第3の道

(保守と革新について整理します)

1)保守と革新

 

英米で見る政治の基本は、保守と革新です。

 

成長と分配の視点でみれば、成長優先が保守(リバタリアン)で、分配優先が、革新です。

 

マルクス的な視点で考えれば、革新の圧勝に思われますが、分配を優先しすぎると、分配の原資がなくなってしまうので、保守が力をつけます。

 

サッチャー政権がその例です。

 

逆に、原資があるのに、分配が不十分であると考える人が増えれば、革新が力をつけます。

 

こうして、保守と革新の間で、政治が変動します。

 

ところで、自民党は、配分優先なので、保守政党ではありません。

 

野党と自民党の間を移動する議員もいますが、これは、双方とも、革新であるため、主義の違いがないためです。

 

つまり、日本には、保守政党はなく、英米の2大政党の枠組みがなりたっていません。

 

そこで、疑問は、「何故、日本では、2大政党ができないか」という点になります。

 

2)3種類の革新

 

英米の革新は、人権思想に基づく、分配をします。

 

これは、機会の平等のための分配です。

 

特に、アメリカでは、結果の平等のための分配は、社会主義であるとして、退けられます。

 

バイデン政権が主張して、実現できなった公約に、大学のローンの返済免除があります。

 

ここには、大学のローンを支払えるか否かで、機会の平等が失われることは、貧困の再生産になり、人権問題であるという視点があります。

 

これとは違って、日本の分配には、2つの種類があります。

 

第1は、結果の平等のための分配です。

 

ガソリン価格の高騰に対する補助は、これに近いです。

 

しかし、課税して、キャッシュバックするのであれば、最初から、減税をすべきです。

 

トリガー条項が実施されませんので、ガソリン価格の高騰に対する補助の目的は、結果の平等のための分配以外の意図があると思われます。

 

年金に対する税の補助も、一見すると結果の平等のための分配に見えますが、実体は世代間の所得移転になっています。

このように、一見する結果の平等のための分配に見える政策は、単純に考えれば、減税をすれば良いはずなので、裏の意図があると思われます。

 

低所得層の実効税率は低く設定されていますが、結果の平等のための分配には、複数のル―トがあり、低所得層の実効税率は低く設定する方法が妥当であるという根拠は示されていません。例えば、英国であれば、低所得層の実効税率は日本より高く設定されています。

 

日本では、赤字企業の実効税率は低く設定されていますので、低所得層の実効税率が低く設定されている理由は、赤字企業の実効税率を低く設定するための予防線にも見えます。

 

結果の平等のための分配の制度の透明性が高くなると困る人がいるように見えます。

 

第2は、「都市から地方に、税を使った公共事業を通じて所得移転」のような特定の受益者がいる分配です。

 

これは、利権に基づくキャッシュバックシステムになります。

 

この利権に基づくキャッシュバックシステムは合法的に構築されています。

 

この合法的な利権に基づくキャッシュバックシステムは、日本以外の先進国にはないと思います。

 

「利権に基づくキャッシュバックシステム」を合法的に温存させるために必要な条件は以下です。

 

(C1)科学を無視した権威の方法

 

(C2)新憲法の人権を無視した実定法解釈

 

(C3)経済成長(科学的合理性)よりも、形式上の弱者救済を優先する過疎問題

 

(C4)年功型雇用と天下り

 

補足します。

 

岸田首相は、2月6日、国民1人に月額平均500円弱を「子ども・子育て支援金」として公的医療保険料に上乗せすると明らかにしました。岸田首相は「500円は、子育て増税には当たらない」と強調しています。

 

「(C1)科学を無視した権威の方法」によれば、権威者である首相の発言に意味があるのであって、説明の内容や論理は2次的などうでもよいことになります。

 

公的医療保険料に上乗せでは、明らかに、財産権の侵害であり、国会審議を通じて税として徴収される以外の方法は、人権無視ですが、「(C2)新憲法の人権を無視した実定法解釈」によって問題にはなりません。

 

パーティ券利益に課税しないことは、公職選挙法では合法かも知れませんが、新憲法の法のもとの平等(人権)に反します。この場合には、個別の法律を変更するか、個別の法律が無効になるはずです。

 

過疎問題は、「都市から地方に、税を使った公共事業を通じて所得移転」のような特定の受益者がいる分配を生み出しました。

 

これは、表向きは弱者救済ですが、その実態は、政治献金の多い団体へのキャッシュバックになっています。

 

これが、過疎問題の本質ですが、過疎問題は拡張されて、公共事業以外にも拡大されています。この点については、別途、補足してみます。特に、筆者には、高等教育の無償化は、過疎問題になっているように見えます。

 

過疎問題(過疎を通じた利権システム)については、伊藤博敏氏が、詳しく論じています。



<< 参考文献

派閥存続で「ポスト岸田」を狙う茂木氏に思い出して欲しい「罪万死に値する」発言…莫大なカネを集めた元首相の悔悟 2024/02/08 現代ビジネス 伊藤博

https://gendai.media/articles/-/123999?imp=0

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最後に、「(C4)年功型雇用と天下り」は、過疎問題を政治家と政治資金の提供者の間で、固定化するために必要な装置になります。

 

3)まとめ

 

革新には、3種類があります。

 

(P1)機会の平等のための分配をする革新

 

(P2)結果の平等のための分配をする革新

 

(P3)過疎問題を標榜する革新

 

(P1)は人権に基づく、個人救済になります。

日本には、(P1)はありません。

 

日本以外の先進国の政治は次の対立です。

 

保守:経済成長優先

 

革新:(P1)機会の平等のための分配をする革新

 

日本の場合は、第3の道の革新です。

 

革新:(P2)結果の平等のための分配をする革新

 

革新:(P3)過疎問題を標榜する革新

 

(P2)の実体はよくわかりません。(P2)は選挙の票にはならないので、(P3)が優先していると思われます。簡単に言えば、(P2)の年金をけずって、(P3)の公共事業や産業振興を増やすことになります。

 

歯切れが悪くなりましたが、日本には、英米にある保守と革新(P1)の対立はありません。

 

欧州、特に、北欧にあるような、革新(P1)を優先した高負担と高い社会保障はありません。

 

政府の言う中負担とは、「(P2)の年金をけずって、(P3)の公共事業や産業振興を増やす」という過疎問題の標榜に見えます。

 

この整理には問題があると思いますが、パーティ券問題の再発を防止するには、日本の政治のメカニズムをチェックして問題点を取り除く必要があります。

 

スタートには、日本の政治は、英米にある保守と革新(P1)の対立や、北欧の革新(P1)を優先した高負担と高い社会保障以外のどんなメカニズム(因果モデル)が機能しているのかを解明する必要があります。

 

そのための推論は、帰納法ではダメで、因果モデルの原因を探究するアブダクションが必要になります。