ジョブ型雇用の査定の難しさ
(年功型雇用に慣れて、ジョブ型に対するバイアスがあります)
2022/08/21の日経新聞に、「企業の博士採用10年で2割増」という記事が出ていました。
筆者が、ジョブ型雇用といっても、正しく理解されない可能性が高いことを、この記事を例に説明します。 要点は以下です。
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医療、公務を除いた、民間企業への博士取得者の採用数は、2011年の2540人から2021年の3028人に19%増えています。2021年の比率は、工学系が40%、理学系が29%、人文科学系が7.6%になっています。
年収1000万円以上は15%、300から600万円が4割、200万以下が2割です。
米国の博士課程修了者の年収の中央値は物理学で、1460万円、生命科学で1330万円です。
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日経新聞の記事に間違いはありませんが、この記事をみれば。日本の博士課程修了者で、ジョブ型雇用で、専門の能力を元に採用された人は、15%(1000万円)以上しかいないことになります。600から1000万円の比率がかかれていませんが、200から300万円と合わせて25%ですから、15から20%くらいと思われます。この分を足しても3割程度にしかなりません。
85%は大学が、十分な能力がないにもかかわらず、学位を出したか、企業がジョブ型採用をしていないと思われます。
日本の大学、学校は、理解できていなくとも、卒業させる、カリキュラムが全く時代遅れで、役に立たないことが多くあります。ジョブ型雇用で、給与はなにができるかに対して支払われますので、博士の学位を持っていることを基準に統計をとっても、欧米とは比較できません。
つまり、欧米と比較するには、学位を持っている人の何%ではなく、能力のある人の何%がいくらの給与で就職できたかを見る必要があります。
博士課程卒業者は、年功型雇用では、学部卒より、マイナスの給与になります。このため、就職できなかった学生が進学することも起こります。
ジョブ型雇用をするには、企業側も、博士の学位ではなく、どのような能力のある人をもとめているかを明示して、面接で、学生の能力を判断して、給与を査定する必要があります。
簡単にいえば、野球やサッカーの選手のスカウトと同じレベルの能力が求められます。
それから、日経新聞には書かれていませんが、博士課程のトップの学生は、アメリカの企業が外資の日本法人に流れていると思っています。
このように考えると、日本企業が、ジョブ型雇用という看板を出せば、ジョブ型雇用ができる訳ではありません。
作曲家のストラビンスキーは、1959年に来日して、テープを聴き、日本国内では、「音楽以前」などと酷評されていた武満を絶賛しています。武満の評価はこれから、定まったと言われています。
他の人の評価に左右されないで、自分の評価に自信が持てる日本人はどのくらいいるのでしょうか。しかし、この点をクリアしないとジョブ型雇用はままなりません。