MTF曲線でわかることには、限界があります。
色のりは、わかりません。
そもそも色のデータは基準化が遅れています。
MTF曲線では、解像度がわかるはずですが、チャートを撮影した解像度とは必ずしも一致しません。
非球面レンズとUDレンズが安価になったので、MTF曲線を水平に近づけることは容易になりました。
問題は、MTF曲線を水平に保つべきかという点です。
MTF曲線を水平に保つためには、レンズの枚数を増やすことになります。
そうすると、反射が増えてT値が下がります。
OMDSは、最高のレンズとして、25mmF1.2PROをあげていますが、このレンズのT値は、パナライカの25㎜F1.4と変わりません。
F1.2とF1.4を比べると、ボケ量はおおきくなりますが、シャッター速度は同じになります。
佐藤治夫氏は、レンズは必要悪で、枚数が少ないほどよいといいます。
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枚数増加はレンズの「進化」と考えられるかもしれませんが、自然の摂理で言うところの「退化」の様に、無駄なものが無くなるがごとく、枚数を軽減することは意味のあることなのです。レンズ表面は反射面です。レンズが1枚増せば2面反射面が増加します。構成枚数が多ければ多いほど、ベイリンググレアが増し、どんどん「ぬけ」が悪くなります。反射面増加はゴーストフレアーの増加につながるのです。では、良いコートを付ければ…?答えは単純です。いくらコーティングを良くしても、反射率をゼロにはできません。レンズが1枚減れば、2面分の反射率がゼロになります。皆さんは、一見収差性能の悪い2群6枚構成のダゴール(ドッペルアナスチグマート)や3群3枚構成のトリプレットが、6群7枚のガウスタイプよりもはるかに良い写りをした経験はないですか?それがレンズ枚数差による「ぬけ」の違いなのです。数値に置き換えれば、Tナンバーの違いと言えます。このレンズ枚数増加による「ぬけ」の良し悪しはMTFでは評価できません。
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50mmF1.8のレンズは、ガウスタイプが多かったです。
ガウスタイプ(ダブルガウスタイプ)の最も基本的な構成は対称型で構成は凸 凸凹(絞り)凹凸 凸の4群6枚です。
写真1は、CANONのEF50mm F1.8のレンズ構成です。
凸凸凹凹凸凸が明確に分かります。
写真2と写真3は、CANONとSONYのミラーレス時代の50mmF1.8のレンズ構成です。
ダブルガウスですが、レンズが変形しています。
佐藤治夫氏は、「一見収差性能の悪い2群6枚構成のダゴール(ドッペルアナスチグマート)や3群3枚構成のトリプレットが、6群7枚のガウスタイプよりもはるかに良い写りをした経験」と、収差の補正には、トレードオフで失われる性能があるといいます。
ガウスタイプより枚数の少ないレンズは、現在では少ないです。
3群3枚構成のトリプレットの例は、オリンパスのボディキャップレンズです。
手持ちのレンズで、構成レンズ枚数の一番すくないレンズは、smc PENTAX-M 40mm F2.8 の4群5枚でした。
このレンズの原型は、1976年に発売されています。
このレンズのMTF曲線が見つかりませんでした。
これは、凸凹凹凸の4枚構成のテッサー型に、センサー側にレンズを1枚追加した構成になっています。
写真4は、絞り開放の撮影例です。
普通に見れば、問題はとくにありません。
1976年のオールドレンズという印象は全くありません。
MTF曲線で評価できる画面の均一性は劣りますが、それが、問題であるかは、撮影目的によります。