前回は、ガウスタイプのレンズは、周辺画像が劣化しやすいが、レンズ枚数が減るので、中央の抜けがよい画質になることを説明しました。
もっとも、佐藤氏は、ガウスタイプでも、まだ、枚数が多い場合があるといっています。
3群3枚構成のトリプレットであるオリンパスのBCL-1580は、1万円以下、中古なら5千円です。
このレンズの方が、高級レンズより良く写る場合があるということです。
トリプレットは、中心部はシャープに写りますが、周辺部の歪みが補正できず、非点収差も残るため、周辺部が流れたようになります。
なので、トリプレットのレンズは少ないと思います。
なお、七工匠 7Artisans 18mm F6.3 II ボディキャップレンズ は、レンズが6枚で、3群3枚構成のトリプレットではありません。
今回のテーマは、レンズの枚数を増やした場合でに、MFT曲線を水平にすべきかという点にあります。
MTF曲線を水平にすると2つの副作用があります。
第1に、レンズが大きく、重くなります。
第2に、画面の画質が均一になるので、中央(主題)が目立たなくなります。
アポタイゼーションフィルターは、同心円状のNDフィルターです。
MTF曲線を水平にしておいて、アポタイゼーションフィルターをかけて画像劣化を起こすことは、レンズは必要悪という設計思想に反しています。
もちろん、Jpegであれば、アポタイゼーションフィルターにメリットがあるとう判断になりますが、RAW現像をするのであれば、メリットはありません。
2線ボケは嫌われますが、フィルタ―処理で、2線ボケを目立たなくすることは容易です。もっとも、カメラメーカーは、RAW現像で、ボケの修正が簡単にできると、高価なレンズが売れなくなるので、こうしたフィルタ―を添付現像ソフトには、つけないと思われます。
以上のように考えると、MTF曲線をあえた水平にしないレンズ設計もありえます。
MFTの換算50mmは、25㎜になります。
25㎜では、ガウスタイプは使えません。
写真1は、M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8のMTF曲線です。
レンズ構成は7群9枚です。
このレンズは、ポートレート用に収差を残し、周辺画質がなだらかに劣化する設計です。60本の線は、意図的に低く設計されています。
写真2は、LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II のMTF曲線です。
レンズは、7群9枚(非球面レンズ2枚/超高屈折率UHRレンズ1枚)です。
やはり、周辺画質が劣化する設計です。
写真3は、LUMIX G 25mm / F1.7 のMTF曲線です。
レンズは、7群8枚(非球面レンズ:2枚、超高屈折率UHRレンズ:1枚)です。
周辺画質の劣化は少なくなっています。
一番安価なレンズは、写真3のLUMIX G 25mm / F1.7で、周辺画質の劣化が一番少ないのも、このレンズです。
写真3のMTF曲線ですから、画像の均一性においては、フィルム時代の50mmF1.8と一眼レフ時代の50mmF1.8を軽くクリアしています。
LUMIX G 25mm / F1.7が、3本のレンズの中で、基本性能は一番高いといえます。
いわば、くせのないレンズに仕上がっています。
EICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II は、色のりがよく、このレンズで撮影すると写真がうまくなったような気がします。
しかし、この色のりは、収差を残すことで実現しています。
アポタイゼーションフィルターの影響は、MTF曲線には、どの程度でるのでしょうか。
確実なことは、T値が同心円状に外周にいくと劣化することです。
これは、RAW現像ソフトでいえば、Vignetフィルタ―に相当します。
カメラ内現像のJpegでの評価は、無視すべきという気もします。