業年金には無理があります。

 

無理をして企業年金を継続させると、拡張された過疎問題が、拡散してしまい生産性が改善しなくなります。

 

日本企業の労働生産性は先進国の中で最低レベル(結果)なので、その原因を考える必要があります。

 

ここで、原因と想定される条件について、with-without比較をすることになります。

 

ジョブ型雇用のwithとジョブ型雇用のwithout(年功型雇用)を比べれば、労働市場のあるジョブ型雇用であれば、労働生産性の高い(賃金の高い)企業に、労働移動が起きますので、労働生産性があがります。

 

ジョブ型雇用のwithout(年功型雇用)では、労働市場がない(職業選択の自由がない)ので、労働生産性はあがりません。

 

経営者は、解雇規制があり、年功型雇用から抜け出せないと考えたと仮定します。

 

その場合には、経営者の出来る選択肢からは、高度人材をつかったIT化の推進、DXは外れます。解雇規制にかからない非正規雇用の拡大、円安による実質賃金の低下が、可能な経営の選択肢になります。

 

この推論には、間違いがあるかも知れませんが、アブダクションを使った因果モデルで推論しないと、問題の所在(原因)がわかりません。